第20話
フロリダ着いたぁ!
日本からフロリダまで、乗り継ぎをして約17時間。
時差の関係で当日に着くとはいえ、やっぱり長かった。
今日は、とっても大切なイベントがあるのだ!
「やっぱりやだよ。こんな年で、こんなの着れないよぉ。」
「ママ!これ以上年取ったら、もう一生、着れないかもしれないんだよ!」
「そんな言い方はやめてぇ。」
「まだ希望は捨てたくないよ。」
「カズくんが待ってるんだから、さっさと支度しようよ。」
私とママはウェディングドレスを着ている。
これからカズくんと私とママの3人で結婚式をするつもりだ。
もちろん、形だけで届けなどを出す事は無い。
私はママに、ウェディングドレスを着て欲しかったのだ。
カズくんはすでに待っていた。
神父さんもいる。
私とママは一緒に手を繋いで、ヴァージンロードを歩いていく。
ベンチには誰もいない。
神父さんと、私たち3人だけの質素な式だ。
「どうだ?」
「いつものどうだ!きれいだろ!は言わないの?」
「流石に言えるか!」
「とっても綺麗だよ。香織。」
「そ、そう?」
「なら着てよかった。」
神父さんは神に宣誓し、
カズくんに誓約を促す。
In health《健やかなるときも》, in sickness《病めるときも》, in joy《喜びのときも》, in sorrow《悲しみのときも》, in richness《富めるときも》 and in poverty《貧しいときも》, love two people《二人を愛し》, respect them《二人を敬い》, comfort them《二人を慰め》, help them《二人を助け》, and give them life《その命ある限り》. Do you swear that you will do your best for both of them as long as possible?《二人への真心を尽くす事を誓いますか?》
カズくんが誓う。
「I do!」
あれ?これって、誓いのキスがあるんじゃない?
ママも、キスしちゃうんじゃないの?
私に聞かれる。
「Do you swear?」
「I do!」
ママに聞かれる。
「Do you swear?」
「I do!」
答えちゃったよ!
「では、誓いの“指切り”を。」
「「は?」」
あ。ママも同じこと考えてた!
「はい。“指切ぃり”でぇす!」
「嘘ついたらハリセンボン飲ますでーす。」
「では、指を合わせて、ご唱和くださーい。」
日本語ペラペラかよ!この神父さん。
カズくんが笑ってる!
やられた!
「「「ゆーびきりげんまん、嘘ついたら、針千本飲ーます!」」」
「「「指切った!」」」
「ホテルは2部屋とった。」
「昼間は一緒で良いけど、夜はさすがに嫌よ。」
とママが言うのでママは別の部屋を借りた。
ママの部屋にやってきた。
ホテルの中とはいえ、海外で夜中出歩くのは、ちょっと怖い。
でも隣の部屋だから大丈夫だろう。
ママには今から行くことも伝えている。
部屋から出て、すぐ隣の部屋に入る。
廊下に誰もいなくて良かった。
「ママ会いたかったよぉ」
「昼間、会ってたでしょうに。」
抱きついたら頭を撫でてくれた。
ママはもう飲んでいたようだ。
「私も一緒に飲む!」
「3人の結婚式はどうだった?」
「びっくりしたよ!」
「まさか、あんなこと用意してたなんて。」
「美来もカズくんに結婚式をしたいって言っただけ。」
「あんな演出は知らなかったよ。」
「美来もびっくりした!」
ふたりで笑いながら飲んだ。
「はぁ。明日から楽しみだなぁ。」
「ディズニーワールド来てみたかったけど、絶対、来れないと思ってた。」
「そうだね。美来も一生、来れないと思ってた。」
「美来とカズくんは、私の夢をいっぱい叶えてくれるね。」
「美来じゃないよ。カズくんだよ。」
「カズくんじゃないよ。どっちかと言えば未来だよ。」
「ウェデングドレスなんて、カズくんじゃ思いつかないもん。」
「美来だから叶えてくれたんだ。」
「私の夢。」
「もうすっかり諦めて、とうに忘れてしまった。」
「子供のころの夢。」
「まさか、この年になって。」
「こんな夢を掘り起こして、叶えてくれるなんて。」
「嫌だった?」
「嫌な訳ないじゃないか!私だって女だよ!」
「ウェディングドレスは女の夢だよ。」
「良かった。喜んでくれて。」
「もっと、」
「え?」
「ううん。何でもない。」
もっと早く、カズくんと再会していたら変わっただろうか。
ずっと会いたかった。
ずっと忘れようとしていた。
でも忘れられなかった。
無意識なのに、急に思い出すんだ。
夢にも出た。
夢で会えた日は、とても幸せな気分になった。
でも自分から会う勇気は無かった。
やっと会えた。
でも、もう何か違った。
年をとったからだろうか。
思い出は美化されるという。
思い出の中のカズくんに、恋をしていただけなのだろうか。
わからない。
今は美来と結婚して、娘の夫となった。
私の義理の息子になるわけだ。
全然、なんとも思わない。
悲しいとか。悔しいとか。思うのが普通なのだろうか。
普通に受け止めてしまっている私は、おかしいのだろうか。
わからない。
「ウェディングドレス楽しかったなぁ。」
「そう?」
「うん。あんなにわくわくしたの、ドキドキしたのって、いつ以来だろう。」
「明日からはもっとわくわく、ドキドキするよ!」
「だって、ディズニーワールドだよ!」
「本場だよ!」
「そうだった!」
今は考えない!
考えない様にしよう!
2人が幸せなら、それでいい。
「美来ぅ。あんたは私にはもったいないくらい、良い子だよぉ!」
「ママ、今日は一緒に寝よ。」
「カズくんは?」
「疲れてたんじゃない?」
「もう寝ちゃった。」
「明日の朝、起こしに行くよ。」
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