Evol.023 手助けと情報

 沢の中、ソロで岩の上をぴょんぴょんと飛び跳ねながら先へと進んでいく。サワークラブは見かけるが、アイアンタートルらしい亀形のモンスターは今のところ見つからない。


「くそぅ!! なんで一〇匹も!?」

「かってぇ!!」

「皆大丈夫!?」


 途中でサワークラブに囲まれている若い探索者グループを見つけた。


「大丈夫か!! 助けはいるか!!」


 俺は大きな声でそのパーティに声を掛ける。


 こういう時、勝手に助けると後でもめ事になるケースが多々ある。だから一見ピンチで助けが必要な状況だとしても、基本的に一声かけて助太刀をした方がいいのかどうか確認をとるのが、探索者同士の常識となっている。


「すまない!! 助けてくれ!!」

「分かった!!」


 きちんと救援を要請されたことで、俺は一瞬にしてカニとの距離を詰め、剣で切り裂いていく。


「す、すごい……」


 パーティの中の誰かがポツリと呟いた。俺は気にすることなく二〇秒も掛からずにカニを全て切り殺した。


「大丈夫だったか?」


 俺は剣を鞘に納め、彼らに近づきながら無事を確認する。


「え、ええ、あ、はい。大丈夫です!!」

「助けていただいてありがとうございました」

「本当に危ないところでした。サワークラブは何度も倒していたから油断してました」


 彼らはおどおどしながら俺に頭を下げた。


 話を聞くと、どうやら最近ここを狩場にして活動している若手のパーティだったらしい。サワークラブにも特に苦戦することはなかったため、少し奥地へと進んだら、たまたまサワークラブが溜まっている場所に遭遇し、囲まれてしまったとのこと。


「なるほどな。無事でよかった」

「はい、あなたのおかげです。さぞ高ランクの探索者なのでしょうね?」


 俺は話を聞いて納得した後で、一人の十代半ば程度の青年が俺をキラキラした目で見てくる。


「いや、俺は最近Eランクになったばかりだぞ」

「え!? それなのにあんなに強いんですか!?」


 俺の答えを聞いてその青年は驚く。


「まぁな。それよりもちょっと聞きたいんだが、ちょっといいか?」


 これ以上この話題を続けると進化前の話とかまで聞かれそうなので話を変える。


「え? はい、なんでしょう? サワークラブの魔石の取り分とかですかね? それなら俺たちはいらないので全部あなたにお渡ししますが」


 先んじてトラブルになる前に取り分の話をしてきた青年だが、俺が聞きたいのは別の事。


「いや、サワークラブの魔石はいらない。その代りと言ってはなんだが、アイアンタートルが生息している場所を知らないか?」

「げっ!? もしかしてあの依頼受けたんですか?」


 俺が聞きたかったのはアイアンタートルの居場所なのだが、その話をした途端、ステラさんと同じように残念なものでも見るような視線を俺に向けてきた。


 まぁ、分かったうえで受けているから問題ない。


「そうだ」

「アイアンタートルは止めた方がいいっすよ。硬い、重い、デカいの三拍子が揃ってて倒すのに武器がダメになる、甲羅がドロップしても滅茶苦茶重くて持ち運ぶのが大変、そして甲羅はデカいので敵に襲われると対処が難しいっていう面倒な奴なんですよ」

「マジか……そこまでは考えてなかったな」


 話を聞くとステラさんの話以上に面倒な奴みたいで、少し呆然となる。


「だからキャンセルしたほうが良いと思いますよ」

「いや、せっかくここまで来たし、依頼があるってことは誰かが欲しがっているってことだろ? それなら手に入れてやりたい」


 キャンセルを勧められたが、楽しみに待っている人をがっかりさせたくないのでこのまま進めることにした。


「旦那はお人好しですね」

「旦那は止めろ。俺にはラストって言う名前があるんだ」


 なぜか突然旦那呼びをしてくる青年に対して、俺は改めて名乗る。


「分かりました。ラストさんですね。自分はエピルと言います。こっちがソーニャでそっちがタイゾーです。そうですね、アイアンタートルですが、一三階層に多く生息しているそうです。自分たちもまだ行ったことないので、どこにいるかまでは分かりませんが」


 彼らは名乗り、軽く頭を下げた後でアイアンタートルに関する情報を教えてくれた。


「そうか。情報助かった。サワークラブの魔石は自由にしてくれ。それじゃあな」

「地上であったら酒でも飲みましょう!! 奢りますよ!!」

「ああ」


 用を済ませた俺は彼らと別れて一三階層を目指した。

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