教国編

第13話 教国

~トレイ教国~

極東の列強国であるトレイ教国。

日本国外務省職員たちは窓口で足止めを食らっていた。


「すいません、権限のある方にお目通りをお願いしたいのですが……」

「しばらくお待ちください。順番に手続していますので……しかしですねえ、あなたたち、自分の立場をわきまえてますか?」

「というと?」

「治外法権を認めないなんて……我が国は列強国ですよ?」

「?」

「だ~か~ら~我が国が治外法権を認めないことを許しているのは4か国のみ。わかります?列強国だけです」

「はぁ」

「あなたたちは列強国どころか文明圏にも位置していない新興国家。そんな国が我が国と対等な条件で国交を結ぶなんてできるわけないでしょう」

「……?」

「とにかく、二週間後にまた来てください」

「あ、はい……」


日本国外務省の面々はトボトボと帰って行った。

***

~十日後・横須賀基地~

「やっと謹慎期間が終わった~」


木村はそう言うと、大きく背伸びをした。

せっかくなので、非番を取って渋谷に行こうと思っているのだ。

カレンダーを見ると、今日は10月31日。ハロウィンだ。

ハロウィン。子供が仮装をしたり若者が軽トラックをひっくり返したりする日である。

異世界に転移した2035年の10月31日も、

あいも変わらず騒ぎを続けていた……

***

~渋谷スクランブル交差点~

東西南北の大通りをつなぐここ、渋谷スクランブル交差点。

日本一だったその大きさは、転移したことで世界一となっていた。

いつもなら車と人が行きかっているが、この日は違う。

様々な仮装をした人々が交差点の路面を埋め尽くしていたのだ。

東京名物、渋谷ハロウィンである。

一時期は某新型ウイルスで問題になったが、近年になって復活した。

今回のハロウィンは転移したことで異世界人……主に亜人が参加。

それによって例年より盛り上がっていた。

余談だが、日本に来られる異世界人は貴族か

夢見半島で日本国籍を手に入れたものくらいだ。

もちろんこんなに人が集まるとなると、犯罪が発生する可能性が格段に上がるため、

多くの警察官やPatrol Advanceが警備を行っている。

テレビクルーも多く、日本の国力が垣間見えるイベントといっても差し支えないだろう。


「今年もすごいな……」


木村は、自動販売機をたおし、警察に捕まっている若者を眺めながらつぶやいた。

この日の東京都の平均気温は約19度。寒がりにはきつい温度だ。


「寒い。さっさと帰ろ」


10月とは思えない寒さの中、彼女は家に帰る。

転移後、日本に気温変動が訪れた。日本全国の気温が数度落ちたのである。

原因を調査したところ、この世界では温暖化が進行していないらしく、

それが原因で日本の気温は温暖化以前にまで戻ったのだ。

閑話休題。


(そういえばユーチューバーが『地球温暖化早く進め~!』って言って炎上してたなぁ)


彼女はそんなことを考えながら歩く。

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