第20話 偉大な前任者

今日はおれの前にこの水上の都市に来てここまで発展させた、確か……神野(じんの)さんという偉大な人に会うのだ。

緊張するな~


「ナターシャ、案内してくれるか?」

「はい、かしこまりました」


ナイルは一人で花を摘みにいくようだ。


「ナイル、あまり無理をするなよ」

「はい、わかっています」

「おれたちも挨拶が終わったら行くから」

「はい、待っています」


おれとナターシャは部屋をでた。


「いってくる」

「はい、いってらっしゃいませ」


クレアに見送られた。


エレベーターのような箱に乗り、ナターシャが暗号のような数字を打ち込んでいた。

これだけは、いまだにわからない。


「アオイさま、つきました」


扉が開くと明るいフロアーについた。


「ここは、すごく明るいな」

「はい、神野さまは明るいお部屋がお好きのようで……」

「そうなのか」


ピンポーン!


この音は変えなかったんだな。


「はい、待っていたよ入って」


声だけが聞こえた。

え?

おれが来たってわかっているの?

中から、白髪交じりの男の人がでてきた。


「きみが、アオイくんだね」

「はい」

「わたしが神野だ」

「はい、はじめまして」

「そんなにかしこまらなくてもいいよ」

「あ、はい」

「きみを召喚させることになってしまってすまなかった」

「いえ」

「わたしはなかなか動いて調べるってことが苦手で……」

「そうなんですか?」

「ソフトウェアとかは得意でね……」

「はい、この都市がすごく発展していて驚いています」

「そうか、一番驚いていることはなんだい?」

「ん~アンドロイドの性能のよさでしょうか」

「そうか、きみもアンドロイドをメイドにしているのかね」

「はい」

「いいだろう~なんでもしてくれて」

「はい、本当になんでもしてくれて助かっています」

「そうだろう。あれはわたしの願望が強すぎてできあがったアンドロイドソフトウェアなんだよ」

「そうなんですか?」

「ああ、過去の世界では味わえないことも簡単にやってくれるだろう?」

「……? なんのことでしょう」

「え? きみ、まさかまだ夜の生活はしていないのかい?」

「あっ……はい」

「それはもったいない」

「そうなんですか?」


どんな夜が待っているのだろう。

想像するだけでにやける。


「アオイくん、アンドロイドも普通の女の子だよ」

「はい」

「夜の生活もちゃんとできるから遠慮はいらないよ」

「そ、そうなんですか」

「ああ、試すといいよ」

「は、はい」


おれはさっそく今夜にでもお願いしようと思った。

いや、まてよ……。

ナイルがいるではないか。

おれはどうしたらいいのか。


「アオイくん、それはそうとドラゴン族の都市と炎の都市に行けたんだって?」

「はい、いってきました」

「よく扉を見つけてくれたね」

「まあ、偶然ですけど……」

「いや、偶然なんてないんだよ。わたしの見込んだとおりアオイくんを召喚して正解だった」

「あ、ありがとうございます」

「ナターシャくんからすべて報告を受けているよ」

「そうなんですか」


おれはナターシャをみた。


「はい、わたしが随時報告させていただいております」

「そうだったのか」


「アオイくん、今回の水位の異常は炎の都市が原因だったってことだな」

「はい、おれが来たときから水位もあまり変わっていませんので炎の都市で起きた炎がこぼれ落ちて水温が上昇したために水位があがったとみてよろしいかと思います」

「そうか、安心したよ」


ふぅ。

少し緊張がとけた。


「わたしもあとどのくらい生きていられるかわからないが、きみがいたら安心だ」

「いや、おれなんて全然ソフトウェアとかわからないので神野さんがいなくなったら困ります」

「ああ、それは大丈夫だよ」

「え?」

「こっちにきてごらん?」


おれは神野さんに言われ、ついていった。

すると、そこにはロボットいや、アンドロイドたちがパソコンの前に座っていた。


「アオイくん、わたしがやってきたことはすべてここにいるアンドロイドたちに伝授している」

「す、すごい!」

「だから、わたしがいなくなってもこの都市のソフトウェアは大丈夫だよ」

「そうなんですか」

「沈没さえしなければ大丈夫だ、ハハハッ」


神野さんは笑っていた。

笑えないが、おれはこの都市を沈没させなければいいんだと改めて思った。


「アオイくん、会いにきてくれてありがとう」

「いえ、また来てもいいですか?」

「もちろんだよ」


おれは神野さんの部屋をでた。

意外と話しやすい人でよかった。


「ナターシャ、そのままナイルのところに行こう」

「はい、まだ花を摘んでいるでしょう」

「そうだな、ついでに炎の都市の扉も探せるといいな」

「はい、そうですね」


おれたちはナイルのところにいった。

おれとナターシャは泳いでナイルが花を摘んでいるところに向かった。

ナイルはやさしい目で花たちをみていた。

不思議なことに、花を摘んだ場所からまた花が咲くんだ。

しかも、次の日には完全に花が開いている。

だから、花をどれだけ摘んでもなくならないんだ。

ナイルにはなにか特別な力でもあるのかと思ってしまう。


「あっ、アオイさんナターシャさん用事はすんだのですか?」


おれは親指を立てて合図をした。


「そうですか、お疲れさまです」


おれたちはうんうんとうなずく。

おれはナイルにあっちで花を摘むという感じにジャスチャーをしてみた。


「はい、あっちでお願いします」


おぅ、通じたようだ。


おれは花を摘み始めた。

それにしても綺麗な花だな~

この花を買ったお客から『すごく花が長持ちして驚いています』とか『買ったときと今では花の色がかわりました』とかいろいろな情報が入ってきている。

とても不思議な花だ。

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