第15話 使節団

「ニホンの実力がそこまでとは……」

ここは教国の王城。スパイがもちかえってきた情報を見て、教王は驚愕していた。

「予定どおり、ニホンと友好的な関係を結べ。使節団派遣の人員と日時も決めるのだ」

「仰せの通りに」

ひざまずいていた女はそういうと立ち上がり、玉座の間から出た。

彼女の名前はノア。外務局の局長だ。

***

~外務局局長室~

「ニホンがこんなに発展している国なんて……そうだ、使節団のメンバーを決めなきゃ」

ノアは局員の名簿を見た後、執事にその中の三人を連れてくるよう言った。

「どうせなら、私もニホンに行きたいな」

彼女はそうつぶやくと、名簿を机の中にしまって三人の到着を待った。

しばらくすると、執事が三人を連れて戻ってきた。

「局長、何の用ですか?」

「君たちにはニホンへ行ってもらいたい。もちろん私も行くぞ」

「ニホン……?」

「極東の新興国家だ。だが、我々より圧倒的に高い技術を持っていることに留意しておけ」

「はぁ……」

集まった三人を紹介しよう。

一人目は科学局技術部長で慎重派のミリア。

二人目は軍務局事務部長で教国至上主義者のマルクス。

三人目は情報局通信部長で魔写機を特別に与えられたロバート。

以上である。

「日にちは明日の会談で決める。準備はしておいてね」

「なんで俺たち教国人が蛮族の国家に……」

「マルクスさん外務局長の話聞いていたの?相手は格上と認識しないと」

「その通り。相手は中央帝国をも超えている可能性がある国だ。ぬかるなよ」

「「了解!」」

***

~翌日・外務局~

「あの~前、三週間後に来てと言われてきたのですが……」

外務省の職員たちは受付の局員に向かっていった。

「ニホンの方々ですね?局長様がお待ちなので、こちらへ来てください」

「わかりました」

外交団は職員に連れられ、応接室に向かった。

***

~外務局・応接室~

「日本国外務省の本田です」

「外務局長のノアです」

一通り挨拶が終わる。

「本日は外務局長様が直々に対応いただき、誠にありがとうございます」

「いえいえ。それで我が国の方針としては、日本と友好関係を結びたいと思っています」

「もちろん我が国もそのつもりです」

両国は一通りの要望を伝え始めた。

日本の要望は

一、 教国人が日本国内で罪を犯した場合、日本の司法で罰則を与える。

二、 教国は日本人を人道的に扱うことを保証する。

三、 両国は互いの領土に侵攻しない。

四、 教国は魔道具を輸出し、日本国は対価として工業製品を輸出する。

五、 我が国を国家として承認する。

六、 なお、以上の条文が破られた際は再度両国で会談を行う。

教国側の要望は

一、 日本人が教国内で罪を犯した場合、教国の司法で罰則を与える。

二、 日本は教国人を人道的に扱うことを保証する。

三、 教国に危機が迫った場合、日本は軍を派遣する。

四、 日本は教国に工業製品を輸出し、教国は対価として魔石を与える。

五、 両国は互いの領土に侵攻しない。

六、 以上の条文が破られた際は再度両国で会談を行う。

となっている。

要望は両国ともほとんど同じであったため会談はとんとん拍子に進み、

教国の使節団が三日後、日本へ派遣されることとなった。

***

~数日後・教国某港~

「あれか?日本の船というのは」

「おおきいですねぇ」

「ただ大きいだけで、中は質素だろう!蛮族なのだから」

「マルクスさん……」

沖にとまった船からボートがやってきて、スーツの男が二人上陸する。

「日本国外務省の本田です」

「同じく、栗原です」

「教国外務局長のノアです」

「科学局技術部長のミリアです」

「軍務局事務部長のマルクスだ」

「情報局通信部長のロバートです」

長ったらしい自己紹介が終わると、本田が沖にとまっている船を指していった。

「これより、あの護衛艦『しなの』に乗って日本へ向かいます」

「ホンダさん、護衛艦というのは何ですか?」

「えっと……軍艦です」

「ほぅ……軍艦……」

マルクスが少しだけ興味を示す。

やはり軍務局の局員。気になるのだろう。

「それではボートに乗ってください。『しなの』に向かいましょう」

使節団がボートに乗り込むと、この世界では桁違いの速度を出して「しなの」へ向かった。

***

~「しなの」甲板~

「広いな~」

「並べられているのはいったい何だろう」

「それはF-35Bですね。戦闘機です」

「セントウキ……?というと中央帝国とかニヴァ共和国が持っているあれか」

「それらの国々は存じませんが、同じだと思います」

***

~「しなの」客室~

一通りの解説を受けた後、使節団は客室へ案内された。

「豪華だな……貴族の屋敷みたいだ」

「ふん!どうせ見栄を張っているだけだ。だいたい通路や甲板は無骨じゃないか」

「我が国の軍艦もそうでしょう……」

「教国の軍艦と蛮族の軍艦を一緒にするな!」

「いやいや、日本の軍艦のほうが技術は高いですよ。我が国とはドクトリンが違いますが」

ミリアが言った。

「つまり私たちの物差しでは測りきれないってこと?」

「はい。そもそも我々は対空誘導弾なんて発想に至っていません」

「これはニホン本土が楽しみね」

「ふん!」

***

~福岡港~

「すごい……まさに摩天楼ね」

「こんな建物を建てるのにどれだけの技術が必要なのか……」

「ふん!技術は高いが軍事力が低い国などいくらでも見てきたわ!」

「マルクスさん……現実逃避はやめましょ?」

「してない!」

「これからバスに乗って博多駅へ向かいます。皆さん乗ってください」

本田の案内で使節団がバスに乗り込む。

「出発します」

「ふかふかだこの椅子」

「馬が引いているわけでもないし、いったいどうやって動いているのですか?ホンダさん」

「内燃機関で動いています」

「ナイネンキカン?」

「ええと、ガソリン……燃える水を爆発させて、その力で進むという……」

「よくわからないけど、わかりました」

バスは博多駅へ向かう。

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