第99話 異世界人SIDE:異世界から帰った後 ある少女の物語。
あはははっ惨めなものね。
異世界に行って全てを失ってしまったわ。
異世界に行くまでの私は優等生だった。
お父さんは上場企業の役員でお母さんは専業主婦。
私は有名私立大学を目指していた、模試ではA判定だから多分行けたはずだ。
そんな私が異世界転移に巻き込まれた。
正直怖くて仕方が無かった。
だって幾らチートだと言った所で、死なない可能性はゼロじゃない。
だから、お見合いには進んで参加したのよ…
そうしたらね..居たのよ、リアル王子様…
本当は王子じゃない。
子爵だけど、ランスロット様。
風で靡く金髪にすらっとした足…映画のスターにだってこんな人は居ない。
気がつくと私は恋に落ちていた。
こんな素敵な方が私を好きになるなんて信じられなかった。
彼は何処までも優しく…
「子供の頃の夢は白馬の王子様と結婚する事でした」
そういう私に…
本当の白馬に乗って迎えにきてくれたの。
「はははっ僕は王子じゃ無くて子爵だけど結婚してくれるかい」
勿論「はい」と答えましたよ。
それからは甘い毎日でした。
なんでもランスロット様の家では決まりがあり、結婚したら1か月間部屋にこもりっきりで子作りしなくてはならないそうです。
食事とトイレ、お風呂以外は部屋から出る事も叶わないそうです。
男性経験が無い私は顔を赤面してしまいましたが…お義母様も優しく…
「貴族の家に嫁ぐと言う事は跡取りを作る事が重要なの、貴方とランスロットの子供が見たいのよ。孫を私に抱かせて欲しいわ」
といわれ了承する事に。
なんでもお義母様は、あと少しでこの家を親戚に取られそうだったらしいの。
夫を亡くして困っていたが、運よく子供が居たから取り上げられず家を守れた。
そういう話をきかされました。
恥ずかしいけど、幸せな日々を過ごしてから暫くして、大変な事が起きてしまいました。
それは神代君が反旗を翻し国が大変な事になっている。
そういう話でした。
マリン王女から招集が掛かり、クラスの皆が集められました。
行きたくは無いけど、ランスロットの立場が悪くなるから行きました。
その時に酸が掛かって手に大きな火傷を負う事に。
神代君はその時に刺されて死にました。
正直可哀想だと思いましたが、私はランスロット様との生活を取り戻せたので満足だったのですが…
何故か、神代君が神として蘇り、多数決で日本に帰る事が決まってしまったのです。
私は…私は帰りたく無かった…ランスロット様。
そんな願いは叶わなった。
◆◆◆
「神谷順子…いい加減吐け、神代の殺害現場からお前のハンカチが見つかった。お前も殺しに関わったのか?」
何がなんだか解らない。
ランスロット様と離れて、家に帰り両親に泣かれた後、私に待っていたのは警察の事情調書でした。
神代君が死んだのは異世界だ、この世界じゃない。
だが、そんな事は言えない。
死んで神様になったし、私は関係ない。
そんな事は言えないし、言ったらキチガイ扱いされるでしょう。
結局、警察の話では私は傍観していただけという事で釈放さました。
だが、ここからが地獄だった。
「警察から聞いたわよ、貴方、危ないグループと付き合っているんだって」
「この面汚しが」
お母さまに泣かれ、お父さまにビンタをされ、暫く私は部屋で反省しろと出して貰えませんでした。
私の不幸はそれで終わりませんでした。
暫くして私は良く吐くようになり、気になって検査薬を使ったら。
「嘘…妊娠している、そんな…」
どうして良いか解らない。
こんな事両親に相談出来ない。
どうしよう…
相談が出来ないまま時間が経ち…お腹が大きくなっていきました。
『もう誤魔化せない』
私は母親に話しました。
「あんたって子は一体何をしているの? 父親は誰なの?」
ランスロット様はこの世界に居ない。
「知らない…」
パン、パン、パン
えっ
「なんてふしだらな女に育ったのよーーーっ母さんは母さんはハァハァ」
