第8話

「うーーん。」

「美来、どうしたの?何か悩み事?」


「カズくん。SMしよう!」

「は?」


「カズくんは美来の事、SかMで言ったらどっちだと思う?」

「Sじゃないかな。」

「そうでしょ。美来も、自分はSだと思ってた。」

「でもね。この間、すごく乱暴にされた時があったでしょ。」

「ごめん。痛かった?」

「ううん。そうじゃなくて、すんごく気持ち良かったの。」

「それでね。もしかしたら美来はドMの変態さんなんじゃないかな?って思ってね。」

「そんな極端な。」

「それで、SMプレイをしてみたいなぁ。と思ったんだけど、痛いのは怖いしなぁ。と悩んでたわけ。」

「じゃあ、とりあえず雰囲気だけでも見に行ってみる?」


という事でSMプレイが出来るという珍しいラブホテルにやってきた。

「ふあぁ。すんごい!」

そこにはSM器具がいっぱい飾ってあり、産婦人科の分娩台みたいなものと

壁にはバツ印で手足の拘束器具がついたものがある。

「初めて見た!すごい!」

「じゃあ、カズくん!シャワーを浴びようか。」

「え!?雰囲気を見に来るだけじゃなかったの?」

「カズくんのお金だけど、この部屋だって高いじゃない!」

「使ってみなきゃ損だよ!」

「良いなら良いけど。」

「でも、ほんとに痛いのはやめてね。ちょっとなら我慢するから。」

「わかった。」


一緒にシャワーを浴びる。

くっついてお互いを洗いあう。

これ楽しいな。

カズくんが私の背中から手をまわして体を洗ってくれる。

私は身を預ける。

くすぐったい。

「美来」

耳元で名前を呼ぶなぁ。

やさしく抱きしめてくれる。

嬉しい。


さぁ、本題だ。

「カズくん、これはどう?」

「いきなりハードル高いのいくね。」

「これに座るんでしょ。」

座ってみた。

うわぁ。ドキドキしてきた。やっぱり私、Mなのかな。

「目隠しもしないとね。」

目隠しされる。

「カズくん、ちょっと怖い。」

腕輪をひとつ外して右手だけ解放してくれる。

恋人つなぎで手を握ってくれる。

優しい。

「大丈夫。続けて。」

キスをしてくれる。

いつもの順番。おでこ、まぶた。ほほ。首筋を3回。そして唇。

もう儀式のようだ。

目が見えない分、いつもより肌が敏感になっている気がする。

思わず握った手に力が入る。

カズくんが止まった。

手の力が抜けたら続きを始めてくれた。

私を気遣ってくれている証拠だ。

うれしい!

目隠ししたままは真っ暗でちょっと怖かった。

カズくんの顔がある。

すごく安心できる。

キスしてくれる。

安心する。

「やっぱり顔が見える方が良い!」

抱きつきたいが動かない。

拘束具を外してくれる。

首に抱き着いた。

安心する。

「どうする?何か他ので続ける?」

「ううん。」

「もうSとかMとかどうでもいい。」

「カズくんの顔を見てしたい。」

「じゃあ、ベッドに行こうか。」

お姫様抱っこだ!

初めてされた!

「重いよ。」

「全然重くないよ、ほら。」

とちょっとゆさゆさ揺らされる。

「もう、年なんだから無茶しないで。」

「年寄り扱いするなよ。」


他愛ない会話が好き。

カズくんが好き。

今の私には普通で十分だ。

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