Evol.073 起こりえないはずの事象
だから二度目の進化なんてありえないはずだった。それにも関わらずこうして俺は二度目の進化を経験しようとしている。
え? なんで? どうして?
俺の頭の中は混乱で一杯になる。
「ぐがっ」
しかし、進化は俺の戸惑いを待ってはくれない。
再び一度目の進化のように体内をぐちゃぐちゃにかき回されているような痛みが全身を走り、俺は思わずその場に膝をついた。
「大丈夫か!?」
「来るな!! 大丈夫だ!!」
俺の様子を後ろで見ていたリフィルが、心配して駆け寄ってこようとする気配がした。しかし、もう助けてもらう訳にはいかない。
だから振り返らずに手だけで彼女を制する。
そうだ、今はなんで進化したかなんて考えてる場合じゃない。進化するってことは新しい力が手に入るということ。それは俺が今最も欲していたものだ。
新たに湧き出したスケルトンたちが俺に群がってくる。
「うぉおおおおおおおおおっ!!」
幸い痛みは一度目ほどではない。
叫び声をあげて無理やり立ち上がり、剣で薙ぎ払う。
―ズバァアアアアアンッ
ただ剣を振っただけなのに、俺の前にいたスケルトンたちが扇状に割れ、数十メートルの道が出来上がった。
まだ進化途中だというのにこの威力。自分でやったことなのにあまりに現実感がない。ただ、これならいける。
俺はそう確信した。
そして俺は再びドラゴンに向かって走り出す。
「グォオオオオオオオンッ!!」
ドラゴンは脅威を感じたのか、俺に漆黒の炎の球を連発しだした。
―ブンッ
俺は迫る炎の球に剣を軽く振る。これだけで良いことが感覚で分かる。
たったそれだけで黒い炎は消えてしまった。自分に向かってくる炎の球を全て消しながら一歩、また一歩とドラゴンへと迫っていく。
「な!?」
しかし、俺にダメージを与えられないとみるや、俺の後ろにいるリフィルとスフォルを狙い出す。
突然のターゲット変更に驚いて声を出してしまった。
「こっちは任せておけ!!」
しかし、後ろから頼もしい声が聞こえた途端安堵する。
そうだ後ろにいるのは最強の探索者の一人であるリフィルだ。何も心配などする必要はなかった。
俺はそのまま戦場を駆け抜ける。
「グォオオオオオオオンッ!!」
ドラゴンはそれでも俺を止められないと知ると、さらにスケルトンを増やして俺にぶつけてきた。
「はぁあああああああああっ!!」
しかし、徐々に痛みも消え、もう進化が終わりかけている俺の一撃はあっさりとその骨の牢獄を破り、奴への道を開く。
「カッ!!」
ただ、それは時間稼ぎだったようで、俺に向かって漆黒のブレスを放ってきた。
「しゃらくせぇええ!!」
俺は剣を上段に構えて本気で振り下ろす。
剣の先から白い斬撃がまるで間欠泉が手前から奥に向かって噴き出していくようなイメージを描いてブレスを目指して飛んでいく。
―ドンッ
ブレスと飛ぶ斬撃がぶつかり合い、せめぎ合う。
しかし、それも一瞬の事。
ブレスは俺の真っ白の輝く斬撃に真っ二つに切り裂かれてしまった。
「ギュオッ!?」
ドラゴンは予想外だったらしく、おかしな声を上げて体を硬直させた。
時を同じくして俺の体の発光が治まる。それは進化完了の合図。
完了と同時に俺の体から中ボスのレベル上限など足許にも及ばぬ力の奔流が全身からあふれ出した。
「へっ。それで弾切れか? それじゃあこっちから行くぞ!!」
散々形態変化をしてこっちを苦しめてくれんたんだ。
覚悟しろよ!!
俺は剣を構えてニヤリと笑った。
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