第11話 謹慎処分

その後、倒れていた作業員が息を吹き返し、嵐も止んだ。

***

~「しなの」司令室~

「確かここら辺に……あ、あった」


木村が引き出しから紙の束を取り出す。

表紙には『嵐海域調査関係書類』と書かれている。

彼女はそれをパラパラとめくりだした。


(嵐の海にはかつてエキサイ王国と呼ばれる国があり、魔導化学が発展していた……か)


この資料はこの世界の国々の伝説をかき集め、作られた資料だ。


(だが、大魔導士を生み出した後に滅亡。嵐の海には大魔導士がいまだいるという……アレが大魔導士か?)


彼女は資料に目を落とすと、そこにはこう書かれていた。

***

『大魔導士について』

・外見は人型で、背中に羽があるらしい。(これは文献によってさまざまである)

・性格は極めて残忍。人間を実験動物のように扱い、虐殺している。

・嵐の海の中央部に位置する魔導発電塔に住んでいる。

・口調は『だよ~』や『へ~』など。語尾に『♡』を付けることがある。

・攻撃手段は、魔法と魔力を込めた槍を投げてくること。

・弱点は不明。

***

(これがイメージ図か……陸自が撮ってきた写真とおおむね一致してる……やっぱりあいつが大魔導士だったのかな?)


木村はそう考えながら資料を閉じると、報告書を書き始めた。

***

      嵐海域調査結果報告書  2035年10月6日

             第8護衛隊群司令 木村桜


使用弾薬

・SSM-1地対艦ミサイル×10

・120mm榴弾×30

・20mm弾薬×500

被害艦艇および車両

・10式戦車×1

死傷者

・宮内直人二等陸曹

・田無健一三等陸曹

・渡辺良太三等陸曹

うち死者なし。

備考

自称大量殺人犯と接敵。

伝説内の大魔導士と思われる。これに関しては要調査。


以上


***

~「しなの」甲板~

「艦内謹慎……ですか?」

「ああ。君の独断専行は目に余る」

「ま、そうでしょうね」

「上官に向かってその態度はないだろう……まあいいや。木村桜海将補以下第8護衛隊群配属の隊員は全員十日間の艦内謹慎を命じる!以上!」


護衛艦隊司令はそれだけ言うと、「しなの」から降りた。

***

~「しなの」艦橋~

「暇だなぁ……」

「まあ艦内謹慎ですし」

「だけどさ~……まあいいや」

「そういえば司令の出身地ってどこなんですか?」

「え?北海道」

「北海道ですか」

「うん」

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