第88話 王国SIDE:理人討伐




上手く事が進んで良かったですわ。


流石に私も王の暗殺は初めての事ですから少し緊張しましたわ。


理人様に上の階段に昇って貰う為には『王』になって貰う必要がありますから必要な事なのですわ。


宰相に先代の帝王この二人は頭が良く、一応はテラス教を国教として認めてくれていた物のまだイシュタスに未練がありそうでしたわ。


それに加えて先代の帝王と宰相はアレフロード王国や聖教国イシュタリカとも親交があり同情していましたから目の上のたん瘤でしたの。


だからこそ『退場ねがいました』わ。


残念ながら継承権のある王子は馬鹿ですし、その取り巻きもお金で転ぶ様な奴しかいませんから、2人さえいなければ簡単に落とせますわ。


ルブランド帝国も無事手中に収め…時期を見て、神聖テラス帝国に名前が変わりますわね。


勿論、初代帝王は『神に選ばれた男 理人様』ですわ。



◆◆◆


「何故、我々がこんな思いをしなければいけないの」


王女マリンは。貧窮していく国に嘆いたいた。


異世界人を勇者を含み召喚して、魔族と戦う要になる国。


魔族を退け、世界を魔族から救う勇者。


その勇者輩出国…それが我が国、アレフロード王国。


それが今、大変な事になっています。


魔族が襲って来たわけでもありません。


今現在の最大の敵は…お金と宗教。


そして人間です。


「ペテン師国王を許すなーーーっ」


「魔族は敵じゃ無かったのに、邪神イシュタスが攻撃を仕掛けたから、人間を襲うようになったんだーーっ」



そんな事が今、ゆっくりと浸透され国民から囁かれるようになりました。


最初は放っていたのですが、それが日に日に増えていき、国を出ていく者が増えてきました。


1人捕らえ詳しく話を聞くとルブランド帝国が一枚噛んでいるのが解りました。


しかも、そこに更にテラス教団という得体の知れない教団まで絡んでいる。


そういう話でした。


「テラス教の信者になれば、魔族から襲われない人生が約束されるんです。しかも豊かな人生の保証までされるんです。私はこの国で悪い事はしていません。国を自由に出ていくのに問題が無い筈です」


そんな馬鹿な事を言ったそうです。


これが、我が国が疲弊した原因です。


そんな訳はないのに…騙されているのでしょう。


ですが、教えてあげる必要はありません。


こんな背信者は死ねば良いのです。


「そうですか、貴方の様な人間はこの国には要りません。とっと立ち去りなさい」


「はい」


ですが、真実を知る必要があります。


その為、密偵を放ちました。


ですが…誰1人帰って来ません。


手練れの筈の密偵が誰も帰って来ないのです。


仕方なく、闇騎士を使う事にしました。


私の子飼いの騎士、国でなく私に忠誠を誓っている騎士です。


これなら黒騎士クラスが出て来ない限り大丈夫な筈です。


暫くして闇騎士が帰ってきました。


「それで真相はどうだったのでしょうか?」


「はっ、真相は真実でございました。ルブランド帝国に貧民は存在無く、全ての民が貴族並みの生活をしておりました。更にテラス教に入るなら、テラスのブローチという物が貰えて魔族に襲われない生活が保障されています」


まさか、話が全部本当だと言うのですか?


「それは本当の事ですか?」


「誓って。全ての不幸はイシュタスが起こした。そうテラス教では言われています。 魔王は心優しい存在で、自分からは本来は攻撃したくはないがイシュタスが勇者を寄こして攻撃してくるから、人類と戦うのだ。と言っておりました。その証拠に魔王は城から出て戦った事は無い。そう言っていました。あの国ではイシュタスと勇者達は大罪人扱いです」


