第24話

「ママー!今日からカズくんが1週間、出張だから。」

「美来、何か食べに行こうか?」

「そうだね。ママと二人じゃ料理できないもんね。」

「私は出来るよ~。最近作ってないけど。」


「ママは何食べたい?」

「焼き鳥が良いなぁ。」

「駅の近くに美味しそうな雰囲気の飲み屋さんがあったよ。」

「じゃあ、そこ行ってみよう!」


ふたりで乾杯!

私はノンアルコールビールだ。

寂しい。


焼き鳥を塩とたれで、1人前ずつ頼んでみた。

あとはポテトと漬物。

私はポテトが好きだ。

ビールとポテトで十分飲める。

「本物が飲みてぇ。」

1人前2本で500円なので高いなぁと思ったら、デカかった!

1個が唐揚げぐらいありそうな大きさが2つずつ串にささっている。

注文してから焼くらしい。

どうりで時間がかかるわけだ。

よかったぁ。いっぱい最初に頼まなくて。

皮がパリッとしていて美味しいし、

お肉は柔らかくてジューシーだ。


「ねぇ。ママ聞いても良い?」

「なに?」

「昔、カズくんと出かけて、一番良かったのどこ?」

「ディズニーランド」

「2番目は?」

「ディズニーランド」

「同じじゃん。」

「・・・・」

「ごめんなさい。実はよく覚えてないの。」

「え?」

「もう25年も前の話だし、忘れちゃった。」

私は本当に覚えていない。

事故の事があって忘れようと頑張っていた。

でも嫌いになれなかった。

いつしか思い出にふたをしてしまった。

カズくんと何があって、何をした。

どこに行ったという記憶を忘れてしまった。

別れたきっかけの喧嘩も何が原因だったかも思い出せない。

アルバムが残っていて、ディズニーランドに何回か行ったのはわかる。

まるで自分じゃない人が写真映っている気がしていた。

でも好きだった気持ちだけが残っている。


ママは親子丼の小さいやつと、私はお茶漬けにした。


「来月カズくんの誕生日じゃない?」

「ママと二人で何かプレゼントしたいんだけど、どうかな。」

「良いんじゃない。何にするつもり?」


「な!なんだと!」

「いく!いく!絶対行く!」

「ママの誕生日じゃないよ。」

「わかってるよ!見てるだけで十分幸せ!」



「ああっ。寂しいなぁ。」

「会社の人もいるんでしょ。浮気しないかな。」

「カズくんは浮気しないよ。美来の事好きだもの。」

「1週間もだよ。」

「スッキリするために、風俗行くかもしれないよ。」

「風俗は浮気じゃないじゃない。」

「え?」

「え?」


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