第9話 となりの都市調査
次の日の朝になった。
おれが目覚めるとクレアもナイルもベッドにはいなかった。
おれはクローゼットの前にたつと今日の衣装に変わった。
ほんと、便利だ。
クレアのチョイスも完璧だ。
今日は遠くまで行くと話してあったからなのか、ちょっと動きやすい服装だ。
自分でいうのもなんだが、なかなかいけている。
「おはよう」
「アオイ、おはよう」
「アオイさん、おはようございます」
「ああ、ナイルよく眠れたか?」
「はい、ぐっすり眠れました」
「そうか」
ナイルは昨晩あんなに積極的だったのに、忘れているのか?
ケロッとしているぞ。
もしかして、おれの夢だったのか?
いや、そんなはずはない。
ナイルが寝ぼけていたのか?
もしそうだとしたらなにもしなくて正解だったな。
まあ、ナイルがなんともないならなかったことにしよう。
おれたちは、クレアの作った朝食を食べた。
今日は、品数が少し減っていた。
でも、おれの好きなものばかりだ。
品数もちょうどいい。
「アオイ、お口に合いますか?」
「ああ、おいしいよ」
「よかった~」
「アオイの好きなものばかり作ってしまったのですが、ナイルさんはお口に合いますか?」
「はい、とてもおいしいです」
「それならよかったです」
ピンポーン!
異世界に来ているのにこの音ってなんか調子狂うよな。
「ナターシャさんがきたのでしょう」
「そうだな」
ナターシャが部屋に入ってきた。
「アオイさま、クレアさん、ナイルさんおはようございます」
「ああ、おはよう」
「「おはようございます」」
「ナターシャさんも一緒に朝食いかがですか?」
「よろしいのですか?」
「はい、もちろんです」
ナターシャもクレアの朝食をおいしそうに食べた。
「クレア、あの玄関の呼び鈴の音変えられないか?」
「ああ、かえられますよ」
「ほんとか?」
「はい、かえますか?」
「ああ、ピンポーンはちょっと嫌かな」
「では、チリンチリンではどうでしょう」
「まあ、いっかそれで」
「では、変えておきます」
「ありがとう」
これで、ナターシャがきたときにはピンポーンではなくチリンチリンだな。
「よし、それじゃあ調査にいくか」
「はい、かしこまりました」
「はい、がんばります」
「みなさん、いってらっしゃいませ」
「「「いってきます」」」
クレアはおれにハグをしてほほにキスをした。
おれはやる気がマックスになった。
ナターシャとナイルはちらっとみたが見ないふりをしていた。
――――
マンションをでると、さっそく空を飛ぶバイクに乗った。
「ナターシャ、このまま燃料がギリギリのところまで行こう」
「はい、かしこまりました」
「ナイルもついてきて」
「はい」
そういうと、バイクは飛びあがり走り出した。
おれは下をみていた。
すると、この都市に住む人たちが水上カーに乗って移動していたり公園でくつろいでいたりする姿が見えた。
おれは、異世界にきてからようやく多くの人を見た。
この都市で暮らす人を見た。
「ナターシャ」
「はい、なんでしょうか?」
「おれは初めてこの都市の人が生活している姿をみたよ」
「そうですか? この都市の人はあまり外に出ないですからね」
「え? そうなのか?」
「はい」
「なんでだ?」
「室内の仕事が多いからでしょうか?」
「そうか。システム関係か」
「はい、そうですね」
こんなに綺麗な都市なのにもったいない。
ずっと室内にいるなんて。
「わたしも、昔はずっと室内にいました。でも、今は水の中にいます」
「そうか、ナイルは今は水の中か」
水の中はキラキラしていて綺麗だよな~
おれも泳ぎは得意だが水の中で息はできないからな。
ナイルが羨ましいよ。
おれも練習したらできるようになるのかな?
「アオイさま、そろそろ燃料がギリギリかと……」
「そうか、帰りの分は残しておかないといけないからな」
「はい」
「じゃあ、ここからは水上カーにしよう」
「はい」
「わかりました」
結構走ったが、あたりをみてもなにもみえない。
どういうことなのかな。
とりあえず、水上カーに変えてもう少し走ってみることにした。
「ナターシャ、一応ここの水を採集しておいてくれ」
「はい、かしこまりました」
水の成分を見ておくためだ。
また、走りだした。
しばらく走ってもなにもみえなかった。
山も街もなにひとつなかった。
「アオイさま、そろそろ限界です」
「わかった。ここからは少し泳いでみようか」
「泳ぐのですか?」
「ああ、ナターシャは泳ぎは苦手か?」
「いえ、そうではありませんが……」
「アオイさん、まずはわたしがこのあたりを泳いでみてきましょうか?」
「そうか? では頼むよ」
そういうと、ナイルは水に入り人魚のように泳ぎだした。
それは美しい泳ぎだ。
「ナターシャ、ナイルの泳ぎは綺麗だな」
「はい、わたしも見とれてしまいます」
「そうだよな、人魚のようだよ」
「人魚とはお伽話の人魚ですか?」
「ああ、知っているのか?」
「はい、でも悲しい結末だったような気がします」
「そうだな。童話は結構最後悲しい結末が多いな」
「でも、ナイルさんを見ていると確かに人魚のようにみえますね」
「水の中でも息ができるしな」
「確かにそうですね」
「でも、このことはだれにも話さない方がよさそうだな」
「そうですね、水の中で息ができるなんて研究の材料にされかねません」
「そうだな秘密にしておこう」
「はい」
おれたちがそんな話をしているとナイルが帰ってきた。
「ナイル、どうだった?」
「かなり遠くまで泳いだのですがなにもありません」
「そうか」
「そして、お魚さんたちをみてもこのあたりに人が住んでいる様子はなさそうです」
「魚をみてわかるのか?」
「なんとなくですが、泳ぎがゆっくりで優雅に泳いでいるように感じるので人はいないかと思いました」
「なるほどね」
「人が近くにいると、慌てて泳ぎが早くなったり体に傷がついていたりするということだよな」
「はい、そうです」
おれは、これ以上調査してもしょうがないと思った。
「ナターシャ、ここの水も採集しておいてくれ」
「はい」
「ナターシャ、帰りは水の中をかえってくれるか?」
「はい、わかりました」
「ナイルさん、ついてきてください」
「はい、わかりました」
おれたちは、水の中を帰った。
水の中はすごく綺麗だった。
いろいろな魚がいた。
大きな魚。
小さな魚の大群。
太陽に光ってうろこががキラキラしている。
人がいないってこんなに水は綺麗なんだと思った。
生活水とか流れるから水は汚れる。
でもこの異世界なら生活水なんてでないのだろう。
でも、水上カーが走れば汚れるか。
だから、ここの水は綺麗で透明なんだな。
この先の調査はドローンとか作ればいいか。
いや、そういう問題なのか?
おれたちは、燃料ギリギリで戻ってきた。
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