第98話 異世界人SIDE:異世界から帰ったのち
◆◆テレビより◆◆
「今日未明、水路より少年の腐乱死体が見つかりました。死体はかなり多くの人間から暴行を受けておりナイフの様なもので刺殺された模様です」
「死体の身元が解った模様です。死体の身元は神代理人、●●高校の学生です」
「いや、酷いですね...とうとう●●高校から死人が出ましたよ、あの高校の少年AはBとCと共謀して警察官や自衛官を襲ってまだ逃げているのでしょう?」
「流石に、此処までの事をしたのだから本名を晒して指名手配をしても良いと思いますよ」
「少年保護法があるとはいえ残忍極まりない犯罪です、少年とはいえ、今回の事件は悪質すぎます。特に少年Bはその後の余罪で少女に薬品の様な物を使い乱暴をしようとした。そういう疑いがもたれています」
「しかし、良く逃げますね...なぜ捕まらないのでしょうか?」
「それは解りませんが、なんだかの逃走手段があるのでしょう」
「此処で速報です...神代理人の殺人には三人は関与していない模様です。現場の証拠から担任の教師緑川と複数の生徒が関与しているようです。警察では緑川を」
◆◆◆
「う~ん、此処は何処だ…日本じゃないか? おい戻ってきたようだぞ」
どうやら、日本へ戻ってきたようだ。
死んだと思っていた、大樹、大河に聖人まで居るじゃないか。
私はまるで眠っているかのように倒れている生徒を一人一人見て回っていた。
やはり、神代に平城、北条、木崎に三端は居ない。
それが、今までの出来事が夢では無かったという事を思い知らされる。
自分の顔を近くの水たまりで見てみた。
どんな基準で治したのだろうか?
酸で溶けたはずの顔はある程度は治っていた。
あくまで、ある程度であって完全には治っていない。
醜く焼けただれていた私や吉川の顔は、火傷を負った跡がある位まで治されていた。
多分、神代君が、困らない程度までは治してくれたのだろう。
殺そうとしたのに此処まで治してくれたのだ...文句は言えないな。
軽く手足を振ってみた。
あの世界の様にスピードは出ない。
元の非力な私だ。
この分なら、ジョブやスキルも無くなったようだ。
元の日本人に戻った。
そういう事だな。
今まで眠っていた生徒たちが一斉に目を覚ました。
「あれ...俺たちは死んだんじゃないのか?」
「大樹に聖人、不思議だな、死んだはずなのに生きている」
「まるで夢みたいだね」
死んだと聞かされた三人は生きていた。
「先生...俺」
「吉川も気が付いたのか」
「はい、この傷」
「火傷程度までは治してくれたようだ」
吉川と私は顔に火傷の跡がある。
他の生徒も同じだ...
だが、薬品で溶けたようなものでなく、火による火傷程度になっており...二目と見れない顔では無かった。
討伐でできた傷などはそのまま残っていた。
基準が解らない。
まぁ、無事に日本に帰ってこられた、今はその事だけで胸がいっぱいだ。
◆◆◆
異世界に長い間行っていたが日本では2週間位しか過ぎてはいなかった。
異世界に行った等といっては可笑しく思われるから、記憶が無いで全員で通した。
世間では神隠し事件として大きく取り上げられた。
だが....
「緑川、神代理人殺害容疑で逮捕する」
何が起きたのか解らない。
「神代君が死んだ...そんなバカな...彼は」
「神代らしき男性の死体が見つかったんだよ、かなり凄い暴行を受けたあとナイフで突かれて死んでいた。」
神代は異世界で神になりました。
そんな事は言えない...
