Evol.037 オークションってワクワクするよね
「あ、あの……ラストさん、ちょっとお願いがあるのですが、いいでしょうか」
「どうしたんですか?」
衣装屋から出たステラさんがおずおずと願い出る。一体何事かと思いながら俺は聞き返した。
「えっと腕を組んでもいいですか? 一応同伴らしくしないといけないので」
「わ、分かりました。お願いします」
モジモジしながら言う彼女は可愛らしくてこちらもついついドギマギしてしまう。しかし、彼女言っていることも一理あるので、慌てながらもお願いした。
「は、はい」
彼女も恐る恐る俺の左腕にそっと手を回す。二の腕に感じるほっそりとした柔らかさが心音を早くした。
これは思っている以上に心臓に良くないな……。
「い、いきましょうか!!」
「は、はい、そうですね!!」
お互いオドオドしながらもどうにかオークション会場へと向かった。
「招待状はお持ちですか?」
「はい」
周りを頑丈そうな塀で囲まれた宮殿のような建物に辿り着く。どうやらここがオークション会場らしい。
その入り口に執事のような人物が建っていて、俺はステラさんから受け取っていた招待状を手渡す。
「こ、これは!?……失礼しました。こちらを胸元にお付けください」
「分かりました」
何やら招待状の中身を確認した途端、目の色が変わった執事。数瞬した後、襟元を正して俺達にバッジのようなものを手渡してきた。
気にしても仕方がないのでバッジを受け取ってステラさんにも一つ渡しつつ、自分の胸元に取り付けた。
「中にいる者にこちらの招待状をお見せください。席までご案内いたします」
「分かりました」
先ほどから了承するだけの人形になっている。
「開門!!」
執事の声で頑丈な物質で作られた格子の門が開き、俺達は中に通された。
宮殿の入り口までやってくるとまた別の人物によって屋内に招き入れられ、待ち構えていた侍女に招待状を渡したら、会場に連れていかれ、何やら劇場の観客席のようになっている場所に案内された。
席は少しゆったり目に作られていて、肘置きにある程度物を置くことが出来るスペースが用意されていた。
「始まるまで暫くお待ちください。お飲み物や軽食はご入用ですか?」
「そうですね、アルコールではないものと軽くつまめるものを」
「畏まりました」
俺が当りをキョロキョロと見回している間に、ステラさんが侍女の申し出に対して返事をしてくれた。
どうやらこの肘置きが広くなり、隣り合った席と仕切りがあるのはここに飲み物や軽食を置いて楽しむためらしい。
「ラストさん、あまりキョロキョロするとなめられますよ」
「あ、すまん。こういう場所と縁遠かったから珍しくてついな」
ステラさんから注意されたので俺は苦笑いをして頭を掻く。
「いえ、落ち着いてもらえれば大丈夫です」
「オークションなんて初めてだから楽しみだな」
俺はゆったりとした椅子に深々と腰かけて商品が紹介されるであろう舞台の方をぼんやりと見ながらワクワクしている自分に気付く。
「ふふふっ。そうですね、高ランク探索者でもないと中々参加できませんから。ラストさんは本当に運がいいと思いますよ」
「ああ、本当にな」
俺が楽しそうなのを見てクスリと笑うステラさん。
そんな無邪気な彼女の笑顔が見れただけでも確かに俺は運がいい。
「お集まりの皆様、これよりオークションを開催させていただきます」
それから三〇分ほど経つと、舞台上に一人の燕尾服を着た初老の紳士が上がり、俺達にオークションの開催を宣言した。
どんなアイテムが出されるのか楽しみだな。
俺は商品が提示されるのを今か今かと待ちわびていた。
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