Evol.075 戦いの後
「折角作ってもらった魔鉄装備が……」
つい先日作ってもらったばかりなのに大半が修復が不可能なほどに壊れてしまった。
俺は剣もそうだが、全身の破壊されつくした装備を見て呆然となる。目の前の金銀財宝があれば問題なく買い替えることができるだろうが、やはり初めて一人前と認められた証を失ったのはショックだ。
「見事だったぞ。流石私に啖呵を切るだけある」
「はははっ。運が良かっただけだ」
そんなしょぼくれた俺の背にリフィルの声を感じ、振り返って苦笑いを浮かべた。
本当に今回はただただ運が良かった。
まさか二度目の進化が起こるなんて誰が想像しただろうか。いや、そんなことを予想できた人間は誰もいなかったはずだ。
あれがなければリフィルにまた助けられていた。
運も実力とはいえ、そうそう何度も起こるような奇跡でもないだろう。
「ラストさん、お疲れ様でした」
「ああ。スフォルもありがとな」
「いえ、結局私は殆ど役に立てませんでしたから。それどころか元々は私の不幸が原因なので……」
リフィルの後からスフォルもやってきて俺に声を掛けてきた。礼をしたが、彼女はまた自分を責めるようなことを言って俯く。
しかし、彼女こそが今回の勝利の功労者だ。
「何を言ってるんだ。君が進化していなければ、俺は今ここに立ってはいないさ」
彼女の付与魔法がなければ全く話にならなかったし、あっさり死んでしまっていたはずだ。
その上、彼女の運がプラスに転じ、"予期せぬ幸運"と"不幸中の幸い"によって俺達が色んな幸運に見舞われた結果、リフィルが間に合い、俺の進化まで生き延びることができたに違いない。
「そうですか? 私本当にラストさんのお役に立てましたか?」
俺は彼女に心から助かったことを伝えたら、彼女は少しだけ嬉しそうな表情になる。
「あぁ。間違いなくな。だから気に病む必要はないぞ。何よりも今は勝てたことを喜ぼうぜ」
「そ、そうですね。あの何百人で挑むような相手と戦って無事だっただけでなく、勝利しているんですもんね」
今はどうせなら辛気臭い雰囲気よりも生き延びた喜びを分かち合いたい。
「そうだぞ? 帰ったらこの財宝で祝勝会だ」
「いいですね」
俺は大げさな仕草でドラゴンが消えたところに現れた金銀財宝の山を指してニッコリと笑えば、彼女も楽しそうに笑みを作った。
「当然私も一緒だろうな?」
そこにリフィルも混ざってくる。
「当たり前だろ?……そういえば、なんでリフィルがここに?」
ただ、リフィルがここにいる理由だけが分からなかった。
「いやなにカードで呼びかけても一向に出ないし、メッセージを送っても返事がこない。それでギルドに聞きに行ったら、何週間も戻らないっていうからな。何かあったんじゃないかとダンジョンの捜索をしていたんだ。ダメ元で転移罠で飛んでみたらここに来たわけだ」
俺の質問に対してリフィルは事の経緯を教えてくれた。
なんとこんなまだDランクの俺を探しに来てくれたらしい。行動を起こしてくれたリフィルには感謝しかない。
それがなければ如何に幸運を持つ俺とスフォルの二人でも生き残ることは難しかっただろう。
「それは色々迷惑をかけたな」
「気にするな。結果として無事だったからな。本当に良かった」
「そ、そうか。ありがとう」
彼女は首を振ってからにっこりと笑う。
その笑みが俺を鷲掴みにしてきたせいで、俺は思ずどもりながら感謝を告げた。
「よし、今は疲れただろう? 戦利品の確認などは後にして休もう」
「そうだな。流石に疲れた」
「ですね」
―ゴゴゴゴゴゴゴッ
俺達の言葉を聞いていたわけではないだろうが、タイミング良いところでまた地形が変化して、俺達は元居た崖に立っていた。
道が元通りになったので俺達は移動を始め、開けた場所で休息を取り、それから三日程かけて地上へと帰還を果たすのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます