第44話

「カズくーーん!急いできてーー!」

「どうしたの?」

すぐ来てくれた。

「ほら、ゆきちゃんがたったの!」

「手で支えてるけど、立ったんだよ!」

「ほぉあ。はやいなぁ。もう立てるのか。」


はいはいして私に近づいてくるようになった。

ゆきちゃん。おっぱいにする?

おっぱいは1日2回にまで減ってきた。

もうすぐ出なくなっちゃうかもしれないから、いっぱい飲んでおきなさいね。


「カズくん。この美味しそうなの、なに?」

「それゆきの離乳食。今までの離乳食を煮凝りみたいに固めてみた。」

「美来も食べてみる?」

「いいの?」

「うん。うーん。ちょっと味が薄い」

「まぁ離乳食だから。」

「そっか。」


ひとりで遊んでくれる時間が増えたおかげで、昼間は少し楽になった。

でもこの間、ティッシュの箱から紙を全部出して、食べそうになっていたのでびっくりして取った。

まさか、ティッシュすら危険だとは、ほんと目が離せない。

何か変なものを口に入れないかすごく心配だ。

「ゆきちゃん。こっちおいで。ぱちぱち」

と手を叩いた。

「ぱちぱち」

「え?」

「ぱちぱち。」

「ぱちぱち。」

「カズくーん!ゆきちゃんが真似っこしてる!」

「なになに?」

「ゆきちゃーん。ぱちぱち」

「ぱちぱち。」

「ほら!。」

「ほんとだ!かわいい!」

「俺もやってみる。ゆきちゃーん。ぱちぱち。」

「・・・・」

「俺のは真似てくれない。」

「ゆきちゃーん。バイバイ。今度は手をふってみる。」

「パイバイした!」

「感動!」

「ゆき。ばいばい!」

「ねぇ。なんで俺のは真似してくれないの?」

「ゆきちゃんはママが大好きなんですよねぇ。」

「パパの事は好きじゃないと?」


で、問題は夜よ。

夜になると、起きて泣くんだよ。

暗いのが怖いのかな。

でも明るくすると余計、昼夜が逆転するし。

結局、夜中はあやすしかない。

ゆっくり眠りたい。

また泣きだした。

カズくんはまだ寝てる。

今回は私がやってあげよう。

どうしたの?あっ、くさいな。

うんちですか?

おしめを開いてびっくりだ!

「くっさ!」

「カズくん!起きて!」

「ゆきちゃんのうんこ、くっさ!」

「ん?そりゃ、うんこなんだから臭いだろうよ。」

「え?だって、前はこんなに臭く無かったよ。」

「前って、いつの話だよ。」

「離乳食増やしてからは、こんなもんだよ。」

「そうなの?美来のと変わんないよ。」

「知らんよ!」

「俺がやるよ。」

「いい!美来がやる!」

「お尻から拭かないでね。女の子は前から拭くんだよ。」

「わかってるわ!」

「今、綺麗にしますからね。」

「ぶふぅ」

「くっさ!」

「ゆきちゃんのおなら、すっげぇ臭い~!」

「無理だぁ。カズくん頼むぅ。」

「はいはい。代わってあげますよ。」

「ゆきはかわいいから、おならなんてしないもんねぇ。」


今日は12月24日!クリスマス!

「「カンパーイ」」

「ゆきのサンタコスかわいいね。」

「ゆきもマンマ食べる?」

「マンマ」

「おおぉ、マンマって言った。」

「ケーキを食べさせてみる?」

「ゆき用に砂糖を抜いた生クリームだから大丈夫だよ。」

「はい。マンマ」

「マンマ」

「マンマ美味しい?」

「マンマ!マンマ!」

「喜んでるみたいだね。」



「ママへクリスマスプレゼント!」

「なぁに?」

「手編みのマフラーじゃん!」

「すごい!よく頑張ったねぇ。」

「カズくんにもあるよ。」

「おお!嬉しい!」

「俺からは二人へ、スパリゾートリラクゼーションコースです。」

「今度、ふたりだけでゆっくりしてきなよ。」

「ゆきは俺が見てるからね。」

「私からは手袋。」

「美来とカズくんのペアルックです。」

「ママ、ありがとう!」

「今日はブッシュドノエル風のロールケーキです。」

「外のチョコクリームにはブランデーが入ってるので食べ過ぎないようにね。」

「すっごい!美味しい!」


「ピンクのサンタが夜這いに来たよ~。」

「おおぉ!超かわいい!ピンクのサンタコス!」

「しかも、超ミニじゃん!」

「中身もピンクだよ!」

チラッと見せてあげる。

「うおー。かわいい!写真撮っていい?」

「えー。絶対、人に見せない?」

「見せない!俺だけの宝物にするから!」

「しょうがないなぁ。」

サンタコス撮影会。

「エロっ!かわいい!」

かわいいっていっぱい言ってくれると嬉しい。


「今日は、そのかっこのまましよ!」

「え?」

「サンタさんとしたい!」

「ひどい言い方。」

両手を広げる。

だっこのサイン。

ギュッと抱きしめられる。

もう、これだけで嬉しい。

キスされる。

「え?」

「だから、俺は寝てるから。夜這ってよ。」

「夜這ってって初めて聞いた。」

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