第28話
「つわりが、つらいぃぃぃ!!」
子供が出来るとほんと不思議だ。
普通のごはんが食べられなくなった。
ご飯の匂いが駄目。
卵も駄目、匂いのする物はマックのポテト以外、全部、駄目。
なぜか、マックのポテトは食べれる。
先生は普通ですよ。と言っていたがほんとだろうか。
「カズくーん。トマト食べたいぃ。」
1日で、こんなにトマトを食べた事ない。
「カズくーん。マックのポテト、食べたい!買ってきてぇ。」
ここ最近、トマトとポテトしか食べれない。
カズくんがいないと、死んでるかもしれない。
食っちゃ寝して、テレビ見てる、駄目奥さんみたい。
洗濯物はママがやってくれてる。
だって辛いんだから、仕方ない。
ここの所、つわりがひどくなってきた。
今は3か月目に入ったので、もうすぐ落ち着くと思うんだけどな。
体がだるい。
気持ち悪い。
頭が痛い。
食欲がない。
お腹がすいても、匂いで気分が悪くなる。
でも子供のためにはなんか食べないと。
「カズくん。つわりが辛いの。」
「トマトとポテト以外で、何か食べさせて。」
「大丈夫?」
「どういうのなら食べられる?」
「匂いのない物。」
「そうめんとかは?」
「でも、それじゃあ、子供の栄養が足らない。」
「それは後から考えるから、今は食べられるものを、少しでも食べよう。」
「わかった。そうめんにする。」
「そうめんも作ったけど、スープも作ってみた。」
「そうめんだけだと、お腹冷えちゃうでしょ。」
「どう?匂い気になる。」
「大丈夫そう。ちょっと食べる。」
「“あーん”で食べさせて。」
「はい。“あーん“」
「あっ。このスープ、酸っぱくて美味しい!」
「もずく酢のスープ。」
「サッパリしてて、美味しいよ。」
「吐いちゃうくせに、お腹すくんだよね。」
「それはそうだよ。」
「あーん。」
餌をもらう、ひな鳥みたい。
「つわりは辛いけど、幸せだよ。」
「夕飯は何か考えてみるから。」
夕飯は冷えたおにぎりを作ってくれた。
温かいご飯は辛かったけど、冷めると大丈夫そう。
小さく、俵状に握られている。
お寿司よりは、ちょっと大きい、2口で食べられるくらいだ。
「食べたい時に、ちょっとずつ、食べたほうが良いらしいよ。」
「うん。ありがと。」
やさしいなぁ。
「ママ今、ちょっと辛いけど頑張るからね。」
「ちゃんと元気に産まれてきてね。」
ちょっと膨らんできたお腹に手をあてて話しかける。
その手の上にカズくんも手を乗せてくれる。
手が、あったかいなぁ。
「パパも待ってるって。」
キスをしてくれる。
嬉しいな。まだまだ私は頑張れる!
今日は私の誕生日だ。
でもだるい。
調子悪い。
何もする気起きない。
「ディズニーランド行きたいなぁ。行けないけど。」
ようやく起き上がってトイレに行くためリビングを通ろうとしたら。
リビングには飾り付けがしてあった。
「美来。誕生日おめでとう!」
「これは、カズくんが?」
「まぁ。ちゃちいけどね。」
「ううん。嬉しい。」
ちょっと元気出た。
「ちゃんと覚えていてくれたの?」
「当たり前じゃないか。」
だって何も言われてなかったし。
「プレゼントはね。もうすぐ届くと思うよ。」
「なに?」
「それは来てからのお楽しみ。」
「それまで、また少し休んでいなよ。」
「うん。ごめんね。」
「ケーキも用意したけど。食べられれば食べて。」
「うん。」
ケーキか。ほんとなら大好きなんだけど。
今、卵も牛乳も受け付けないからな。
食べられるかな。
「美来。プレゼント届いたよ。」
「具合、良くなったら来てみて。」
ホントは良くないけど。
せっかくだから、何とか行ってみる。
「マッサージチェア!」
「座ってみて。」
「すごいね。」
「しかも、足まで付いてるやつじゃん!。」
ちょっとテンション上がった。
「これからお腹が大きくなると、重みで腰が痛くなるらしいよ。」
「足もむくんだり、
「俺も揉むけど、自由にマッサージ出来る方が良いでしょ。」
「高かったんじゃないの。」
「ちょっとね。」
「でも、美来と赤ちゃんの体には代えられないよ。」
「カズくん。」
「どう?嬉しい?」
「気持ちが、すっごく嬉しい!。」
「座ってみて。」
「動かすよ。リモコンで調節できるからね。」
「ふくらはぎや足の先まで圧力で押してくれるから楽でしょ。」
「あーーー。きもちいい。」
「ケーキも見てみる?あっ座ったままで良いよ。」
「ほら。バースデーケーキ。ちっちゃいけどね。」
白くてかわいいショートケーキだ。
「手作り?マジで?」
「そう。俺が作ったの。」
「昨日作って、においがしないように冷やしておいた。」
「卵と牛乳は使ってないよ。豆腐で作った生クリームだから。」
「ほんとに?じゃあ食べられるかな。」
「無理しなくていいけど。ちょっと匂い嗅いでみる?」
「うん。」
「スプーンで1
「どう?いけそう?」
「うん。匂いで気持ち悪くはない。」
「じゃあ。はい。“あーん“」
「あーん。」
「うん。冷たくて美味しい!甘く無くてさっぱりしてる。」
「多分、普通の時に食べたら、まずいと思うけどね。」
「もう1口ちょうだい。イチゴも。」
「はいよ。」
「あーん。」
「あーん。」
「あんまり無理に食べなくていいからね。」
「少しづつ食べたら良いよ。」
「うん。」
「カズくん。すごく、嬉しいよぉ。」
涙が出てきた。
つわりがつらいのとか。
苦しいのとか、いろいろこみ上げてきた。
「大丈夫?」
「うん。うれしかったの。」
両手を広げて差し出す。
最近、私たちの間に出来た「抱きしめて!」の合図だ。
カズくんはケーキをテーブルに置いて。
ギュッと抱きしめてくれた。
「カズくん、ありがとう。」
「美来。お誕生日おめでとう。」
「来年はディズニーランド行こうね。」
「うん。連れてって。」
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