Evol.047 性能の違いが分からない!!

 装備を変えて早速ダンジョンへと向かった俺は、依頼のあった二一階層より下の階層へと向かいつつ、武具の性能を確かめることにした。


「ゴブゴブッ」


 すでに懐かしさを感じさせるゴブリンが目の前に現れたので、これ幸いとばかりに切り捨てた。


「ゴブゥッ」


 ゴブリンは一瞬で燐光となって消えてしまった。


 まるで液体を切っているみたいに全く手ごたえがない。

 剣の切れ味がよく分からなかった。


「ホブゥッ」


 次に現れたホブゴブリンも切り捨てる。手ごたえは全く変わらず、何の抵抗もなく真っ二つになって消えていった。


「ホブホブッ」

「……」


 別のホブゴブリンと遭遇した際に、防具の性能を試してみようと思って攻撃を受けてみてが、ダメージが俺に全くと言っていい程に届かない。


 防具がないところで受けたにもかかわらず、俺の体にダメージは一切なかった。


「キシャァアアッ」

「ウォオオオンッ」

「ゴブゥウウウッ」

「ブクブクブクッ」


 それからもジャイアントスパイダー、フォレストウルフ、ゴブリンジェネラル、サワークラブなどの五階から一五階層までに出てくるモンスターの攻撃を何度か受けてみたが、どのモンスターも俺を一歩さえもそこから動かすことができなかった。


 その後で新しい魔鉄剣で切ってみたが、どのモンスターも防御してようが、防具の上から切りかかろうが、利き腕じゃない方で振り下ろそうが、何の抵抗もなく切りさかれてしまった。


「おいおい、これじゃあ前との違いが分からない……」


 当然手に馴染むという意味では武器が良くなっているのは分かるが、盾で防いでみても防具で受けてみても俺の体に衝撃すら来ないので、武器も防具も性能の判断ができなかった。


「おっ。あれってモンスター部屋みたいな感じだな」


 絶望しかけた時、沢エリアの一三階層で少し遠回りしながら走っていたら、たまたまモンスターが溜まっている場所を見つけた。


 少し期待しながら俺は思い切ってそこに突っ込んでいく。


『ブクブクブクブクッ』


 集まっていたサワークラブが俺が突然現れたことに一瞬戸惑うが、一斉に俺に襲い掛かってきた。


 俺は無防備にもその攻撃を防御もすることなく、全てそのまま受け入れた。


―キンキンキンキンッ


 俺の体にサワークラブのハサミがぶつかると、まるで金属同士がぶつかり合うような音が聞こえるだけで、全く俺の体が傷つかない。頭だろうが、首だろうが、手だろうが、少し怖かったが目にぶつかっても俺の体がダメージを受けることはなかった。


―ドドドドドドドドドッ


『うわぁああああああああああっ』


 さらには一四階層では大行進が起こった。


 そこではサワークラブ以外にも色んなモンスターが出現したが、そのどのモンスターも俺の体力を超える攻撃ができるモンスターはおらず、俺の攻撃を一撃以上耐えるモンスターもいなかった。


「魔鉄装備……一人前の証としてめっちゃ嬉しかったけど、序盤では必要すらなかったとは……」


 ここまでの結果、俺は改めて自分の規格外さを思い知ることになった。


「いや、まだ分からない。二〇階層のボス、ビッグクラブなら俺にダメージを与えられるかもしれないし、一発で斬ることができないかもしれない」


 いや、まだだ……まだ終わらんよ……。


 しかし、俺にはまだ希望があった。二〇階層のボスだ。


 あのボスならこの辺りの敵よりもずっと攻撃力も防御力も強い。だからそのボスの攻撃を受けてみれば、きっと装備が必要だったことが分かるはずだ。


 だから急いで俺は沢エリアを駆け抜ける。


「なんだあれは!?」

「アイアンタートルの甲羅が浮かんでいるぞ!!」

「何が起こっているんだ!?」


 俺は通り過ぎる際に何やら目を見開いている探索者達を尻目に、淡い期待を抱きながら沢エリアを通過していった。


 その結果、それほど時間がかかることなく、次のエリアである浜辺エリアに辿り着いた。

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