第42話

「カズくん!通販で買ったバイブ届いた!」

「カズくんのより、ぶっといの買ってみた!」

「本人を前にしてそんな事言わないで。」

「ちょっと太すぎない?大丈夫?」

「もう俺のじゃ満足できないの?」

「試してみたいの!やってよ。」

「だって、人間じゃこんな動きしないじゃん!」

うぃぃぃぃぃんうぃぃぃぃぃん。

「こっちの方が良くなったりしない?」

「しないよ!カズくんの方が良いもん!」

「試すだけだから!」

「これはなんかの罰ですか?」

「そう!電マでいじめられた仕返し!」

「わかりました。」

「ちゃんとキスからして!」

「あいよ。」

「やる気ない。」

「出るか!えるわ!」

「じゃあ、おっきくする。」

「ほら、長さはおんなじくらいだよ。」

「細いって言ってるよね。それ。」

「おもちゃと比べなくたっていいじゃん。」

「比べて買ったの、美来だよね。」

「ガバガバになっても知らないからな!」

「ガバガバっていうな!」


「おもちゃに妬いてんの?」

「わるい?」

「悪くない。嬉しい!」

首に抱き着く。

「どうしたら許してくれる?」

「愛してるって10回言ったら許す。」

「愛してる。愛してる。あ」

「違う。」

「俺が1回付くたびに1回、愛してるって言って。」

「わかった!」

10回目の突き、深くて、長くて、強い。

「あああっいっ、しゅてる。」

頭真っ白で意味わかんない。

「俺も美来を愛してる!。」

「!!」

体中が勝手に痙攣してる。


どんなおもちゃよりも、言葉の方が気持ちいい。

愛してるって言われる方が何倍も気持ちいいや。


8か月目になってしっかりしたお座りが出来るようになり、おもちゃで遊ぶようになった。

「カズくん!見て、今、ゆきえがはいはいしたの!」

「今ね、1、2歩だけどはいはいして、ころんってなっちゃった。」

「ほんと?見たかったなぁ。」


赤ちゃんの貴重な初めてを見る事が出来た。

こうして赤ちゃんに集中していられるのは、カズくんとママのおかげだ。

カズくんは食事の準備や後片付け、掃除まで全部やってくれる。

ママは洗濯物や買い物に行ってくれる。

本当に感謝してる。


「赤ちゃんの成長って早いねぇ。」

「産まれたときは3キロぐらいだったのが、もう14キロだって。5倍近いよ」

「ちょっと太りすぎなのかなぁ。」

「ほっぺた、パンパン!」

「普通の成長速度みたいだよ。よかった。」

「このぷにぷにが、かわいいんだけど。」

「ゆきえはママに似て美人になるよぉ。」


最近のゆきちゃんは動く物に夢中だ。

ボールやおもちゃを転がすと手を伸ばして手に取ろうとする。

この間は服のボタンを引っ張って口に入れようとしたからびっくりした。

行動が読めなくなってきたので怖いなぁ。


ゆきちゃんはおっぱいを飲んだ後、寝室のベビーベッドでお昼寝中だ。

最近は2時間ぐらいはぐっすり眠ってくれる。

私はベッドの上でカズくんに抱っこされている。

背中にくっつかれているのがとっても安心する。

「カズくんの初めての事教えて?」

「初めて?」

「ファーストキスはいつ?」

「16歳。相手はママ?」

「そうだよ。」

「ママが最初で、ずっと、25年も好きだったんだね。」

「そうだね。」

「つらかった?」

「どうだろう。つらかった時もあったと思うけど、」

「速すぎてよくわからかったな。」

「あっという間に25年も過ぎちゃった。」

「もっと早く、もっと何か出来る事があったんじゃないかとも思う。」

「初体験が17歳?」

「そう1回目はうまくできなくて、香織を泣かしちゃった。」

「2回目はうまくできたの?」

「姉貴に教わったけど、テンパっちゃって、うまくは出来なかったよ。」

「何を教わったの?」

「好きだ。とか、大切だ。とか思いを心の中で言ってから、動けって言われた。」

「服を1枚脱がすたびに大切だって。」

「体を触るたびに大切だって。」

「キスするたびに好きだって。」

「動く前に大切だって。」

「動くたびに好きだって。」

「そうすればなるべく痛くしないように出来るって聞いた。」

なるほどね。

確かに言わなくても仕草で伝わるんだなぁ。

お姉さんすごい。

「でも、思っても、口に出すなって、言われた。」

「いちいち言われたら気持ち悪いって。」

「たしかに。」

「それでもうまくできなかったの?」

「場所がわからなくてさ。」

「おろおろしてたら、香織がね。」

「“もうちょっと、下。“って言ってくれたんだ。」

「すごくうれしかった。」

「心が繋がった気がした。」

「それで何とか、やっとできた感じ。」

「とても、うまくできたとは言えないよ。」


「じゃぁ、ママは幸せな初体験が出来てると思うよ。」

「ほんと?」

「うん。私が保証するよ。」


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