第5話
「カズくん!明日は美来の誕生日だよ!」
「知ってるよ。」
「プレゼントは用意したけど、何かして欲しい事とか、食べたい物とか何かある?」
「最高のセックスをしなさい!」
「は?」
「夕食はママと3人で食べるから、その後、バイクでデートに連れてってね。」
「わかった。どこに行くか考えておくね。」
「美来、誕生日おめでとう!」
「ありがとう、ママ、カズくん!」
「これはママからの誕生日プレゼント」
「ママ。ありがとう。開けても良い?」
「おぉ。かっこいい財布!」
「ちょうど財布ボロボロだったから助かるぅ。」
「俺は後で渡すね。」
「じゃあ。ママ行ってくる。」
「はいはい。行ってらっしゃい。運転、気を付けてね。カズくん。」
温泉から帰ってきて、カズくんがバイクを買ってきた。
ママの背中の
ママを傷つけたのはカズくんだった。
「私はカズくんを許してる。だから美来も許してあげて欲しい。」
「カズくん、バイクに乗せて。」
「バイクは持ってないし、もうずっと乗っていない。」
「知ってる。ママから聞いた。」
「そうか。ごめん。ずっと後悔してる。」
「俺が、あの事故さえしなければ。」
「香織は苦しまなかったし、香織の人生は違っていたと思う。」
「そうかもしれないね。」
「でも今から変えていけば良いよ。」
「無かった未来がどんなものかなんてわからない。」
「過去に戻る事もできない。」
「それなら、これからを良くしようよ!」
「美来はね、自分の名前が好き。」
「ママがつけてくれた名前。美しい未来なの。」
「だから自分の事を“美来”と呼ぶの。」
「一緒に美しい未来にしようよ。美来もママもカズくんも。」
「みんなで幸せになろう。」
「美来。」
「ありがとう。」
「美来をカズくんのバイクに乗せて。」
「ママを乗せたみたいに。どこか連れて行って。」
「安全運転でね。事故したら私は責任取ってもらうから。」
「一生世話してもらって、食っちゃ寝するから。」
「わかった。」
カズくんのバイクはトライアンフというらしい。
メーカーがトライアンフという。
元はイギリスのメーカーらしい。
詳しくはわからないけど、
軽自動車ぐらいの排気量で
なんか予想以上に大きくてカッコイイ!
アメリカンという形だ。
イギリスなのにアメリカンとは。
わからん。
おじさんが良く乗っていそうだ。
カズくんもおじさんだった。
昔はレーサーみたいなバイクに乗っていたらしいけど、
私はこっちの方が良いと思う。
バイクに乗ってみたいとは思ってたけど、
まさかママの元カレの後ろに乗るとは。
「じゃあいくよ。つかまってて。」
と私の両腕を自分のお腹に巻き付けた。
「ゆっくり走ってね。初めてだからちょっと怖い。」
「大丈夫。ゆっくり走るよ。」
最初はちょっと怖かったけど、すぐに慣れた。
発進するのも止まるのも、すごくスムーズで全然衝撃が無い。
もっとグングンするのかと思ってた。
行き先は聞いてない。
高速道路に乗って湾岸道路に向かってる。
海の方に行くのかな。
バイク、いいな。
ずっと背中にくっついていられる。
体に浴びる風はちょっと冷たい。もう7月なのに。
カズくんの背中があったかい。
あったかさと涼しさがちょうどいい感じで気持ちいい。
1時間くらいしてパーキングに寄ってくれた。
良かった。トイレ行きたくなってきてた。
ドライブの時って、トイレは言いにくいから我慢しちゃうんだよね。
下手すると膀胱炎になりそうになる。
カズくんはそういう何気ない気遣いが優しい。
バイク楽しいな。
車でドライブしてると、会話のネタとか気を使うことがあるけど、
バイクはそれが無い。
何にも考えず、ただ背中にくっついているのが、すごくうれしい。
しばらくして葛西の海に付いた。
浦安が隣だから、ここからもディズニーランドが見える。
「へぇ。東京湾にもこんな砂浜があったんだ。」
「昔、ママとも来たことあるの?」
「あるよ。」
「でも今日は特別。」
「なんで?」
「今日は流星群が見える。」
「ほんとだぁ。」
空を見たら流れ星が降っていた。
流れ星なんて初めて見た。
むしろ、空なんて見たの、何年ぶりだろう。
