第8話 Advanceと社会問題
雨の降る首都、東京では色とりどりの傘をさす人々以外にも、歩いているものがいた。
Advanceである。ロボットがここまで社会に浸透しているのは、少し前の人々から見れば異様だろう。
そんなある日、一機のPatrol Advanceがかすかな声をキャッチ。すぐにそれを人の声だと判断し、聞こえてきた方に向かった。
すると、そこには増水した川に落ちた軽自動車があった。Patrol Advanceはすぐに救助を開始。
運転手の女性が救助された。
このようにAdvanceによる人命救助なども行われているが、Advanceも万能というわけではない。
一つの例を挙げよう。
ある日、山中の街で土砂崩れが発生、一軒の民家が巻き込まれた。
急行したPatrol Advanceが巻き込まれた女性の救助し始めた。
だが、女性は『子供を先に助けてほしい』と懇願。
だが、advanceは生存確率が低い子供より、女性を優先。
その後、女性は救助されたが、再度発生した土砂崩れにより民家は完全に埋まってしまった。
救助隊による捜索の結果、土砂の下からはかわりはてた姿で子供が発見されたという……
後に父親がAdvanceのプログラムがおかしいと訴えを起こしたが、Advanceの判断は間違っていなかった。
もし救助を行ったのが人間だったならば、情に流され、子供を助けるか女性を助けるかで迷っただろう。
そして、再度発生した土砂崩れに救助隊も巻き込まれる可能性があったのだ。
人命救助からは話がそれるが、少し違う例を挙げよう。
とある工事現場で仕事用のAdvance、Work Advanceが使われていた。
現場監督はWork Advanceに最大積載量よりも重い荷物を持たせようとした。
本来はこのような命令を聞くことはリミッターによってできないのだが、
改造によってリミッターが外されていたため、無茶苦茶な命令を聞いてしまった。
そして、限界まで荷物を持ったWork Advanceはバランスを崩して三階から落下。
直下にいた作業員が死亡した。この事例では死亡した作業員の遺族はの欠陥を指摘したが、
制作会社である加原重工は『最大積載量を守らなかった現場の責任』と発表。
結局、現場監督が加原重工と遺族、そして工事会社に賠償することになった。
現場監督が『リミッターを外していた』ことが発覚したことにより、加原重工は簡単にリミッターが外せないようにロックをかけた。
これによって工事現場のAdvanceによる事故は減ったのだった。
これらの例を見てみればわかるだろうが、完璧な機械なんてないのだ。
Advanceにはほかにも欠陥がある。例えばバッテリー切れ。
高いやつはガソリンとバッテリーのハイブリッドで動くものも多いが、安いやつはバッテリーしかない。
家の電源は馬鹿食いするし、会社の電源も馬鹿食いする。まあ、それでも十分すぎるほどに使えるのだが。
ガソリンは家じゃ入れれない。スタンドまでもっていくしかないのだ。
あと、乱暴に使うと冷却液が漏れ出す可能性がある。冷却液は青く着色されているため、さながら青い血だ。
冷却液が漏れ出すと温度が上がり、ショートする。そのため、定期的に整備をしなければならないのだ。
ちなみに緊急時は空冷モードにもできる。ちゃんと冷えるかどうかは別だが。
もちろん犯罪の道具にも使われる。Advanceを使った犯罪はただ単純にAdvance犯罪と呼ばれ、
元々Patrol AdvanceはAdvance犯罪に対処するために作られたのだ。
まあ、このようにAdvanceが開発されたことで、多くの社会問題ができたのだ。
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