第9話

「カズくーん。」

私は大泣きしながら、家に帰ってきた。

「どうしたの?なんかあったの?」

「カズく~ん。子供が欲しい!」

「はい?」


「今日、教育実習の最終日だったの。」

「うん。」

「それでね、最後の挨拶の時に、一番、仲良かった女の子がね。」

「先生、行かなえでぇって泣いちゃって。」

「私も大泣きして、クラス中泣いちゃって。」

「子供可愛すぎるよぉ。」

「子供欲しいよぉ。」


「わかった。」

「俺、明日、病院行ってみるよ。」

「美来も行く!」


「では、男性の方は、隣の搾精室で、これに精子を入れてきて下さい。」

「はい。」

「では、女性の方はこちらで触診します。」

女医さんの産婦人科を選んでよかった。

この間とおんなじ、丸見えだよ。

「冷たっ!」

なんか入れられた。

広げられた。

なんか、ショック!


「男性の方は、精子が、ちょっと少ないですね。」

「あと、年齢相応なんですけど、元気もないようですね。」


「まずは、基礎体温を毎日測って、排卵日を予測します。」

「精子は3日ほど生存していますが、卵子は24時間しか生存しません。」

「排卵日に合わせて、行うと良いでしょう。」

「基礎体温は、起床後、起きる前に舌下で測ります。」

「毎日、計測して低温期と高温期を把握します。」

「排卵が行われると、高温期になります。」

「出来れば排卵の数時間前に、精子が滞在していると確率が上がります。」

「排卵日予測検査薬も併用されると良いと思います。」

次々と難しい事を言われるので、メモするのも大変だ。


「排卵促進剤やホルモン剤は、体のホルモンバランスが崩れやすいです。」

「精神的にも肉体的にも大変ですので、もう少し、様子を見てみてはいかがでしょう。」

「わかりました。」


「ごめん。俺のせいだ。」

「精子が少ないって言われちゃったもんね。ショックだよね。」

「自分でしすぎてたかも。」

「は?」


「ママぁ!聞いてよぉ!」

「カズくんが、精子をよそに出してたぁ!」

「言い方!」

「それじゃ、浮気したみたいじゃんか!」

「なにそれ!意味わかんない。」


「寝る前に、しないと眠れない?」

「はい。」

「ずっと?」

「はい。」

「いつから?」

「香織と別れたときからだから、25年間。」

「25年間、毎日、してたの?」

「寝る前に?」

「たまに、昼間も。」

「は?」

「今も?」

「今も。」

「ちょっと待って。」

「1週間に、何回するの?」

「8回か9回ぐらい。」

「1週間に8回として、1年間が52週で416回。」

「416回を25年間で。」

「「1万400回!!」」

「やばいよ。」

「ねぇ。ママ!やばいでしょ。」


「「カズくん!自分でするの禁止!」」

「えーー。」


「美来ぅ。しようよぉ。眠れないよぉ。」

「あと3日で排卵予測日だから、それまで貯めといてよ。」

「あと3日もぉ。」


「よく3日間、我慢したねぇ。」

「全然、寝れなかった。」

「教育実習中、出来なかったから、美来もしたい。」

「じゃあ、美味しい物食べて、ホテル行こうか。」

「そうだね。」

無理してるのが、みえみえだけど、

ちゃんとご飯に連れてってくれるとこ、好き。

かわいくて、笑っちゃう。


普通の居酒屋だけど、全然いい。

お酒弱いのに、お酒に付き合ってくれるとこ、好き。

話をいっぱい聞いてくれるとこ、好き。

教育実習であったこと。

いっぱい、話したかった。

実習開始に生理が重なって、死ぬほどしんどかった。

担当してくれた先生が厳しかった。

子供たちが元気すぎて、疲れた事。

カズくんは全部、聞いてくれる。

相づちを打ってくれる。

とっても、気分がいい。

話してて、気分が良いとこ、好き。


「カズくん。」

「うん?」

「美来、先生になりたい!」

「いいんじゃないかな。向いてると思うよ。」

「たった2週間の教育実習だったけど、あんなに感動できたんだもの。」

「きっと、もっと感動できることが、いっぱいあると思うの。」

「そうだね。」

「美来ね。初めて、将来なりたい目標が出来たの!」

「そうか、じゃあ、教育実習で出会った子たちに感謝だね。」

「そうだね。感謝だね。」

カズくんに出会えたのも感謝だ。

「今日は、ちょっとじゃ終わんないよ。」

「どんとこい!」

「全部、受け止めてやる!」


気分が良い時の、セックスは最高だ!

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