第15話

「美来・・・」おでこにキスされる。

「美来・・・」まぶたにキスされる。

「美来・・・」頬にキスされる。

「美来・・・」首筋にキス・・・

「うひゃあ!」


「カズくん!名前呼びすぎ!」

「首筋で呼ばれたら鳥肌立った!」

「名前プレイ!」

「いっぱい名前呼ぶと、喜ぶかと思って。」

「嫌だった?」

「いやっ、嫌じゃないけども。」

「首から下はゾクゾクするからダメ。」

「それって気持ち良いってこと?」

「あれ?」


「わかった。じゃぁやってみるけど、絶対変な声出ちゃうから。」

「でも絶対に笑っちゃダメだからね!」

「もし笑ったら1週間はセックスしてあげないからね!」


うつぶせに裏返される。

下から上に上がってくる。

だんだん近くなってくるので聞こえる声が大きくなっていく。

「美来。」首「ひぃあ。。」

「美来。」耳「あああっ。」

耳ダメぇ。

「美来。」

耳の近くで名前を呼ばれるともう、力が入らない。

「んああっ。」

声がちゃう!

「あっ。」

「くぅっ。」

恥ずかしいけど、

声を出すと

「きもちいい!」

だめだ。声が勝手に出る。

「くぅうううう!」

でっかい声が出た!


今はカズくんの胸に顔をうずめてる。

恥ずかしくて目を合わせられない。

「声いっぱい出ちゃった。」

「どんどんエッチになっていっちゃう。」

「嫌いにならない?」

優しく頭を撫でてくれる。

「当たり前だよ。」

「ホテルだからいいけど。」

「こんなに声出ちゃうと、ママにも聞こえちゃう。」

「もしかしたら、隣の家の人にも聞かれちゃうよ。」

「じゃあ。引っ越ししようか。」



「ママ!新しい部屋探し手伝って!」

「また、いきなりだね。」

「この部屋じゃダメなの?」

「その、聞こえちゃうと恥ずかしいから。」

「そうね。」

「私も、それは恥ずかしい。」

「じゃあ、家族会議をしましょう!」


ではそれぞれが希望を出していきましょう。

「じゃあ美来から言うね。」

「防音がしっかりしてる部屋、ダブルベッドが置ける部屋が欲しい。」

「一緒に寝るの?」

「えー。美来と一緒に寝るの、嫌なの?」

「いや、嫌じゃないけど。」

「遅くまで仕事するときもあるから、迷惑かけちゃうと思って。」

「じゃぁ、仕事が出来る部屋が欲しいかな。」

「1Fがいいとか、2F以上が良いとかある?」

「私はどちらでもいいけどママは?」

「私もどちらでもいいけど、洗濯物を干せる場所が欲しいかな。」

「外に干すのはちょっと怖いから。」

「そうだね。」

「じゃぁ浴室乾燥機とか、あるといいかもね。」

「あとはバス、トイレは別じゃないと嫌。」

「お風呂場は綺麗じゃないと無理。」

「ふたりで入れるくらい、大きなお風呂が良いな。」

「ジャグジー付きとか。無理かな?」

「まぁ今はどんどん希望を出していこうよ。」

「ブレインストーミングってやつね。」

「そうそう。」

「なんでもいいからいっぱいアイデアを出して、あとから考えよう。」

「わかった。」

「子供が出来たら1Fの方が良いって聞いたことある。」

「小さい頃は畳の部屋が良いっていうよね。」

「転んでも怪我しにくいんだってさ。」

「へぇ。畳ってすごいんだね。」

「動物が飼いたい!」

「私は犬がいいな。」

「俺も犬が良いな。」

「ペットOKなマンションか、戸建てって事になるね。」

「俺の車の駐車場とバイクの駐輪場も必要だね。」

「ガレージ?」

「まぁ、そこまでは良いけど、近場に置ければいいかな。」

「じゃあ今度一緒に不動産屋さんに行ってみようよ。」


ネットで候補となる物件を2つ見つけて不動産屋へやってきた。

新築のマンションで3LDK。

駅からも近く、香織の職場からも近い。

賃料がこの街ではちょっと高く、管理費込みで18万円だ。

もう一つが築10年の3LDK、ちょっと駅から距離があるが、

車を止める事もできる駐車場付きで15万円だ。



「娘様ですか?」

「すみません。こちらが、、、妻です。」

妻だって!ひゃ。

「で、こちらが妻の母になります。」

「大変失礼致しました。奥様でしたか。」

「お若くていらっしゃるので、お嬢様と勘違いしてしまいました。」

奥様だって。これは新鮮!


「カズくんが美来の事、妻だって!」

「嬉しい!」


予想通り、賃料の高い方から見に行くようだ。

良い方を先にみる方がそちらを選びやすい。

という戦略があるそうだ。


さすが新築!きれいだし、オートロックだし、すごいな。

「ママ!見てみて!ウォークインクローゼットだよ!」

「部屋も8畳2つと12畳1つだって!」

「お風呂広いー!浴室乾燥機もついてるよー。」

「ジャグジーもついてるよー、ラブホみたい!」

「すごいね、すごいねー」

戦略に、もろにはまってしまった。

「ペットもOKなんだって。すごいねー。」

その分18万円もするんだよねぇ。

車の駐車場代も入れると20万円近くなってしまう。

家族で生活するって大変な事だよなぁ。


次に来たのは賃料が15万円の方だ。

6畳の洋室が3つと12畳のリビング

築10年とはいえ、十分綺麗だとは思う。

駐車場もあるが、ちょっと駅から距離があるのが考え物だ。


「カズくん、こっちで良いんじゃない?」

香織はやはり賃料を気にして言ってくれている。

「俺は、ここはちょっと心配かも。」

「香織は学校まで自転車だし、美来は駅から徒歩だ。」

「駅からここまで、徒歩で20分くらいかかる。」

「大通りから離れてるのは静かでいいけど、その分、夜が怖いな。」

「心配してくれるのは嬉しいけど。」

「バス停も近いからそれは大丈夫じゃないかな。」

中は見せてもらったので、あとは家に帰って3人で話し合おう。


「どう思う?」

「それは、良い方を見たら、良いに決まってるけど、、、」

「私は、あまりカズくんの負担になりたくない。」

「ママも同意見。」

「あのお金使う?」

「「それは駄目!」」

ママとカズくんは反対する。

「あのお金は、もっともっと、困る事があったら使いなさい。」

「そうだね。俺の方が速く死んじゃうわけだし。」

「カズくん、そんな事は言わないで!」

「ごめん。」

年が離れていても、ちゃんと誤ってくれる。

そういうとこ好き。

でもカズくんがいなくなるなんて、考えたくもない。


「じゃあ、やっぱり安い方にしとこうよ。」

「安いと言っても今の倍だけどね。」

「ごめんね。もっと働いて稼ぐよ。」

「いつか、あんないい部屋に住めるように頑張るから。」

「とりあえず、数年はあそこで我慢してほしい。」

「我慢なんかじゃないよ。」

「今より全然広くなるし、2人で寝れるし、セックスしまくりだよ!」

「はしたないこと言ってんじゃない!」

ぽかっと頭をたたかれる。


マンションの契約をし、引っ越すのはハネムーンから帰ってきた後になる。

カズくんが、ハネムーン後にすぐに引っ越せるように、

出発前に荷物をまとめておいて欲しいと私とママに伝えた。

そんなに急がなくてもいいのに。


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