縫合開始直前〜縫合終了

「目の近くやからテープ貼るで」


 まずはガムテープサイズの半透明テープを傷のある側の目にペタ。


 え、それ剥がす時にまつ毛ひっついて取れるやつちゃん。


 想像してちょっとニヤ。


「ほな僕、ちょっとチクッとするから我慢しろよ」


 手際よく看護士さんが用意した黄色と透明な消毒をたっぷりつけてからの、麻酔。


 ブフッ(心の笑い)。


 お爺ちゃん先生、構え方が日本のピストル構えるスタイル……ブフッ。


「いたっ」


 うん、そら痛いわ。

まあまあの勢いで針刺したよ?!


 しかもお爺ちゃん先生、目が悪くなったんかな。

めっちゃ近くでガン見やん!

ガン見してブスブス針刺してるやん?!


 ちょ、コワ、おもろ……本人見えてないから良かったな。


「僕、気分悪なってないか?」

「はい」


 母が心で大爆笑してる間も何だかんだで事が進み、丸く穴の空いた布を顔に被せてスタンバイ。


 先生が手術用の手袋を装着し始めます。


※ここまでは患部に触れる物についてはピンセットを使ったりして衛生面は気をつけているので悪しからず。


「手袋入らんなぁ。

業者にこれ伸びが悪い言うといて」

「……はい」


 お爺ちゃんと看護士さんとで手袋装着に悪戦苦闘。


 いやいや、手袋の問題ちゃうやん。

小指折って入れたらそら入らんよ、お爺ちゃん。


 看護士さんもわかってるやんね?!

2人がかりで爺ちゃんの手袋手伝い始めたで?!

爺ちゃんの装着の仕方が悪いってわかってるやんね?!


 直接触れないのでピンセットで引っ張ったりしながら頑張って装着。

ピンセットで穴空くんちゃう、というくらいに伸びる、伸びる。


 ちなみにこれ、片方の話。


「ホンマこれ入りにくいな。

業者呼べ」


 お爺ちゃんイライラしまくりやん。

でも多分そっちも同じやろうね……嘘やろ、そっち人差し指と小指なん?!

難易度上がってる?!


 結局装着に15分。


 麻酔の効き時間大丈夫なん?


 うちの子ずっと顔に患部のとこだけ穴空いた緑の布かけてスタンバってるけど、無駄にシュール感漂ってるで……ブフッ。

しかも患部は消毒で黄色いし、血は滲んでるし……ゾンビなりかけの色みたい……ブフッ。


「針用意して」

「はい」


 ピンセット片手に爺ちゃんが指示すれば、糸のセットされた針が入ったパックを看護師さんがペリ、と剥がします。

そこから針をピンセットで挟んでまずは……ブフッ。


 またまためっちゃ距離近い!


 お爺ちゃん、ヤバ。


 でも手元が震えたりとかはないから、目だけの問題とみた。


 ブスッと釣り針状にカーブした針を刺して患部をひとすくい。


 もう片方の手のピンセットで引き抜き、利き手側のピンセットで糸を……。


「あれ、糸どこや」


 掴む糸が見えんとな!

怖い怖い怖い!


「先生、ここです」


 看護師さんが白いガーゼを黒い糸に添える。


「ここか」


 おお、見えたんや。

お爺ちゃん怖いけど面白いな……。


「あれ、掴めん。

あれ、糸どこや」

「先生、ここ、ここ」


 おおう、怖い怖い怖い。


「掴めたわ」


 手慣れた様子でまずは1つ針と糸を結ぶ。


 お、おう、やっぱ腕やなくて視力が落ちて……。


「あれ、針どこや」

「先生、ここ、ここ」


 怖い怖い怖い。


 以下このやり取りを7回くらい?


 ……お爺ちゃん怖すぎん?


 息子は知らぬが仏ってこの事ちゃうかな。

患部は出てるけど、目は隠れてて良かったね。

黙っとこ。


 次は違う病院に連れて行こう。


 そうやんね、前回もまあまあお爺ちゃんやったけど、8年くらい経ったら相当なお爺ちゃんになってるもんね。

お年寄り特有の手が震えるとかはないから、まあええけども。


 それよりも肝が冷えたのは、患部を綺麗にして改めて見ると傷が思っていたより範囲が広く、瞼の上側まで擦りむいていたこと。

顔がスン、と真顔になるのが自分でもわかります。


 目までいってなくて良かったわー。


「僕、終わったでー。

ほなお母さんはこっち来て。

説明するわ」

「はーい」


 レントゲンの結果は問題無し。

でも時間置いて急性クモ膜下出血とかはあり得る話なので、1ヶ月くらいは注意することと説明を受けました。


「今週いっぱいは消毒に毎日来てよ」

「はーい」


 今までもそうだったので、それは予測済み。

で、この日はそのまま帰宅して、特に何かしらが起こる事もなく翌日も消毒に。


 ここまでは順調(?)。



※後書き※

メリークリスマス!

ここまでどうしようもない内容をご覧いただきありがとうございました。

あと1話を20時過ぎに投稿します。

初エッセイ記念にカクヨムコンの短編部門にトライしてみております。


こちらもよしなに。

【太夫→傾国の娼妓からの、やり手爺→今世は悪妃の称号ご拝命〜数打ち妃は悪女の巣窟(後宮)を謳歌する】

https://kakuyomu.jp/works/16817330649385028056


長編のカクヨムコンライト部門で最高7位になれました。

初中華風にチャレンジした作品ですが、今のところ毎日投稿しております。

でもまだ10万文字作れてないー!

でも短編書きたかった……。

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