第27話


「お誕生日おめでとう!」

「お誕生日おめでとう!」

「ねぇ。めちゃくちゃ恥ずかしいんだけど。」

「このシール取っていい?」

「「ダメ!」」

息ぴったりに駄目だしされた。


「46のおっさんが、ディズニーランドでキャストみんなに誕生日を祝われる。」

「こんな笑えるイベントは他にない。」

「いや、これは罰ゲームだよ。」

「いくら年齢制限が無いとはいえ、こんなおっさんは、まずいでしょ。」

「そんな事ないよ。カズくんは、おっさんじゃないよ!」

「美来ぅ。」


「今日はカズくんの誕生日!」

「誕生日と言えば、ディズニーランド!」

もちろん、ママも一緒だ!


「カズくん、美来からの誕生日プレゼント!」

「何?」

「キーケース!」

「結構高かったんだよ。」

「ありがとう!」

「あと、なんと、ラブレター付きだ!」


“カズくんへ”

“カズくんと出会ってもうすぐ1年になるね。”

“まさか、こんなおっさんを、大好きになるとは思わなかったよ。”

“頑張って働いてくれるのは嬉しいけど、体壊さないように。”

“無理しないでね。”

“カズくんがいなくなったら、美来もママも幸せじゃなくなっちゃうんだから。”

“大好きなカズくんへ。”


「美来ぅ。嬉しすぎるぅ。」

「はい。恥ずかしいからしまっといてね。」

「でも、“おっさん”って書いてあったよ。」


「これは私から。」

「ハンカチだ。」

「ありがとう。」


ママはハンカチをプレゼントした。


夕方になってきたらちょっと寒くなってきた。

今は6月だけど、ここの所温かかったから気を抜いてた。。

カズくんがブルゾンを背中にかけてくれた。

「カズくん寒くない?」

「大丈夫、寒くなってもいいように厚着してきた。」

「大切な奥さんを冷やすわけにいかないでしょ。」

「お腹に大事な子供もいるんだし。」

奥さんだって。

「あったかい。」

カズくんが着ていたぬくもりがあったかい。

「カズくんの匂い。」

「え?臭かった?」

「違うの。背中から抱っこされてるみたい。」

「すごくうれしい。」


やっぱり大きいな。

手まですっぽり入っちゃう。

「ブカブカ!」

頭を撫でてくれる。

カズくんは優しいな。





「おばあちゃんなんて、絶対に呼ばせないからね!」

ママが怒った。

子供が生まれたら、私の事とママのことを、何と呼ばせるかを話していたからだ。

「美来はママの事を、ママって呼んでるでしょ。」

「美来の子供が、ママの事をママって呼んだら、ややこしくなっちゃうでしょ。」

「子供がママって言ったら美来の事で。

「おばあちゃんって言ったら、ママの事になるかなぁと言ったら、怒っちゃった。」

「そうかぁ。難しいね。」

「美来はママが好きだから、ママって呼ばれたいなぁ。」

「まぁ、ママかお母さんは後でも変えられるし、成長によっても変わるしね。」

「最近は“ばあば“とか“ばあちゃん“の方が多いんじゃない?」

「それじゃおばあちゃんと変わらなくない?」

「姉貴みたいに「かおちゃん」ってあだ名で呼ぶのはどうだろう。」

「それは案外いいかもね。」

「でも、ママ怒っちゃったよ。」

「じゃあ、買いに行こうか?」

「何を?」

「アイス!」

「なるほど!」


「ママは、昔からアイス好きなの?」

「そうそう、いつもアイス食べさせると機嫌が良くなったよ。」

「ママのアイスを食べたとき、すごく怒られた事ある。」

「へぇ。好きだったやつなのかな?」

「違うのよ、順番があるんだって。」

「買う時に食べる順番を決めて、その順番が狂ったから怒ったの。」

「へぇ。それは知らなかったな。」

「今は何が好きなの?」

「ハーゲンダッツのバニラ」

「昔は何がすきだったの?」

「レディボーデンのバニラだった。」

「よく太らないよね。」

「ほんと、昔より細くなってて、びっくりしたもん。」

「昔はほっぺたが、ぷくぷくしてて、さわるとぷにぷにで可愛かったなぁ。」

ちょっとムカッと来た。

「美来、何買っていこうか?」

「レディボーデンで良いんじゃないの?」

「美来は何が好き?」

ムスっとして無視してやった。

「教えてよ。美来が好きなアイス。おれも同じの食べたいんだ。」

「・・・」

「ラムレーズン・・・」

「いっぱい食べなければ大丈夫らしいから。」

「一緒に食べようね。」

「・・・・」

「うん。」

ちょっとほだされた。

念のため、ママの分のラムレーズンも併せて3個とレディボーデンの大きい物を1つ。

さらに念のため、スーパーカップも3つ買った。

「ママー!」

「カズくんがアイス買ってきたよ!」

「レディーボーデンあるよ!」

「速く来ないと、無くなっちゃうよぉ。」

「マジか!」

「しばらく食べてないぃ。嬉しいぃぃ。」

「ラムレーズンと、スーパーカップもあるから食べてね。」

「マジか!」

「うまいぃぃ!」

「レディボーデンを抱えて食べてる人、生で初めて見た。」

機嫌が良くなったところで聞いてみる。

「子供生まれたら“かおちゃん“と”ばあば“ならどっちで呼ばれたらうれしい?」

「どっちもダメ。アイスで釣っても、そうはいきません。」


「“かおりママ“ってどうかな?。」

「いいね。それ。」

「ママ!考えていてくれたの?」

「大好き!」


「でも子供だけだからね。」

「あなたたちはそう呼んじゃだめだからね。」

「はい。」

なんとか丸く収まったようだ。



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