Evol.074 勝利
―ザンッ
狼狽えているレイドボスに向かって地面を蹴る。今まで苦労したのはなんだったのかと言う程にあっさりと奴の体に肉薄した。
「はぁっ!!」
俺は飛び上がって奴の体に剣を振り下ろす。白い斬撃が放たれ、奴の体に直撃する。
「グキャアアアアアアアッ!!」
当たった部分を中心に大きく闇の霧が払われ、内部の骨も砕け、奴は初めて俺の攻撃で悲鳴を上げた。
ダメージを受けている証拠だ。
「おっと」
奴は痛みを堪えながらやけ気味に俺に腕を振り下ろす。俺は空中で動けないので躱せないが、その腕を剣で切り払った。
「ギィヤアアアアッ!!」
それだけで腕が骨ごと消し飛ぶ。闇は肩の所を覆い、それ以上のダメージを防いでいる。
「ファイヤーボール!!」
俺は先ほどまで闇に飲まれて全く効果の無かった魔法を唱えた。俺の手の先から飛び出したのは真っ白な炎。元々青かった炎の色が分かっている。
―ドォオオオオオオオンッ
「ギャアアアアアアアアッ」
炎が着弾するとひと際激しく頭を揺り動かして暴れるドラゴン。魔力が上がっただけでファイヤーボールなのは変わりないはずなのに、触れた部分からヤミが油に洗剤を混ざたように消えて骨が露出する。
「さっきとは段違いだな」
俺はファイヤーボールの効果を見て軽く驚いた。
効果はあるだろうとは思っていたものの想っていた以上に反応があったからだ。おそらく炎の色が変わったことに関係しているのだと思う。
俺は何度もファイヤーボールを打って、奴の闇を引き剝がす。
連発している内に完全にヤミが消え、元のドラゴンゾンビに戻ってしまった。
しかし、ここで油断するようなことはしない。
「ウォーターバレット!!」
さらに追撃で複数の水の礫を打ち出した。水の色がキラキラと輝いている。
―ジュウウウウウウウウウッ
水魔法は暴れまわるドラゴンに吸い込まれるように全て浴びせられた。
「グギャアアアアアアアアッ」
治癒魔法を掛けた様に肉が焼けるような音と、水を浴びた部分から煙が上がる。
「カッ!!」
しかし、相手も然るもので、俺が着地する瞬間を狙って黒い火の玉を放ってきた。
「ストーンバレット!!」
俺は巨石を生み出し、盾にして着地し、そのいくつも巨石を放り投げるような仕草でドラゴンゾンビに飛ばした。
巨石はその重さを感じさせない凄まじい速さでボスの頭や首付近に直撃。
―ドォオオオオオオオオンッ
ダメージが入ったかは不明だが、ドラゴンはその場に倒れ伏して地面を大きく揺らした。
「ここで終わらせる!!」
俺はドラゴンに止めを刺すため、なんとなくできる気がして剣に魔法を掛けた。剣に清浄な光が纏わりついて燐光を散らす。
それは治癒魔法の光。
ハイキュアソードとでも言うべきか……いや、カッコ悪いな……。
「無に還れ!!
俺は込められるだけ魔力を込めて、一瞬のうちに考え直した技名を叫んで剣を振り下ろした。
清浄な眩い光を放つ斬撃が地面を走る。
―ズドォオオオオオオオオンッ
攻撃が浴びせられると同時にドラゴンゾンビは真っ白な光に包まれた。ぼんやりとした毛玉のような光がフワリ、フワリと奴の体から空に立ち昇っていき、光の体積を徐々に減らしく。
気づけば全ての光が空の彼方の消え、そこには成人の頭よりも一回りは大きな魔石以外何も残っていなかった。
―ボフンッ
そして直後に失敗した爆発物のようなしょぼい破裂音と共に金銀財宝の山と、魔石よりももう少し大きめの卵、そしてドラゴンの体の各種素材が出現した。
それは完全にボスを討伐した証だった。
「よっしゃああああああああああああっ!!」
俺は天に向かって拳を突き上げて勝どきを上げる。
―パリンッ
しかし、同時に俺の頭上で剣が粉々に砕け散ってしまった。
「あぁああああああああああああああっ!?」
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