Evol.031 レアモンスターと下層への切符

 装備を頼んだ俺は今日も何か依頼がないかを探索者ギルドに確認しに来た。今日はなんだかギルド内が浮ついているような気がする。


「うーん、お、今日もアイアンタートルの依頼があるな。武具を買ってしまったから少しでも稼いでおこう」


 今日もアイアンタートルの依頼が残っていたのでそれを取って受付に向かう。


「おいおい聞いたか。沢エリアにガマグッチが現れたらしいぜ?」

「マジか。あのレアモンスターがか?」

「ああ。Eランク探索者やDランク探索者のパーティが見かけたと言っている」

「おお、俺達も狙ってみるか?」

「止めとけ止めとけ。そう言って見つけた奴はいねぇ」

「そんなにか」

「ああ。あれは割に合わねぇよ。それならいつも通り狩りをしていた方が良い」

「はぁ~、流石にそう上手くはいかないか」

「あったり前だろ」


 何を浮足立っているかと思えば、どうやら沢エリアにガマグッチが姿を現したらしい。


 ガマグッチとは沢エリアでたまに見かけるカエルのようなモンスターで、倒すと必ず金貨を落とすことで有名だ。


 しかし、中々見つからないことと動きがとんでもなく素早いこと、そして倒した際の金貨の枚数がランダムなので、必死に探して倒した挙句、結果的に金貨一枚しか手に入らなかった、ということもあり得るため、一攫千金を夢見る探索者以外はあまり手を出そうとはしなかった。


 つまり、一攫千金を夢見る探索者はこぞって探そうとするわけだが。一匹倒すだけで金貨数百枚が手に入ることもあるので、その気持ちも分からなくはない。


「あ、ラストさん、こんにちは」

「ああ。こんにちは。今日もこの依頼を頼む」

「もうすっかりこの依頼の専属探索者ですね」


 俺はそんな彼らを尻目に、依頼書を持っていつものようにステラさんの受付に並んで依頼書を渡したら、彼女は嬉しそうにそんなことを言う。


「いや、そろそろもう少し先に行くつもりだからもうすぐ卒業だな」

「え、そうなんですね……依頼者の方も大変喜んでいたんですが……残念です」


 しかし、もう何回かで最後だと伝えると、彼女は表情を曇らせた。


 そんな顔をされると、まだ受けてやりたいという思いが芽生えてくるが、俺が目指すのはリフィルの隣に立つことだ。


 ここで立ち止まっているわけにもいかない。


「割りの良い仕事だから続けたかったんだがな。新しい武具も手に入りそうだし、さらに先を目指したいんだ」

「そうですね。ラストさんなら全然先に行けると思うので、仕方ないと思います。頑張ってください」


 俺の説明を聞いた彼女は、少し寂しそうにしながらも応援してくれた。


「そうだな。もしアイテムバッグなんかがあればついでに狩ってくることも考えられる。ただ、今は高すぎて手が出ないけどな」


 アイテムバッグは見た目は只のバッグだが、その見た目とは裏腹に数倍から数百倍の量の荷物を入れることが出来るバッグの事だ。


 それがあれば、あれだけ大きな甲羅も中に入れて持って帰って来れるので、手に入るのなら帰りについでに狩ってくるのはわけはない。


「あぁ~、そうですね。アイテムバッグは小さくても金貨一〇○○枚はしますから。大きなものになると五〇○○枚はしますし。奥に行くには必携のアイテムですが、中々手に入れるのが難しいですよね」

「そうだな。奥に行けば行くほど野営や武具の補修などで必要な荷物が多くなる。荷物運びを雇っても深く潜れば結局戦闘能力が必要になるから、普通の荷物運びはある程度までしか連れていけない。戦闘能力のある荷物運びは少ないし、どうしてもアイテムバッグが必要になってくるんだよな」

「ですねぇ」


 ステラさんも俺の意見に同意しつつ、お互いにアイテムバッグの入手難度とその必要性について語り合う。


 しかし、こうしてばかりもいられない。


「まぁもしアイテムバッグが手に入ることがあったら、また依頼を受けるとでも言っといてくれ」

「分かりました」


 俺は話もそこそこにダンジョンへと向かった。

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