第8話 何も知らない
流石に下着にローブ姿は色々と危ないので俺は自分が着ていたシャツを脱いでリリスに渡し、それを着てもらうことにした。
「ごめんリリス、とりあえずどこかで服を手に入れるまではこれを着ていてくれ」
「はい。あ、これレノ様の匂いがします。好き」
目の前で匂いを嗅ぐのはやめて欲しい。
「どうだ?」
「大丈夫です。サイズが大きいので太ももの辺りまではレノ様に包まれています。これなら激しく動かない限りはレノ様以外に中を見られる事はないかと。それにここを絞ればワンピースに見えますし」
少し意味不明なことを言いながらその場でくるりとまわるリリス。
ちょっと丈がギリギリだけど、言われてみれば確かにワンピースに見えなくもない。サイズ的な問題で胸元が少し覗くから少し目のやり場に困るけど、そこはローブを羽織れば大丈夫だった。
「えっと、確かリリスちゃんだっけ? マジでレノっちの事好きなんだね〜」
「はい! 大好きです!」
「ひゃあ〜! 乙女だわ〜。こんなキュンキュン光景見れるなんて、拉致して来て良かったって感じ」
「ありがとうございます! フィオさん!」
その言葉を聞いてふと思った。
「そういえばフィオちゃん」
「あ、フィオでいいよ。ちゃん付けはちょっとキモい」
「き、キモいって……いや、わかった。じゃあフィオ、君が俺の転移に自分から飛び込んだ理由はわかった。だけどなんでリリスも巻き込んだんだ? あの状況じゃ俺がリリスを人質か何かに使ってるって思うのが普通だろ?」
「え? なんとなくだけど?」
「はい?」
「ていうか、レノっちは人質とって酷いことするような人じゃないでしょ? あとはリリたんを見る目が優しかったのと、リリたんのレノっちを見る目も恐怖とかじゃなくて、離れることが辛い縋るような目だったし。だから多分なにかワケありなのかな〜? って」
「そうだったのか……」
受付では素っ気なくされていたのに、俺の事をちゃんと見てくれていたことに胸が熱くなった。
「ま、ぶっちゃけ転移に間に合う為には邪魔だったからそのまま担いだだけなんだけどね。フィオ、令嬢時代に色々やってて力と一瞬の加速だけは自信あるんだけど曲がれないんだよね〜。だからってさすがに踏む訳にもいかないし」
色々台無しだ。
「ほら、フィオの事は話したんだから、そろそろリリたんのこと紹介してよ」
「私はレノ様のお嫁さんです」
「違うから。リリスは………あれ?」
「レノっちどしたん?」
そこで気付いた。
「知らない」
「へ?」
「そういえば俺もリリスの事は名前しか知らないんだった」
「それってどゆこと?」
不思議そうな顔で聞いてくるフィオ。
俺はそれには答えずにリリスを見た。
「リリス、聞かせてくれないか? 君のことを。そしてなぜ勇者があんなにも君に執着して追ってきたのかを」
「わかりました」
そして、リリスはゆっくりと自分のことを話し始めた。
「私の名前はリリス。リリス・リースラウド。レノ様やフィオさんが住んでいたラウディア王国の隣国、リースラウド帝国の第三皇女にして、現在の剣姫の名を与えられた者です」
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この近況ノートにヒロインのイラストが載せてありますので、良かったら見てみてください。
https://kakuyomu.jp/users/kujiayuu/news/16817330650125513897
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