第二章 従魔争奪戦争

Evol.082 分配

 ステラさんへの報告と色々と周囲への対策を練った結果、その日はそれだけで昼を回ってしまった。


 これからダンジョンに潜るという気分でもないし、まだこれから先の方針に関しても話し合いをしていない。


 そのため、後回しにして忘れていた事柄を宿の部屋で話し合うことにする。


 これは本来であれば俺とスフォル、そしてリフィルの三人で話し合うべきことだったのだが、リフィルがすぐに旅立ってしまったため、仕方がないので二人で会議を始めた。


「まず、今回のダンジョン探索で得た魔石に関しては俺とスフォルで二等分、レイドボスの報酬に関してはリフィルも含めた三等分でいいと俺は思う」


 俺たちが話し合うのはこの戦いで手に入れたものの分配についてだ。


 今までは俺一人だったので分配なんてことに気を遣う必要はなかったが、これからはスフォルと一緒にパーティを組むことになるので、報酬に関してはきちんとしなければならないだろう。


「い、いえいえ、私はただ足を引っ張っただけなので受け取れませんよ、そんなの」


 しかし、スフォルは体の前でアワアワと手を振って受け取ろうとしない。


「ダメだ。これからパーティとしてやっていくのならきちんと分配しないとな」


 彼女も最初は何もできなかったとはいえ、徐々に自分で敵を倒せるようになったし、ドラゴンゾンビとの戦いではある程度戦力になっていた。


 彼女にも受けとる権利があるはずだ。


「いーえ、今後はともかくとして今回に関しては譲れません。命が助かっただけでとんでもないほどの報酬です。これ以上多くは望みません」

「でもなぁ。スフォルも戦ったじゃないか」


 俺が強く言ったら、最初は慌てていた彼女も断固とした態度で固辞する。


 徹底抗戦の構えだ。


 確かに結果的に助けることができたが、あれは俺が勝手ににやったことだしなぁ。


「あれは元々私のレベルアップが目的でしたし、ほとんどラストさんにおんぶに抱っこだったじゃないですか。元々私を助けに来てくれたのに、報酬なんてもらえるわけがありません」

「はぁ~、分かったよ。今回に関しては俺とリフィルで分けることにする」


 確かに彼女の言うことも分かるので今回はリフィルと俺で分配することにした。


―ピロンッ


 そんな時、胸元から何やら聞き覚えのない音がなった。


「ん? 何の音だ?」

「あぁ。それはフレンド登録した相手からのメッセージの着信音ですね」


 俺の呟きを聞いてスフォルが答えてくれる。


 今まで誰も俺とフレンド登録している相手はいなかったし、くれる相手もいなかったから忘れていた。俺は胸ポケットからカードを取り出して操作をして、始めてメッセージ機能をタップする。


 ステータス画面同様に俺に目の前に半透明の板が現れ、そこに何やら文字列が表示されている。


 そこには差し出し人がリフィルのメッセージが沢山並んでいた。そういえばダンジョンに潜っていた間メッセージを送ったと言っていた。それがこの複数のメッセージだろう。


 そして、つい今しがたメッセージがまた届いていた。


「言い忘れていたが、私に報酬はいらないからな。お前達で勝手に分けてくれ。ではな……って……そんな訳にいかないだろうに……」

「あ、リフィルさんですか?」


 俺がメッセージを読み上げて途方にくれると、スフォルがその相手を尋ねてくる。


「ああ、何を考えてるのか分からないが、報酬はいらないだと」

「あの方くらいになると、恐らくあのランクのボスでも大した金額にならないのではないでしょうか?」

「はぁ……確かにSSSランクともなるとそうなるか」

「多分ですが……」


 二人してリフィルのスケールのデカさにため息を吐く。


 俺はBランクになって近づいたと思って喜んでいたが、改めてSSSランクの遠さを感じることになった。


 本当に何も渡さなくてもいいのだろうか。いや、今回の報酬の分配とは別にお礼をすればしよう。そして、一刻も早く彼女に追いつこう。それが何よりも彼女に対しての礼になるに違いない。


 俺は改めて気合を入れなおした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る