「痛いよ…お母さん、お母さん」
顔が腫れても、お母さんは止めてくれなかった。
泣きながらのビンタが終わった後、私は産婦人科に連れていかれた。
「おめでとうございます、妊娠しています」
そんなのは知っていた。
だが、ここからが問題だった。
お母さんが堕胎について聞いていたが…
「もう周期的に降ろせません」
そういう風にお医者さんが説明していた。
家に帰るまで、家に帰ってからもお母さんは黙っていた。
そして私は部屋に引き籠った。
夜にお父さんが帰ってきてお母さんと話した。
お父さんにも殴られる。
そう思っていたが違った。
「お前には失望した。子供が産まれるまでは面倒見てやるが、産んで暫くしたら出て行け」
そう言うなり…お母さんと部屋に引っ込んでしまった。
なんでこうなるの…
ただ、異世界に行っただけでこんな事になるなんて。
ランスロット様、私を助けて。
そこからが地獄だった。
私をまるで汚物を見る様な目で見る両親との暮らし。
高校は自主的に退学した。
この子が生まれたらこの家も出なければいけないから、コンビニでバイトも始めた。
憧れのキャンパスライフはもう夢になってしまった。
これなら…帰って来たく無かった。
私は残りたかったのに…
神頼みをしようと神社に行った。
だが…可笑しいな、ちゃんとお賽銭を入れたのに弾かれるように入らない。
幾らやってもお賽銭が入らない…そうか神様にも嫌われちゃったのか
なんでこうなっちゃったのかな。
◆◆◆
やがて子供が産まれた。
金髪に青い目の可愛い子だった。
だが、更に両親は…
「なんてふしだらな女なの、よりによって外人だなんて」
「お前、やっぱり危ない奴と付き合っていたのか。噂で聞いた通りだ顔も見たくない出て行け!」
「お父さん、お母さん!」
「もうお母さんなんて呼ばないで頂戴」
「私の娘じゃない」
駄目だ…当たり前だよね、外人の子を産んだんだし父親の名前すら言えないんだから。
「今迄お世話になりました…」
それしか言えなかった。
◆◆◆
どうしよう…どうしたら良いの。
今の私は親から貰った手切れ金の50万円しかない。
これが無くなったら終わりだ。
神様すら私を拒むんだから…もう終わりだよね、あはははっ死のうかな。
赤ちゃんごめんね。
うん…神様?
そうだ、私は本物の神様の居場所を知っている。
『神代神社』
神代君は神になった。
あの場所なら、もしかしたら神代君に会えるかも知れない。
そんな資格は私には無い。
だけど…縋るしかない。
夜だったけど構わずに神社に行った。
『神代君…神代君、私が悪かったわ…謝る、謝ります…だから助けてよ…お願いよ、お願い』
どれ位、祈ったか解らない。
だけど、私は知っている。
神代君は神様になった…だから、居るんだ。
『呼んだかな』
『嘘、神代君の声が聞こえる…』
『違うよ…僕の名前はリヒト、リヒトちゃんって呼んで』
『神代君と違うの?』
『う~ん、簡単に言えば眷属って感じかな、君は…僕と波長があうね』
『そうなの…それで助けてくれるの?』
『そうだね、君は神の加護を捨てて異世界に行って、神殺しに携わっていた、大罪人だよね』
『やはり無理だよね、助けて貰えないよね』
『いや、罪は償えば良いんだよ…今僕は探しているんだ』
『何を?』
『この地域にテラス教を広めてくれる人を』
『神代君の宗教』
『それだよ…僕と一緒に日本にテラス教を広めない? そうすればやがて罪は許され、幸せになれるよ…テラス教は現世での幸せを約束するから』
『本当?』
『うん、まず最初は…はい』
嘘でしょう、私の前に札束が現れたよ。
『これだけあれば、生活に困らないでしょう』
『この子の為にも頑張るわ』
やがて世界に
「貴方はテラス様をしんじますか?』
の声がこだました。
そして彼女は『神聖テラス教の教祖』神谷順子として世界に名を広めた。
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