第7話 卓球大会(前編)。


 入学式から一週間が経った。

 今日は卓球大会の日だ。新入生オリエンテーションも終わり、高校生活三度目の大イベントだ。新入生オリエンテーションでは、瑞葉とは別のクラスだった為、あまり関わりが無かった。


 きっと、瑞葉のことだから今日の為に沢山練習してきただろう。

 凛翔も出来る限りの練習はしてきたつもりだ。


 今日の卓球大会は希望制のものだった。凛翔は彼女と約束をして、参加する事となった。



 3日前。


 図書室で二人は本を読んでいた。といっても、ただ本を読んでいたわけではない。瑞葉は喋りまくってたし、凛翔は眠そうにうとうとしていた。


「――っていう事だから、参加しようよ。てか、聞いてる? あたし、真面目に話してるんだけど」


「うん、参加する」


「え!? ほんと! マジ嬉しい」


 凛翔が初めて同意してくれたのだ。そりゃ、喜ぶも当然の反応だ。でも、彼は寝ぼけていただけ。昨日徹夜で勉強していたから、眠いのだ。


「へっ? 俺、なんか言った?」


「卓球大会頑張ろうね」


「あ、俺運動苦手だから無理。さっき卓球大会は参加しないって言ったじゃん」


「あのね、録音してあるの」


『~~うん、参加する~~』


 録音した音声を流し、上目遣いで睨んでくる瑞葉。録音されては、もう逆らえない。いつの間に録音したんだ?


「わ、分かった。参加するよ。でも、俺、運動ほんとダメで……」


「そこはあたしがしてあげるから」


 瑞葉は何故か頬杖つきながら、悪戯な笑みを浮かべる。サポートとは一体、どういう意味が含まれているのか。凛翔を見つめる彼女の目が本当に怖い。


「サポートって、どういう……?」


「凛翔の卓球のスキルを上げて邪魔者を排除するの」


「邪魔者を……排除…………?」


 顔を強ばらせ、思い詰めた表情をする凛翔。彼の表情を見かねて、瑞葉は彼の腕を引き、図書室を出た。


「もう行こ。授業始まるし」



 そうして、彼は卓球大会に参加する事になってしまった。

 

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