Evol.077 画策する者達(別視点)
■スフォルの元パーティの戦士ギリク Side
「なに? スフォルが生きていただと?」
俺は舎弟の探索者の一人からの報告に耳を疑った。
なぜならあいつは転移罠でどこかに跳ばされたからだ。あの疫病神の運の悪さは折り紙付きで、絶対に帰り着けないダンジョンの深層に跳ばされたはずだ。
確かにあいつを助けるために一人のおっさんが助けに行ったし、アイツからは底知れない恐怖を感じたが、一〇階から二〇階を狩場としている人間程度では、どれだけ強かったとしても深層のモンスターを相手にできるわけがない。
だからその時は恐怖で思わず色々話してしまったが、今となっては二人とも帰ってくるわけないと思い、ギルドにあることないこと話してしまった。
このままでは俺達の立場も危ぶまれてしまう。
「は、はい、ギリクさん。先ほどダンジョンから帰還を果たしたそうです」
「そんなことありえないわ。一体どうやって帰って来たって言うの?」
「それがなんでも流星が一緒にいたとか……」
「ははーん。そういうことか」
舎弟の答えに魔法使いのククリが訝し気に問うと、舎弟が怯えながら答えを述べた。俺は舎弟の言葉を聞いて疫病神の生還に合点がいく。
「どういうこと?」
「おっさんは助けに行ったが一人では助けられず、たまたま居合わせた流星が疫病神を助けたんだろうぜ」
「あぁ、そういうこと。それなら納得がいくわね」
おっさんは俺達を怯えさせる何らかのスキルを持っていて、実は大して強くなかったに違いない。
ただ、おっさんの方に何か特殊なスキルでもあったのか、何の因果か分からないが、そこに偶然あのSSSランク探索者であるリフィルが居合わせることになったことで辛うじて命が助かったのというのが今回の真相だろう。
全くあんなおっさんにビビッて損した。
普段は運が悪いのになんだかんだ死ななくて、本当にそういうときだけは運がいいんだからな。
本当に忌々しい奴だ。
俺は忌々し気に顔を歪める。
「だろ? つまりあのおっさんは見掛け倒しってことだ。だから流星さえいなければアイツらはどうにでもできるってことだ。もう手段を選んでる場合じゃない」
「そうね。もうアイツの不運に付き合うのはこりごり。あいつのせいでどれだけ苦労させられたことか」
「ホントに。それにいっつも稼ぎはカツカツだし。あいつさえいなければと何度も思ったよ」
俺の言葉にククリと盗賊職のマリナが同調し、あの呪いの塊から受けた被害を思い出してさらに表情が険しくなった。
最初はあまり気にならなかったが、一〇回や二〇回、一〇〇回や二〇〇回と続けばそのストレスは計り知れない。
だから俺達がやることは絶対に間違っていない。
あんな奴はこの世に存在してはいけないんだ。それを邪魔する奴はアイツ同様生きていてはいけない。
存在ごと抹消してやる。
「兎に角流星が居なくなった時に闇に乗じるのが良いだろうな」
「ふふふっ。そうね。もう面倒なことは止めましょう。どうせ誰がやったかなんてわからなくなるんだから」
「ああ。その通りだね。この道具を使えば綺麗さっぱり跡形もなく痕跡を消し去ることができるんだから」
「早く呪いから解放されましょ」
「そうだな。それじゃあ今から襲撃する作戦を考えよう。まず初めに……」
俺達はもう自分たちの手を汚したくない、仮にも幼馴染だった相手をこの手にかけたくないという思いから、ダンジョンの罠に嵌めて殺そうとしたが、その悉くが失敗に終わった。
それに、露骨に罠に嵌めたスフォルが帰ってきたとあっては、ギルドに何を報告されてしまってもおかしくない。
俺達の証言との食い違いで問い詰められることになるだろう。
そうなる前に俺達はあのおっさんと疫病神を襲撃してしまうことにした。
そのための計画を三人で練り始める。
しかし、俺達は気づかなかった。
進化したスフォルの運が反転していたことを、そしておっさんの持つ強大な力を。
俺達は何も知らないまま、幸せをつかむつもりで破滅への道を進んでいた。
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