「それを皆が信じている、そういう事ですか?」


「はい…あの国ではアレフロードとイシュタリカこそが悪の根源だと言われています」


「一体誰が、誰がそんな事を言い始めたのですか」


「神代理人、異世界召喚者の少年です」


「あの少年が…」


あの少年ならイシュタス様を恨んでいるのが解かる。


そして勇者達にやりたい放題させていた我々も恨んでいたのでしょう。


和解したそう思っていたのですが、違っていたようです。


待ってそれじゃ…


「魔王に対する最大戦力の聖女と大魔道の少女は一体どうなっているのですか?」


「聖女である塔子様を中心に綾子様も加わりまして、イシュタス様を邪神としてテラス教の布教につとめております…以上です」


「そうですか…待ちなさい。何故お前から話を打ち切るのですか? 無礼です」


「姫様、これが私の最後の忠義になります。私は姫様には沢山の恩が御座います。ですが恨みもある。これにて闇騎士の地位を返上させて頂きます」


「何故ですか、貴方は..」


「剣聖や勇者に怪我をさせられ騎士を続けられなくなった者の1人が私の許嫁でした。お見舞いをして頂き、気にかけて下さったのは理人様です。『助ける準備がある』そう連絡を貰ったそうです」


「そう…ですか」


「城を去った後迄、理人殿は、自分が不遇だったのに気にかけて下さったのです。それに私には勇者も剣聖も邪悪な者にしか見えませんでした。女の私から見たら身の危険を感じる程に…今の私にはテラス教の方が正しく思えます」


「黙って行かすと思いますか?」


「そう言われると思いました。最後の忠義は終わりですよ。忠告いたします、もし私に手を出すなら、黒騎士として貴方の命を頂きます」


そんな薔薇の紋章。


「それは薔薇の紋章…」


「今の私は黒騎士に所属しています。知ってますよね! 黒騎士を殺せば、フルール様を敵に回しますよ? 争いの種はまかない方が良いと思いますが…」


「もう、貴方の顔も見たくありません。立ち去りなさい。追っては掛けないわ」


「それでは立ち去らせて頂きます」


あの者は戻ってきてくれただけ忠義があったのでしょう。


あの分では他の密偵は全部…むこうに寝返った。


そう思わなくてはならない。


減ってしまった騎士や衛兵。


最早、この国には帝国と戦う力はありません。


ですが、今動かないとこの国は終わってしまう。


だが、神代理人、貴方は大変なミスをしました。


異世界人はイシュタス様の使いだからこそ、特権階級なのです。


もし、イシュタス様が邪神なら悪の手先になるのです。


私はお父様に頼み、いまこの国付近に居る異世界人を全員集めて貰うよう頼みました。


果たして貴族の妻になり甘い生活を送っていた者が…権力や栄光を手に入れた者がそれを手放すでしょうか?


先手を取られてしまいましたが、此処からは反撃の時間です。



◆◆◆


「皆さまにお話しがあります! 貴方の元仲間の神代理人がイシュタス様を邪神と扱い『貴方達を邪教徒』として扱うようです」


「そんな神代が..」


「何かの間違いではないですか?」


「事実です、今現在この国はお陰で国力が下がり、皆さまには影響が出ていると思います、特に貴族の家にいかれた方は困っているのでは無いですか」


「はい、領民がかなり去ったと聞いています」


「私の夫も最近はいつも暗い顔ばかりです」


「そうでしょう! 我が国は神代理人を大罪人と認定しました。皆様には神代理人たちの討伐をお願いしたいのです…もし首尾よく仕留めた者には嫁いだ実家の爵位を公爵にする準備が御座います。まだ爵位を持っていない者には伯爵の爵位と領地を差し上げます。お願い致します。あの反逆者を討伐して下さい」


此処にいる異世界人は18人。


それぞれが、事情を抱えこの国から離れられない者ばかり、しかも夫や妻も此処にいる。


これで大丈夫な筈です。


「マリンの願いを聞いて欲しい。無論、儂からも頼むこの通りだ」


父が頭を下げる事は滅多にないわ。


これで動かない貴族は居ないでしょう。


異世界人に掛かれば簡単な事でしょう。


マリンの目論見どうり、全員が理人の討伐を受けた。




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