Evol.043 無一文!!(ほぼ)
追いかけっこの後でベッドに入った俺は目を覚ます。安眠が邪魔されることはなく、目覚まし時計を見たら昼すぎになっていた。
暗がりだったため、かけっこをした衛兵に顔を見られていなかったからか、それともステラさんが残った衛兵に対して後からきちんと説明してくれたからか分からないが、俺を捕まえに来ることはなかったみたいだ。
俺は少し安堵する。
「さてと、アイテムバッグがあれば依頼は受けるって話だったしな」
半日過ぎてしまっているが、そういう話をしていたので少なくともアイアンタートルの依頼くらいは受けてあげたかった。
「あっと……その前に魔道具屋に寄らないとな」
しかし、ふと思い出して魔道具屋に寄って治癒魔導書の最下級と下級を購入し、中級までの治癒魔導書を使用した。
――――――――――――――――――――
レベル 38/99(+3)
能力値
力 :1070(+30)
体力 :1070(+30)
魔力 :1080(+30)
敏捷 :1070(+30)
器用 :1070(+30)
運 :1070(+30)
スキル
威圧(下)、統率(下)、配下スキル軽減化(下)、
教育(下)、全魔法適性、火属性魔法(最下級)、
水属性魔法(最下級)、風属性魔法(最下級)、
土属性魔法(最下級)、治癒魔法(中級)、
獲得経験値増加(二倍)、成長速度向上(二倍)、
成長限界突破、ステータス上昇値最大値固定
――――――――――――――――――――
その結果、問題なく治癒魔法は中級まで覚えることが出来た。
中級まで覚えられても魔力が少なければ使えない可能性があるが、すでに最上級職を極めてたどり着けるかどうかの境地まで来ているので心配していない。
ただ、別の問題が発生した。
「金がない……」
そう、それは俺の持ち金がほとんど空っぽになってしまったということだ。
昨日は確かに金貨二○○○○枚以上もつ大金持ちだったはずなのに、翌日には素寒貧になってしまった。
このままでは今日の宿すら危うい。
「他の依頼も受けた方がいいかもしれない」
確かにアイアンタートルの依頼を受ければ暫く暮らす分には申し分ない。ただ、これから中層、下層とダンジョンを下っていくためには様々な物資が必要になる。
しかし、先立つものがなければそれらを揃えることが出来ない。
それでは折角アイテムバッグを買った意味が薄くなってしまう。勿論そんなアイテムがなくても十分に役立つアイテムなのだが。
「ステラさんに相談しよう」
俺はすぐにギルドに向かった。
「こんにちは。ラストさん」
「ああ。こんにちは。ステラさん」
この時間のギルドは空いていてステラさんの前にも誰も並んでおらず、閑散としていた。
「昨日は大丈夫でしたか?」
「まぁな。朝方まで追いかけっこする羽目にはなったが」
ステラさんの質問に苦笑しながら肩を竦めた。
「それは申し訳ありませんでした」
「いや、別に気にしてはないさ。それで相談があるんだがいいか?」
頭を下げるステラさんを制しつつ本題に入る。
なんとなく悪くない気分だったし、そんなことよりも大事な事がある。
「はい勿論です。何でしょうか?」
「ああ。何か稼げる依頼はないかと思ってな」
「アイアンタートルではダメなんですか?」
俺の相談に対してステラさんに不思議そうに首を傾ける。
「いや、これからもっと深く潜る上でバッグの中に入れておきたいアイテムはいくらでもあるだろう?」
「それはそうですね」
野営に必要な道具、食料、飲み水、トイレの魔道具などダンジョン探索に持っていきたい道具はいくらでもある。容量もかなり大きそうだし、そういうアイテムは全部入れておきたい。
「だから、もっと稼ぎのいい依頼はないかと思ってな」
「なるほど……」
俺の返事を聞いたステラさんが少し考え込む。
「お勧めしたい依頼はあるにはあるんですが、ランクが足りないんですよね。実力的には何も問題ないと思うんですけど」
「おっと……そうか……」
彼女が顔を挙げて告げたのは辛い現実だった。
まさか俺の低ランクのせいで依頼が受けられないとは……。
それは困ったな。
俺もどうしたものかと思考の海に迷い込む。
「ということで、こんなこともあろうかといい依頼を見繕って押さえておきました。こんなことを言うのもあれですが、アイアンタートルの依頼でランクアップ間近なので」
しかし、ステラさんは悩みの答えをすでに用意してくれていた。
「おお、マジか!! 流石有能な受付嬢だな」
「ふふんっ。もっと褒めてくれてもいいんですよ」
まさかそこまで考えてくれているとは思わず、俺が手放しでほめたら、彼女はえへんと胸を張ってドヤ顔をした。
そうだな、ステラさんには最近世話になってるからな。
ここで礼の一つでもしておいてもいいだろう。
「それじゃあ、稼いだら飯でも奢るよ」
「え? いいんですか? 約束ですからね、期待してますよ?」
「分かったよ」
そう考えて提案したら彼女は嬉しそうに受け入れてくれたので、俺もニコリと笑って答えた。
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