第22話

旅行から帰ってきて、しばらくご無沙汰だ。

カズくんが大きな仕事に取り組んでいる。

1か月くらいはかかるらしい。

来月は取引先に1週間ぐらい出張もしないといけない。

私には何もしてあげられない。

朝食も昼食も夕食もカズくんが作っている。

コンビニ弁当で済ますのでも構わないと言ったのだが、

カズくんが作りたいというので止められない。

私は何をしてあげられるのだろう。


今夜はママが小学校の修学旅行の為にいない。

だから、こんな格好をしてみた。


「カズくーん!裸エプロンだよー。」

「まじか!」

「マジだ!」

くるっと1回転して見せる。

「マジだった!」


こんな事しか思いつかなかった。

「すごい!1回やってみて欲しかった!」

「ほんと?」

「ほんとほんと!もう1回、くるっとしてみて。」

恥ずかしいけど、もう1回、回ってみた。

「お尻、かわいい!たまらん!」

予想以上にお気に入りのようだ。

「せっかくだから、一緒にご飯を作ろうよ。」

「そのかっこで!」

「は?」

「写真撮ってもいい?」

「写真は駄目!」

「お願い!せめて1枚だけ。」

「1枚だけだよ。前からだけだよ。」

「後ろも撮りたいよぉ。」

「お願い!」

「ほんとに1枚だけね。」

「超うれしい!これでご飯3杯いけるよ!」

「美来のお尻でご飯食うな!」


こんなじゃれ合いも久しぶりだ。

良かった。

こんな事で気晴らしになってくれるなら、嬉しい。


カズくんは私の後ろに回って背中にくっついた。

「ひゃぁ!」

太ももと太ももの間、股に何か来た。


「じゃあこれで卵を割りましょうね。」

「卵を4つ割りましょうね。」

首の後ろでしゃべるの、くすぐったい。

「ここに、生クリームを入れます。」

「はい、この棒で、白い生クリームをかき回してください。」

「もっと、ぐちゃぐちゃに、かき回してね。」

ボウルで卵をかき回す。


「フライパンに、バターを入れます。」

「バターが解けてきたら、さっき溶いた卵を入れます。」

「卵入れたら箸で「の」の字を書くように回すんだよ。」

「いい?「の」の字だからね。」


「火を使うから、気を付けてね。」

耳のそばでしゃべられると響く。

「行くよ。」

「入れるよ。」

フライパンに卵を入れる。

「はい、“の”の字、“の”の字、」

この状態で回せるか!

「端のパリパリに乾いたところは、剥がしてね。」

「はい。フライパンを前後にゆすってね。」

「はい。前、後ろ、前、後ろ」

前後にゆする。

「やめてぇ。」


「じゃぁ、中央にチーズとベーコンを置きます。」

「フライパンをちょっとゆすって、手前側の卵を奥側に折ります。」

「今度は奥の卵を手前側に折ります」

もう、集中出来ない!

「フライパンをトントンと叩くと、卵がひっくり返ります。」

「トントン」

フライパンをカズくんが持ってくれているので、

もう何やってるか、よくわかんない。


「おいしい!」

あんなことして作ったオムレツなのに、ふわふわで美味しい!

なんだそれ!


セックスが上手だと、料理も上手くなるのか?

それとも逆か?


「こんなかわいい奥さんが、裸エプロンしてたら、たまらんよ。」

「じゃあ、美来が、こっちの卵を頂きます。」

「割らないでね。」

頭を撫でてくれる。

もう、なんかそれだけで満たされる。うれしい。

頭が真っ白になってくる。

スピードがどんどん速くなる。

波がどんどん、速くなる、大きいのが来る、

久しぶりに失神した。

タイミングが一緒になるとすごく幸せ。

体も、心も、解け合う感じがする。


今は寝室のベッドで、イチャイチャしてる。

「カズくん。仕事頑張るのは嬉しいけど、無理はしないでね。」

「美来は何もしてあげられなくて、ごめん。」

「俺はね。今、とっても嬉しいんだ。」

「今まで1人で食べていくだけだったら、こんな大変な仕事は断ってた。」

「でも今は家族がいるから頑張って働ける。」

「そんな自分がうれしいんだ。」

「俺には美来と香織がいる。だから今ならどんな仕事も頑張れる。」

「家族がいる事がすごく幸せなんだ。」

「でも心配させない程度に頑張るよ。」

「美来、心配してくれてありがとう。」

「今日は、とっても良かったよ。」

「また裸エプロンしてくれる?」

「いっぱいしてあげる!」



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