第49話

「ゆきちゃん!1歳の誕生日おめでとう!」

「「おめでとう!」」

「「「カンパーイ!」」」


「早い子だと10か月くらいでママって言うらしいけど。」

「まだ話さないねぇ。」

「遅い子は1年6か月ぐらいらしいし、もうすぐだよ。」

「俺も早く“パパ”って呼ばれたいなぁ。」

「そんなに呼ばれたいなら美来がパパって呼ぼうか?」

「うーん。」

「呼ばれ慣れてないからむずがゆいなぁ。」

「たしかに。私もママって呼ばれてないから変だし。」

「ママもいるからこんがらがっちゃうね。」

「私がいない方が良いみたいじゃん。」

「そんなことないよ。ママがいたから1年子育て頑張れたんだ。」

「本当に感謝してる。」

「冗談よ。わかってる。」


「とにかく話しかける事よ。」

「ママよ。パパだよ。って」

「美来も1年過ぎてからだったと思う。」

「早く呼ばれたいね。」

「ほんと、そうだね。」

「ゆきにお弁当作ってあげたいなぁ。」

「まだまだ先じゃん。」

「幼稚園も小学校も給食だからあと10年は先だよ。」

「そんなかぁ。寂しいなぁ。」


「パパァ。」

「美来、やばいって。なんかやばいって。」

「いいじゃん。」

「二人でイチャイチャするときくらい試してみようよ。」

「じゃあ、先に名前呼んだ方が負けね。」

「ほほう。美来と勝負しようって事ね。」

「受けてたちましょう。」


キスされる。

「ママ」

「うひゃぁ。ゾクっときた!」

「パパ」

おでこにキスされる。

ほっぺにキスされる。

耳元でささやく。

「ママ」

「ひゃあ」

「パパァ。」

「甘えてきたね。」

抱きしめて頭に手をあてる。

「ママ」

「それやばい!」

「47にもなってママとか言うのはヤバい!」

「えーーー。そういうプレイじゃないの?」


「美来。」

「はぁぁあ。」

「愛してる。」

「ずるいよぉ」

「カズくーん」

やっぱり、この呼び方が一番安心する。

「やっぱり名前は響くなぁ。」

「あれでスイッチ入っちゃった。」

「美来。愛してるよ。」


結局、呼び方は今まで通りで落ち着いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る