「いえ、何でもありません」
「まさか、生徒みたいに異世界にいったなんて馬鹿な事は言わないよな?」
私は黙って警察についていくしかなかった。
◆◆◆
「いい加減にしろ、このゴミ野郎がっ」
「私は、本当に何も知らないんだ」
「そんなわけねーだろうがっ、お前は一体どこの組織に入っているんだ...あんっ」
警察の取り調べは容赦が無かった。
「先生よ…お前ら全員麻薬をやっていただろう?」
「やってない」
「そうか...なら、なんで全員、異世界に行っていたなんて幻覚を見ているんだ? 麻薬でも決め込んで乱交パーティーもしくは売春させていたんだろうがーーーっ」
「そんな事はしていない!」
「だったらよーお前の生徒が産んだ子はなんだ...目が青いじゃないか...外人相手にお前がみだらな事をさせていた証拠だろう」
「...」
「それに生徒やお前の体の傷はなんだ? どう見ても刃物でつけた傷があるよな?正直に吐けや」
結局、罪を認めない私や吉川は神代の殺人罪で起訴された、そして他の16人も殺人ほう助で罰されることになった。
神代の体からは我々の指紋を含み沢山の証拠が出てきた。
大河や大樹、聖人は平城綾子への暴行未遂に失踪、北条塔子の失踪の関与を疑われたがこちらは立証されず罪には問われなかった。
だが、連続警察官襲撃事件で逮捕されたと聞いた。
私は解ってしまった。
これは、我々が異世界で起こした罪だ。
私や吉川たちは確かに神代を殺した。
その後神として復活したとしても殺してしまった事実は変わらない。
そして大樹達がやった事も騎士への暴行などをこの世界の罪になおせば警察官への襲撃事件となるだろう。
つまり、異世界で行った事を日本で償いをさせられている。
それだけの事だ。
神代は神なのだ、死体や証拠を作るのは簡単に出来るだろう。
これは冤罪ではない。
場所は兎も角、全員がやった事だ。
その後、我々以外にも過去に神隠しになった者が続々と見つかったが、そのすべてが何かしらの罪で罰された。
多分彼らもきっと異世界で何かした人物なのだろう。
牢屋で異世界に居る妻たちを思い出しながら反省をするしかない。
『もう一度やりなおしたい』
そう思うが、それはきっと叶わない。
罪を認め死ぬまで、私が知っている神に祈りながら過ごすことしかもう出来る事はないないだろう。
◆◆◆
「●●高校の出身者は、絶対に採用することは禁ず」
これは最近、ある人物が発した言葉だ。
発した人物は北条巌。
塔子の父親だ。
沢山の同級生が戻ってきたなか実の娘塔子が戻ってこない。
その事に怒りを覚えていた。
「お前らの息子達はボディーガードもしないで暴行事件か!最早援助はしないし、契約も解除だ」
その前には男女6人が土下座をしていた。
大樹達の両親だ。
そして彼等を見下ろしたように巌の横に座る人物がいた。
平城誠、綾子の父親だった。
「「「「「「すいません、すいません、助けて下さい」」」」」」
「巌さん、北条家と平城家が本気になって探して見つからなかったと言う事は最早娘たちは帰ってこないでしょう」
「ああっ、そうだ、神代家からはあの理人君は『似て非なる者』だそうだ。まぁそれは誰も証明は出来ないらしいが、少なくとも神代家ではそういう見解らしい」
「理人君が傍にいるなら問題は無いな...神代の血筋が傍にいるなら不幸な事にはなっていないでしょう」
「そうだな、だが、それと私たちが娘に会えなくなったのは別だ」
「そこのボンクラのせいで娘にあえなくなった。まぁ半分八つ当たりだが、北条はもうお前たちには微笑むことはない」
「そうそう、そういえば、今度の市議会選だけど、平城家は一切、手を貸さないから頑張って」
「もう良い!だれかそこのゴミを捨ててこい」
日本最大の財閥に裏から政治家を仕切る平城家、そこを怒らせた大樹達の親達に未来はないだろう。
特に自分の娘を守る事を条件に援助をしてきた巌は彼らを確実に嫌った。
もう実業家としての人生は諦めるしかない。
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