Evol.024 アイアンタートルの討伐

 やってきました一三階層。


 エリア自体は一一階層と一二階層と変わらず、浅く幅広い川がメインでその両脇には切り立った断崖が聳え立っている。


 一二階層でも基本的にサワークラブが多く生息していて、やつらを刈るために探索者達が複数とどまっていた。一階から一〇階までと比べると人が多いので、この辺りは稼ぎがいいのかもしれない。


 彼らの邪魔をするのもなんだし、依頼を早々にクリアするため、一三階層までサワークラブを一匹も倒すことなく通り抜けた。


「アイアンタートルはっと……」


 俺は付近を見回してお目当てのモンスターを探す。しかし、近くには居なさそうだった。


 彼らが嘘を言っていたとも思えないのでもう少し奥にいるのかもしれない。俺はアイアンタートルを探して奥地を目指した。


「シャアアアアアアアッ」


 その途中で体長一.五メートル程はあるトカゲ型モンスターと出会う。


 こいつは確かビッグリザード。サワークラブと同様に十一から十五階層の沢エリアに生息している肉食獣だ。


「はっ」


―スパッ


「グペッ」


 ビッグリザードは真っ二つに切り裂かれた。サワークラブと比べてみようと思ったのだが、その戦闘能力は高くないようだ。


 そしてそのまま姿が消えるかと思えば、ビッグリザードの体は突如として現れた別の気配に咥えられていた。モンスターが消える前に、真っ二つになった体をバリバリと咀嚼し始める。


 俺は気配を感じた瞬間後ろに跳んだので無事だった。


「こいつがアイアンタートルか……」


 突如として現れたのは、百七十五センチはある俺の身長の胸の当りまで盛り上がった岩のような甲羅を持つ巨大な亀だった。岩みたいにジッとしていたため、すぐには気づけなかったらしい。


 俺はすぐに切りかかる。


―キンッ


 しかし、カメは首をひっこめて甲羅に籠り、俺の筋力をもってしてもその硬い甲羅に阻まれてしまって切ることが出来なかった。


「ちっ。かったいな」


 思った以上の甲羅の硬さに俺は剣での討伐を諦めて魔法で攻撃してみることにした。


「ここは一番切れそうなウィンドカッターで行くか」


 幸い動きが鈍そうだし、すぐ近くにモンスターも居なそうなので、まだ使っていない魔法を使用する。


「ウィンドカッター!!」


 手を突き出して魔法名を唱えれば、手の先から淡い緑色の魔力がブーメラン型の刃をいくつも形成し、その刃がアイアンタートルに向けて飛んでいった。


―ズババババッ


 風属性の刃がアイアンタートルに殺到し、その硬い甲羅をあっさりと切り裂いてばらばらにしてしまう。


「え……」


 俺はウィンドカッターの切れ味に呆然となった。まさか自分の剣で着るよりも攻撃力が高いとは思わなかったのだ。


 すぐにバラバラになったアイアンタートルは魔石を残して消えた。


「本来なら甲羅を残すまで倒すのも大変ってことか」


 アイアンタートルの甲羅を出すまで倒す必要があるため、一度や二度の戦闘では済まないので、適性レベルの探索者や魔法適正の無い探索者達では武器がダメになる事を理解する。


 その点、圧倒的な能力値と魔法適性を持つ俺には関係なかったが。


 俺はその後、アイアンタートルの甲羅が出るまでウィンドカッターで狩り続けた。幸いあまりいい狩場ではないので、他の探索者が居なくて割と簡単に甲羅が出た。


「でっか」


 ただし、その甲羅は助けた青年が言っていた通り、一メートル五十センチくらいの高さと奥行きが二メートルくらいあった。


 確かにこんなものを運ぶのはパーティ単位でも面倒だ。それが一人となれば尚更だ。


「おっ。案外軽いな」


 しかし、重いと聞いていたが、片手で楽に持ち上がった。だから俺は左手を真っすぐ上に挙げた状態で甲羅を持ち、お目当てのアイテムを手に入れたのでそのまま帰路についた。

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