第2話  祖父母

「お帰り、疲れたろう少し休むかい。」二人を祖母が優しく出迎えた。

「うん、大丈夫だよ、先にお墓参りに行ってくる。」

ペットボトルに水を入れ、裏山に続く細い山道を登ると一段高い所に古い寄せ墓と一回り高いモニュメントに山田家の先祖が眠っていた。持ってきたペットボトルの水をかけ寄せ墓とモニュメントを軽く清掃して花を添え。水鉢に水をお供えして高校入学と中学入学を報告した。その先に村人たちのお墓が立ち並び、小高い丘からは眼下に虫明湾、瀬戸内海に浮かぶ小舟と漁船、本州から四国へと行き来する観光船、大きな貨物船も見えた。水平線に沈む夕日が兄弟の未来を明日を祝福するかの如く逆光して西の空を真っ赤に染めていた。かずともはやともここから見えるこの景色が好きだった。しばらくして、山を下り家に着くと祖父母は揃ってリビングでニュースを見ていたが 二人に気がつき準備していた入学祝を二人にくれた。そして、祖父は「儂はこの地で生まれこの地で育った。だから他所よそは知らない。「儂も婆さんもここで一生を終える。残された人生もこの地で、ここで終わりたい。どこにも行きたくない。ここで終える。だがお前たちは違う。何かをみつけろ、自分のルール、自分の道、野球・サッカー・囲碁・将棋、文学、スポーツ、何でもいい、自分がしたい、好きだと思うことを真面目にコツコツやれることをまずは見つけろ。」祖父は一気にそれだけ話しかけてきた。それを聞いていた祖母が隣で微笑みながら「かずともはやとも大丈夫、素直に育っているよ。このまま、順調に育てば問題ない。」と二人を擁護してくれた。「うん、解った。何かを見つけるよ。はやとと二人、自分の道を探すよ。」その時、かずとの携帯が鳴った。亜希あきだった。「もしもし、かずと君、京子きょうこにかずと君が帰っていると話していたら、それじゃ集まろうと言うことになって、あした、サッカーでもしようかと思っているんだけど、かずと君、どう、来れる。」「サッカーか?それもいいな、俺もみんなにも会いたいし、弟も連れて行っていいか?」「いいよ、急な話だから何人集まるか解らないけど、多い方が楽しいよ。弟さんもどうぞ。じやっあ、これからみんなに聞いてみて、あとで電話するね。」「解った。じやっ後で。」電話を切ると祖母がご飯にしようと、家で作った野菜中心の夕食が食卓を賑わした。農薬を使わず、自給自足で育て上げた新鮮な材料と、年季の入った祖母の手料理は格別美味しかった。「お祖母ちゃん、ご馳走さま、本当においしいよ、美味しかったよ。」「しげるさん、お義父さんは、元気にしているかな。」「うん、お父さんは、元気に貨物船で料理を作っていると思うよ。滅多に家には帰らないけど。」はやとが答えた。はやと、かずとの父、しげるは腕のいい料理人だった。母、笑子えみこと結婚し、牛窓の地で民宿の料理人として働き二人を育てた。かずとが小学校6年の時、姉を頼って大阪の港区に賃貸住宅を買い、1階を自ら使用し2階を賃貸として家賃収入を得、従弟の紹介で貨物船の料理人となった。そして、一年後、一家は大阪に引っ越し、母・笑子えみこもまた事務員として心斎橋の会社に勤めた。だから、かずと・はやとは鍵っことして大阪では暮らしていた。二人にとって祖父母の住むここは、春夏冬の長い休みを過ごした第二の故郷であり、幼いころから近くの川、近くの海と山で遊んだ思い出の地であった。祖父母は、日の出とともに畑で鍬を振るい耕し、田で、山で働き、日の入りと共に家路に着いた。太陽中心の農家として生活していた。食事を終えた時、再び、かずとの電話が鳴り亜希から「明日、13時、小学校グランドに集合、人数は、15~6人位」と明日の予定が伝えられた。「ありがとう、解った。遅れないようにいく。」と伝え電話を切り、はやとも一緒に行こうと話していると、祖父が明日は買い物に行くので送迎しようかと聞いてきた。「13時から4時間位、17時前後に解散すると思うけどいいかな。」「それなら、ちょうどいい、あしたは送って行こう。」


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翔ベ! レザー新高校一年生 瀬戸内 風人 @setouchifuuto

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