第87話 上級国民



「帝王様、テラス教を国教と認めて良かったですな」


「全く、その通りだ。最初は胡散臭いと思っていたが、凄まじいな…我々は濡れ手に粟で莫大な利益を手にする事が出来る」


我々は、既に全部の金貨を既にテラス札に交換してある。


交換レートは 10万円=金貨1枚。


だが、直ぐにテラス教の方で 交換レートは 1万円=金貨1枚に引き下げられる。


つまり、金額はそのままだが価値が10倍になるから、資産が10倍になったようだ。


この金額があれば、俺の代だけでなく10代先まで遊んで暮らせる。


「しかし、良かったのですか帝王様、国を丸ごと譲ってしまって」


「まぁな、父上が亡くなってこの国の治世も難しい。実際にこの国を回しているのは最早、帝王や貴族ではない。テラス教なのだよ! 今ある城のお金を10倍にして億単位のお金が貰えるなら潮時だ。俺としては新参者の国と散々馬鹿にされ、金だけ大きな国から取られていた国が最後に世界の中心に近い状態になったんだ、これで良い」


「実質、帝王や貴族の位は無くなっても、上級国民という新たな地位を貰える、さらに一代限り最上級国民としての扱い、なら問題はありませぬな」


「確かに、何もしないで地位が保証されて、お金はどれ程使っても減らない位あるのだ、正直急に、王子から帝王になり、政治で困っておったのだ…政治の事はさっぱり解らん、宰相に言っても『それは王が判断する事でございます』としか言わぬ。渡りに船だな」


流石に国家予算10年分を個人資産にして良いと言われれば…もう引退しても構わぬ。


しかも最上級国民として地位の保証に月に8000万円の支給。


この方が遙かに良い。


「しかし、宰相殿が急に体調を壊し、亡くなるとは思いませんでしたな」


「まぁ、父も宰相もかなりの歳だ。いつ亡くなっても可笑しくない歳であった。今いる王子は俺以上に頭が悪い…これで良かったのだ」


「そうですな、今回の件で男爵以上の地位にある者の多くは今回の件で皆、爵位に応じた上級国民になるそうです。今後働かないで、今以上の生活が出来ますからね」


「まぁ我々は良い事尽くめだ。それに引き換え、王国や聖教国は今では餓死者まで出ているそうだ…テラス様様だ」


「王国や聖教国では食料が手に入らずに、貴族からの亡命者も沢山出ていますからな。そろそろ国としての面子も保てなくなるのではないか?」


「金貨の価値を下げ…最後には金貨の廃止、それでほとんどの国は終わるかも知れませぬ。それに対して我々は、大量のテラス札を持っている。教皇だろうが王国の王だろうが一気に資産を持たない存在に落とされる…恐ろしい話です」


「まぁ、世界有数の金持ち権力者になる切符を貰った我々は幸運だったそういう事だ」


「何もしないで贅沢して暮らせる…なんて素晴らしい世界なんでしょうか」


「その通りだ」


世界は大きく変わりつつあった。



※次回は少し視点をずらして 王国か聖教国の閑話を書こうと思っています。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る