「テンションあがるぅ!」
「はい。プレゼント。誕生日おめでとう。」
上を向いていたら、突然言われたので、ドキっとした。
それも計算なら、相当なやり手である。
冷静を装う。
「ありがとう。開けてもいい?」
「どうぞ。」
「何かな。何かな。おぉ!万年筆?ボールペン?」
「ボールペン」
「もうすぐ教育実習があるでしょ。使ってもらいたくて。」
「アクセサリーにしようかとも思ったんだけどね。」
「教育実習じゃ付けられないかもしれないし。」
「一緒にいられるものが良いかなって思った。」
キュンときた。
「なんか書いてあるでしょ。見てみて。」
「Miku Kawanishi」って書いてある。
「普通はM.kawanisiとか名前はイニシャルにするらしいんだけど
ちゃんと”Miku”って書いて下さいって頼んだの。」
「なんでかわかる?」
「さぁ?俺はなんで美来って書いてもらったでしょうか?」
「えーわかんない。」
「ほんとに美来って書いてもらったの、わかんない?」
「わかんないよ。」
「それはね。俺がいっぱい、美来って呼びたかったから。」
「わかるわけねぇ!」
「美来。」
「好きだよ。」
「!!」
初めて“好き”って言われた。
この流れは、ずるい!
「ママじゃなくて?」私も意地悪で返す。
「美来が好き。」
「若い子が好き?」素直には聞いてあげない。
「美来が好き。」
「子供が欲しいから?」もっと言わせてやる。
「美来が好き。」
「歳離れすぎじゃない?」
「美来が好き。」
手を握ってきた!
スキンシップはやばい!
「ジェネレーションギャップ大きいよ。きっと。」
「美来が好き。」
顔近い!近い!
「美来が好き。」
だから、名前に弱いんだよなぁ。
「カズくんが好き。」
キスをした。
「ママには渡さない。」
キスをした。
「美来と、ママを幸せにすると誓え!」
キスをした。
「美来と香織を幸せにする!」
長いキスをした。
今日の私はヤバいな。
ホテルに着いてシャワーも浴びずに始まった。
カズくんも、今日はいつもより積極的な気がする。
同じ気持ちならうれしいな。
服や下着を大切に扱ってくれない男は嫌いだ。
乱暴にポイポイ投げられると一気に冷める。
カズくんはそんなことはしない。
この人は服も、下着も、とても大切に扱ってくれる。
でも今は、もうちょっと早く脱がしてほしい。
はやく裸でくっつきたい!
じらされてるのか?
「脱がしてやる!」
ズボンとパンツを一気に下(おろ)してポイ捨てた!
男のはいいのだ!
「美来。」
「好きだ。」
名前は反則だ。立ってられなくなる。
「カズくん。」
「好き。」
「うひゃぁ。気持ちいい!」
頭が真っ白でボーっとする。
でも、この人は痛くしない。
やばい!最高に気持ちいい!
「ちょ、そこお尻」
「ふわぁ。」
変だよ。そんなとこ今まで気持ち良かったことないのに。
「気持ちいいっ!」
やばっ。普通に声出た。
カズくんの腰から全身に、一気に鳥肌が立ったのがわかった。
すごい!
いいな。この感じ。あったかい。
「最高に、気持ち良かったぁ。」
素直に声が出た。
「俺も、最高に気持ち良かった。」
気持ち良かったって言われると、とっても嬉しい!
「最高の誕生日だった!」
「カズくん大好き!」
こうして誕生日は終わったわけだが、どうしてもひとつ気がかりがある。
お尻の穴で感じてしまった私は変態なのだろうか?
「ねぇママ。お尻の穴で感じたことある?」
「!!」
「馬鹿なこと言ってないで、朝ごはん食べて出かけなさい。」
「カズくんもコーヒーでいいよね。」
「ありがとう。香織。」
あっ。今ので分かった。
これは遺伝だ。
宝くじで当たった1億円をもらって、私がカズくんの子供を産む契約は継続中だ。
ルールはちょっと変わった。
私もママも「カズくん」と呼ぶようになった。
カズくんはママを香織、私を美来と名前で呼ぶようになった。
2年間の期限は無くなった。
ずっと3人で幸せになるって決めたから。
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