第45話

今日は12月27日、ママの誕生日

「ハッピバースデー!ママ!」

「香織おめでとう!」


「ねぇ。もしかして毎年やってくれるの?」

「絶対、毎年やる!」

「美来は、ママが誕生日やりたくないのかと思ってたもん!」


「今年もアイスケーキがあります!。」

「うわぁ。すごい綺麗!」

「アイスが花になってるよ!」


「これも毎年、期待していいの?」

「期待していいよ。」

「クリスマスの24日と25日でケーキ食べるじゃん。」

「でまた27日にケーキってどうなのよって感じで子供のころから誕生日無かったんだよね。」

「27日はもう冬休みになってるから友達も祝ってくれないし。」

「実は12月27日生まれは損だなぁ。って思ってた。」

「でも、これからは期待しちゃう!アイスケーキなら飽きないし!」


「今年もプレゼント!」


「はい。2つ目は今年も花束です!」

「綺麗だぁ!超うれしい!」


「そして3つ目はこちら。」

「ハンドクリームじゃん!しかもめっちゃ高いやつ!」

「自分じゃ買えないよね。」

「学校じゃ紙いっぱい使うから手が荒れるかなと思って。」

「喜んでくれた?」

「すっごく嬉しい!」


「美来からは安眠枕です。」

「これもちょっといいやつだから、なかなか自分で買いにくいんだよ。」

「ありがとう。美来。」


ママも喜んでくれて嬉しい。

こうして和やかにママの誕生日パーティーは終わった。


が、1日はまだ終わらない!

私は今、寝室のベッドの横にカズくんを正座させている。

私はベッドに座り、カズくんの前で足を組んでいる。


「ねぇ。カズくん!」

「なんで、自分が正座させられて、美来が怒っているかわかる?」

「わからない。」

「は?」

「わかりません。」

「心当たりはある?」

「ありません。」

「ほう。」

「今日のママへのプレゼント。あれは何?」

「ケーキと花束とハンドクリーム」

「ハンドクリぃムぅ?」

「なんで?あれ高かったんだよ。去年のお酒と同じくらい。」

「金額の問題じゃないんです!」

「わかってやってんでしょ。」

「はい?」

「去年はケーキと花束とお酒」

「はい。」

「全部、物が残らないやつだよね。」

「気づいてたの?」

「2年も続けば気づくよ!」

「なんで、そんなことしたのか説明して!」

「ほら、指輪とかネックレスとか恋人にあげるような物を送ると、美来を裏切ってるような気がして。」

「気軽に使いきれるような物とか枯れたら無くなる物を選びました。」


「はぁああああ。」

「カズくんさぁ。自分勝手なところあるよねぇ。」

「ママにも言われた事あるでしょ。」

「え?何で知ってんの?別れたときの最後の喧嘩で言われた。」

ママは別れる時に言ったのか。

なんでもっと早く言わなかったの!

「香織に聞いたの?」

「聞いてないけどわかるよ。同じ女だもの。同じ気持ちだよ。」

「で、ママには、なんて言われたの?」

「俺が自分勝手だって。香織の気持ちを考えていないって。大嫌い。って言われた。」

「んんんんんん。」

頭を抱えちゃうよ。

27年前のママに会うことが出来るならほっぺたを叩きたいくらいだ!

「ママは言わなかったか、言えなかった。」

「でも私は言ってあげるよ。」

「カズくんは、私とママが言ってる“自分勝手”を勘違いしている!」

「え?」


「美来の事はいつも、美来の気持ちを聞いてくれるよね。」

「美来にいつも優先権をくれるよね。」

「美来の気持ちを考えてくれてるよね。」

「美来は、カズくんのそういう優しい所が好き。」

「自分勝手なところを直そうとして、ちゃんと聞くようにしてる。」


「でも自分の事は自分で勝手に決めるよね!」

「さっき、美来を裏切る事になるって言ったよね?」

「私はそんなこと言った?そんな事私に聞いた?」

「聞いてない。」

「カズくんがママに指輪を贈りたい。って言って、美来が“いいよ”ってOKして、

 2人でママに似合う指輪を選んであげたら裏切ることになるの?」

「ならない。」

カズくんはうつむいて下をみる。

私はカズくんと同じ床に座る。

「カズくん、ちゃんと私の目を見て聞いて。」

顔を上げて目を合わせる。

「カズくんは一人で悩んで、一人で私を裏切るんじゃないかと思い込んで、

 一人でハンドクリームを選んだの。わかる?」

「それが自分勝手だって言ってるの。」

「なんで相談してくれないの。なんで私の気持ちを聞かないの。なんで一緒に選ばないの!」

「って言いたいの!」

涙が出てきた。

わかってしまったからだ。


私はカズくんの頭を自分の胸に抱え込む。

「お願い。一人で悩まないで。相談して決めよう。」

「私に相談できない事ならママが聞く。」

「私もカズくんに相談できない女の悩みはママにしてる。」

「だって!それが家族じゃない!」


この人は自分勝手なんだ。

自分勝手に優しいんだ。

だから、こんなに長い間、一人で苦しんでしまったんだ。


「美来。ごめん。」

「カズくんは、私とママ、二人を幸せにしてくれるって誓ったよね。」

「誓った。ほんとだよ。」

「わかってる。」

「それなら、ママにも形に残るプレゼントを渡そうよ。」

「今度は二人で選ぼうよ。」

「美来。」

「ありがとう。」


私はこの人を変える!

ママには出来なかった事だ!

私にしか出来ない事だ!

私はこの人を幸せにする!

私はカズくんの奥さんなんだから!


「カズくん、美来はカズくんの奥さんだ!」

「年下とか、年の差とか関係ない!」

「奥さんには夫を自由にしていい権利がある!」

「いい?」

「だからカズくんを自分勝手になんてさせない!」

「どうだ!わかったか!」

「わかった。」

カズくんは私の胸で泣いた。

きっと27年経って、ママの言いたいことがわかったのだろう。

この人はバカだ。

47歳にもなってるのに、私が付いてなきゃダメじゃないか。


あれ?

なんかママも同じような事を言ってた気がする。

あれ?

もしかして、私もダメンズ好きなのか?

まあ。いいや。

カズくんはダメンズというほどでもないか。


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