第3話 課金ヒーロー


 ここは謝肉祭遊園地。女体化ビームの影響で百合カップルが増殖中の伏魔殿。

女の子同士のイチャイチャで発生する超効率エネルギー、

ユリハルコンが密集しやすい重要拠点の1つ。

 男主人公鬼百合レンジはメイドロボ鬼百合ハボタンの策略により

この地を訪れた。


ー謝肉祭遊園地 観覧車内 夕方ー


ハボタン  「今日は楽しかったっすね姉さん♪」

レンジ   「ああ、お前の願いを叶えるのも今日限り。

     俺は新たなメイドロボを雇って新生活を始めるんだ!」

ハボタン  「姉さん一つ忠告しておくっす。

     戦闘用メイドは家事なんてできないっすよ?逆に

     家事用メイドは戦闘補佐しかできないっす。

     両立できるのは旧世代の私だけっす」

レンジ   「いやお前は家事しないだろ!!」

ハボタン  「失敬っす。通学途中でゴミ出しぐらいはしてるっす」

レンジ   「(反省)あっ、そうだったなすまない」


 レンジが反省し空気が重くなる。機転を利かせハボタンが

テイクアウト用プラ容器を取り出す。お店で買った食べ物が入っている。



ハボタン  「らしくないっすね姉さん。そうだ、クレープ買ってきたんで

     食べるっす」

レンジ   「気が利くな。ほらイチゴはあげるから。

     あの甘いのがどうも苦手でな。

     俺は生クリームがいいんだ」

ハボタン  「好き嫌いしてるから強くなれないっすよ。

     ヒーローなのに食わず嫌いとか子供人気でないっすよ?」

レンジ   「うるへー、チョコ中毒のお前なんかすぐ倒してやらぁ!」


 八つ当たりのようにガツガツ食べるレンジに対し、

ハボタンは今までの思い出をかみしめるようにゆっくりと味わっていた。

 

ハボタン  「もうすぐ観覧車は頂上っすね。キスとかしないっすか?」

レンジ   「別れるんだぞ?俺たちは。そんな未練がましいことをしたら

     俺が耐えられなくなる」

ハボタン  「大方ハボタンにはもっとふさわしい人がいるから、

     ここで別れるのが理想ってカッコつけじゃないっすか姉さん?」

レンジ   「・・・・・それが分かっていて何故俺と過ごしたんだ?」

ハボタン  「どこまでも不器用っすから姉さんは。

     メイドロボがパートナーならエッチなことをするはずっす。

     私が下着姿でも、上着放置しても反応がないっす。

      前の持ち主は飽きられて捨てられた私に対し

     まるで姉妹のように接してくれたっすから」

レンジ   「服放置をいい思い出風にするな!せめて洗濯ネットに

     入れてくれ。だらしないぞ!」

ハボタン  「多分姉さん以上の人なんて見つからないけれど、

     私も姉離れの時期が来たっすね。

     次合うときは立派に家事を覚えてくるっす」

レンジ   「次なんてねーよ。新しい家庭で幸せにな。相棒」

ハボタン  「未練がましいっすね。”あばよ!役に立たない粗大ごみ!”

     ぐらいは言って欲しかったっす。

      姉さん、いえレンジ様は私を諦めきれていない証拠ですので」

レンジ   「普通に喋ったほうが相手の印象違うぞ?」

ハボタン  「ええ、そんなことは百も承知です。

     観覧車も一周しましたね。ではごきげんよう」ぺこり

レンジ   「ああ、達者でな」


 観覧車の出口から逆方向に歩みを進める二人。

空は暗くなり星が見え始めていた。これでよかったのだとレンジは思い

フードコートでチキンブリトーを注文し食べ始めた。

 ドーンと爆発音がする。「ああ、そういえば花火イベント今日だっけ?」と

レンジはつぶやく。


レンジ   (どこかでハボタンも見ているのだろうか。

     いや、とっくに帰っているか。

      メイドという職務から解放されたんだ。

     元カレと別れた場所なんかに未練なんてないだろ)


 ところが様子がおかしい。遊園地スタッフが避難指示を出し始めた。

花火ではなく怪人の襲来。慌ててNーVRを起動し状況を確認するレンジ。

 ハボタンと敵が戦っているが作戦本部からの増援要請はない。

ヒーローが戦闘開始20分の間は初戦闘の人間にしか報酬が与えられない

制度があるからだ。後からとどめを刺すヒーローは人気が出ないという理由。

故にチームを組む派閥は少数。レンジは超再生能力こそあれど火力に

欠けるためハボタンと組まざるを得なかったのだ。


レンジ    「戦ってるのはハボタンか!いや連絡も寄こさないあたり

      一人でやっていけるさ・・・・。相手は蜂?

      まずいぞ!あいつロボなのに痛みに敏感なんだ!

       チッ!今の俺が出向いたところでどうなるっていうんだよ!」

財布の暴虐者 「あはははは、困っているようだな少年!!

      試作品の装備があるんだが買ってくかい?

      君の貯金額から引かせてもらうがね!

       ああ安心しろ!二人分の電車賃ぐらいは残すさ。

      あはははは」


ー財布の暴虐者ー

大人の女性で常に電卓をはじいている。

スマホアプリ電卓よりもカタカタ鳴らす電卓のほうが楽しいからとか。

ピンチの時に現れては高額商品を宣伝する邪悪。

当人曰く「ピンチは金で解決できるぞ!あはははは」がモットー。

 商売優先だからエリートにしか姿を見せないが、

新品のメイドロボを買おうとした貯金を狙ってレンジに取引を持ち込んだ。


財布の暴虐者 「私は悪魔と呼ばれているらしいな。

      ソシャゲイベントのようにぺんぺん草も残さず

      財布を破壊するからな。あはははは」

レンジ    「自覚あるなら正義にも悪にも武器売りつけるのやめろよ!

      というか逮捕だ!逮捕!」

財布の暴虐者 「いいのかい?あのメイドロボは限界だ。

      新しいパートナーを迎える前に機能停止する。

      それでいいはずだ。なんせ君は別れたんだからね」

レンジ    「なんで個人情報筒抜けなんだよ!!」

財布の暴虐者 「商売人だからさ!!」

レンジ    「意味わからん!!」


 財布の暴虐者は情報も取り扱っており、お金の匂いに敏感だ。

商売は情報が命、古来より伝わる基礎中の基礎だ。


レンジ    「そのチカラがあればハボタンを助けられるんだな?」

財布の暴虐者 「私は商売人だから確約はしない。

      アフターサービスも受け付けない。

      当然クーリングオフもだ!」

レンジ    「いいよ、買ってやる!ただ半端なものを寄こしたら

      消費者セ〇ターに訴えるぞ!!」

財布の暴虐者 「あははは、安心しろ!長年法律の穴を潜り抜けて来たんだ。

      受け取るがいい!これが君の新たな嫁入り道具だ!

      今後とも私と末永く取引をお願いします」ぺこり

レンジ    「二度とするか!!悪徳詐欺師め!」

財布の暴虐者 「基本的にはNーVR同様、電気信号で学習をするから。

      ただこの試作機は超圧縮した武器と装甲を解凍して

      使用者に装着させる。

       戦法を変更したいときはXNーVRグラスのカートリッジ部分を

      取り換えればいい。

      因みに各種カートリッジも取り扱っております」営業スマイル

レンジ    「だいたいの仕組みはわかった。

      今行くぞ!!ハボタン!!」

財布の暴虐者 「毎度ありー」 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る