第100話 異世界人SIDE:異世界から帰った後 ジャミル



何故か目が覚めると日本だった。


俺は異世界人にナイフで刺され、ワイバーンに食われた筈だ。


あれは夢だったのだろうか?


そんな訳はない。


記憶が鮮明すぎる。


こんな鮮明な夢なんて見るわけが無い。


女神から説明を聞いて無かっただけで、死んだら元の世界に帰れる。


そんな話だったのか?


しかし、此処は何処だ?


何だか地元では無いようだ。


しかし…嫌だな。


俺が此処に戻ってきたと言うなら、あいつ等、他の同級生も戻って来たと言う事だ。


また虐めが始まるかも知れないな…今の俺には異世界での能力は無い。


だが、帰らない訳にはいかない。


親父が家で待っている。


俺が街を出て都心で生きていく為のお金を貯めているに違いない。


だから、帰らない選択は無い。


俺だけ別の場所というのは、女神様が気をきかせてくれたのだろうか…解らない。


よく場所を調べたら…隣町だった。


制服のポケットに手を突っ込むと1000円札が入っていたのでそれを使い電車に乗った。


異世界に居たせいか…街並みも電車も凄く懐かしく感じる。


何年もあの世界に居たんだ。


そりゃ、そうか…


あれ…鏡に映る、この姿は誰だ。


これは、この俺、鈴木誠の姿じゃない。


ましてジャミル鈴木の姿でも無い。


かなり美形に見える。


これはもしかして、異世界から帰った時に女神イシュタス様がくれたものなのか?


解らない、全く解らない。


だが、この姿で親父は俺が解かるのか…まぁ会ってみて解らなければ、最悪1人で暮らすしかない無い。



◆◆◆


「誠…誠じゃないか? お前今迄何をやっていたんだ」


親父に泣きつかれた。


俺は結構長い間、此の世界に居なかったそうだ。


それは同級生たちも一緒で、同級生たちは俺より少し前に駅前広場で寝ているのを発見されたそうだ。


「それでな….誠、お前何をしたんだ?」


俺が何かしたのか?


此の世界での俺は人畜無害の筈だ。


ひたすら虐めに耐えていただけ、俺は誰も傷つけていない。


「親父、俺には心当たりが何も無いんだが」


「そうだよな…お前が沢山の人間と不倫が出来るわけ無いよな」


不倫…異世界でという事ならお金で買っていたとは人妻も沢山相手していたから『不倫』もしたのだろう。


だが、日本ではそんな事をした記憶は無い。


「そうだよ親父、俺がそんな風にモテる男に見えるか?」


「見えないな」


「そうだろう、年齢=童貞年齢なんだからな」


「そうか父さん安心したよ」


俺がこの世界でモテるわけが無い。


◆◆◆


「親父、この人たちは?」


「いや、お前が妻を寝取ったと言いがかりをつけて来たんだ」


全部で何人居るんだ、女の数だけ数えれば何組か解るな。


10組位居る。


「あんた随分逃げてくれたな…ようやく捕まえたよ」


「何の事でしょうか?」


「お前が俺達の妻を寝取ったんだ。こちらは証拠だって掴んでいる」


そう言うと男が写真を放り投げた。


嘘だろう、俺が年上の女性とラブホテルに入っていく写真やらなにやらが沢山散らばった。


これは…なんだ。


何も知らない。


だが、写真に写っている男は俺だ。


俺の顔色を見た親父が土下座をしていた。


「すみません、息子がこんな事を本当にしていたなんて」


「親父、俺はそんな事をしていない」


「嘘つくな、だったらこの写真はなんだ、どう見てもお前にしか見えない」


◆◆◆


「なぁ、俺達が嘘を言って無かったのは解かっただろう? そいつは俺の妻を寝取った。それだけじゃない、逃げていたんだ。その後俺たちは話し合いの結果離婚はしない事にしたんだ。俺たちは慰謝料を請求する。」


「慰謝料って幾ら位必要なんでしょう」


「俺達1人当たり500万円」


嘘だろう10人居るから5000万円。


俺が払わないといけないのか。


いや可笑しすぎる。


「そんなお金持っていません」


「そうか、そうか…じゃぁ一生かけて払ってくれ」


何が起こった。


何故こんな事になっている。


今の俺には真面な話、何が何だか解らなかった。



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