第11話 三人の逃亡者パーティの結成
リリスの話が終わり、散々俺をからかって満足したフィオが聞いてきた。
「それにしてもレノっち、いつの間に勇者を倒せるくらいに強くなってたの? 剣姫のリリたんでも逃げることしか出来なかったのに、C級冒険者のレノっちが倒すとかほぼ無理じゃん? もしかしてその見た目も関係してる系?」
「あ、いや、それは……」
「レノ様の魔法はとても凄かったです! 詠唱も無しにあんな威力を出せる人を私は知りません!」
「……え? リノっちって確か剣士で魔法使えなかったハズ。しかも無詠唱!? ちょっとソレどゆこと?」
「えっと……」
(やっぱりそこ気になるよな。さすがに女神から貰ったなんて言えないし、なんて誤魔化せば……)
俺は迷った挙句、洞窟の中で見つけた不思議な液体を飲んだらなんかめっちゃ凄い力を得たと説明した。きっととんでもなくレアな薬だったのかもしれないと。
自分で言っててもこれを信じるのは少し無理があるよな? と思っていたけど、どうやら信じて貰えたようだ。
「きっとそれはレノ様が飲むべき運命だったんですね。さすがです」
「ふぅ〜ん」
信じ方に差はあったけれども。
「ま、今はその説明で納得したげる。それで、これからどうするの?」
「あー、とりあえずはリリスの服をなんとかしないといけないからな。山を降りてどこか人が住んでる場所を探すつもりだ」
「そのこれからじゃないってば」
「ん? どういうことだ?」
聞き返すと何故か呆れたような顔をされた。解せぬ。
「はぁ……いやほら、話を聞いた感じだとレノっちさ、リリたんの前でカッコつけようとして転移したでしょ?」
「うっ……」
「リリたんの装備を奪って、勇者を殺したのも自分だけが責任を被って悪者になりつつ、あとは俺に任せておけ的な」
「いや、それは……」
「リリたん可愛いしおっぱい大きいから、その気持ちはわからないでもないけどね〜」
「そういうこと言うなってば……」
「…………(チラッ)」
フィオが変なことを言ったせいで、リリスが俺の方をチラ見しながら胸を持ちあげて大きいアピールしてくる。やめなさい。
「しかもギルドに任せようとしてたっしょ?」
「だってその方が安全だろ?」
勇者を殺した俺はきっと国中に指名手配される。懸賞金だってかけられるかもしれない。それなのに一緒に逃げるわけにはいかないじゃないか。
「ちっちっち。考えが甘いのだよレノっち。フィオが令嬢時代に食べてた高級ケーキより甘いぜ?」
「なんだよその言い方は。それに甘いって何がだよ」
「よ〜く考えてみ? リリたんがいた屋敷で唯一生き残ったのは誰? いくら兵士がリノっちが勇者を殺す所を見たとしても、状況証拠的に普通だったら共犯だって思うっしょ?」
「…………あ」
「しかもリリたんは帝国のお姫様。あのままギルドに預けられて身元がバレてたら……もうわかるよね?」
「処刑。もしくは利用されるだけされてあとは……」
嫌な光景が頭に浮かび、寒気がした。
「ぴんぽーん! 大正解! つまりリリたんも一緒に来て正解ってこと。そしてなんとなくでリリたんを連れてきたフィオ凄くない? これが美少女にだけ許されるご都合主義!」
やかましい。あと、少女って歳じゃないだろ。
「それで最初の質問に戻るって訳。リノっちさ、人里みつけたらそこにリリたん預けてどっか消えようって思ってたでしょ?」
フィオがそう言った瞬間、リリスが立ち上がって俺の腕にしがみついてくる。
「私、そんなの望んでいません。レノ様が転移石を持ってる姿を見た時、本当に悲しくて寂しくて……」
「リリス……」
「私も一緒に……傍にいさせてください……」
リリスはまるで子供のように泣きじゃくり、俺と一緒にいたいと繰り返す。いや、実際まだ十五歳の子供なんだよな。
「ほ〜ら、女の子にここまで言われてどうするのかなぁ〜? 自分が助けた女の子がどうなるかわからないのに見捨てちゃうのかな〜?」
フィオはニヤニヤとしながらそんなイヤな事を言ってくる。
「はぁ……わかったよ。一緒に行こう。ただ、これからどうなるか本当にわからないぞ? それでもいいなら──」
「構いません! えへへ、レノ様と旅……嬉しいです」
「っ!」
涙で濡れた目で心から嬉しそうに笑うその姿に思わず見とれてしまった。
「じゃ、フィオのこともよろしくね、レノっち」
「……はい?」
「だってほら! 傍目から見れば自分で転移魔法陣に飛び込んだフィオも、あの状況じゃ共犯者じゃん?多分今頃ギルドで除名されてると思うんだよね〜。つまりお尋ね者ってわけ。二人と同じで」
「お、お前マジか!?」
「あはは〜! それじゃあ逃亡者パーティ結成ってことでよろ〜♪」
「勝手に変なパーティ結成すな!」
「俺たちの冒険はこれからだ! みたいな?」
それ終わっちゃうやつー!!
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