Evol.026 アイアンタートルスレイヤー
「それでは報酬をお渡ししますね」
「ああ、頼む」
俺は指示された場所に運んできた甲羅を納品して依頼の達成手続きを行う。
「こちらが今回の依頼の報酬の金貨一〇枚になります。それと魔石はDランクなので、銀貨三枚です」
「おお!! 改めてみると凄いな」
一度の依頼で金貨一〇枚。非常に美味しい依頼だった。
他のパーティには難しい仕事でも今の俺にとって一日で終わらせられる仕事。その上、魔法で倒せるので武器も駄目にならない。
こんなに簡単に稼げる仕事があっていいのだろうか。
「そうですね。本来であれば数日かけてやる依頼であることと、数人でやることを考えるとあまり割のいい仕事とは言えませんが、ラストさんは一日かつ一人でこなせるのでかなり割りのいいお仕事になりますね」
「それもそうか。一人は一人でメリットがあるな」
ステラさんが俺が稼げる理由を他にも上げてくれる。
特に一人、というのは報酬面で分配しなくてもいいから、依頼を達成できさえすればかなり稼げる。それは非常に大きな利点だった。
「それはそうですけど、一人にはデメリットが多いのでお仲間がいるといいんですけどねぇ」
「中々信用できる相手ってのがいなくてな」
しかし、ステラさんは心配そうな表情でぼやく。
勿論ステラさんが言っていることも分かる。
誰かに背中を任せられるって言うのは凄く安心できるものだ。それにリフィルが待っている最奥まで最速でたどり着くには仲間がいた方がいい。
ただ、言った通り中々信頼のおける相手っていうのを見つけるのが難しい。俺は元々雑魚という存在だったので、自分に近づいてくる人間には疑り深いところがある。
今の所この街で信頼できるのは、リフィル、ステラさん、そして馴染みの店の店主。この程度だ。この人たちは俺がここに来た頃からよくしてくれている人だから信じられる。
でも、新しい仲間となると、過去の積み重ねや、これまでどんな生き方をしてきたのかがはっきりと見えないのでどうしても疑ってしまう。
「分からなくもありませんが」
「もうしばらくは一人でやってみるさ」
とはいえ、
「そうですね。焦らなくてもラストさんはどんどん強くなられると思うので、実力よりも性格や人柄が良い人をしっかり見つける方が良いと思いますよ」
「ああ。わかったよ。ありがとな」
ステラさんもそんな俺に笑いかけてくれた。俺は報酬をいつも通りその多くを口座に預け、端数の銀貨を受け取ってギルドを後にした。
この前の喧嘩騒ぎや、今回のアイアンタートルを一人で狩ってきたという話のおかげか、誰にも絡まれることなく宿屋に帰り着き、俺はゆっくりと体を休めた。
それから一〇日間、俺はアイアンタートルを狩り続けた。なぜならその依頼が次の日にも出されていたからだ。
そして、何より一日で終わる依頼の報酬としては破格だった。一日働けば、金貨一〇枚。
ゴブリンなんて一日五匹狩っても銀貨一枚にしかならない。銀貨一〇〇枚で金貨一枚。つまり、五〇〇匹倒してようやく金貨一枚だ。
ホブゴブリンのような一つ上のランクで二匹で銀貨一枚。二〇〇匹狩って金貨一枚。それがアイアンタートルなら一匹倒せば金貨一〇枚と銀貨三枚。他にやる探索者もいないからライバルもいない。とても素晴らしい依頼だった。
そんな俺はいつしかアイアンタートルスレイヤーと呼ばれるようになっていた。
「レベルもかなり上がってるはずだし、どうなっているかな」
俺は暫く金を稼ぐのに夢中になって忘れていたステータス画面を開く。
――――――――――――――――――――
レベル 35/99
能力値
力 :1040(+200)
体力 :1040(+200)
魔力 :1050(+200)
敏捷 :1040(+200)
器用 :1040(+200)
運 :1040(+200)
――――――――――――――――――――
能力値とレベル以外に特に変化はないが、進化してたった半月程度でレベル三五。それに全ステータス一〇〇〇超え。これはとんでもない数字だ。
情報が少ないので定かな事は言えないが、最初に授かる
「そろそろ次に向けて装備を整えるか」
お金も貯まってきたし、これならそろそろ次のステップに進んでも良い気がした。
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