Evol.021 初依頼

 約束を交わした後、もうしばらくその店で二人で飲んだ後でお開きになり、俺はウキウキとした気分でベッドに入ってぐっすりと眠った。


 次の日、いつものようにギルドを訪れた。違うのはクエストボードを見ていること。ただ、朝方の依頼の争奪戦はもう終わってしまったらしく、残っている依頼はあまり多くない。


「少し冒険してみるか」


 俺は今五階層から先に進んだことがない。だからそれよりも先でこなす依頼を受けてみることにする。


「アイアンタートルの甲羅の収集をする依頼にしよう」


 残っている中でも報酬の良さそうな依頼を選び、ステラさんの居る受付に向かった。


「こんにちは、ラストさん」

「こんにちは。今日はこの依頼を受けるつもりだ」

「えっ……アイアンタートルですか?」


 ステラさんは依頼書を見るなり少し表情を曇らせる。


「あ、ああ……どうかしたのか?」

「いえ……Cランク探索者を倒せるラストさんなら達成は可能だと思います。でも、この依頼なんですけど、報酬は良いのになんで残っていると思いますか?」


 彼女の表情が気になって狼狽えながら尋ねると、逆に問い返された。


 んー、アイアンタートルの依頼が残っている理由か。

 亀のモンスターだけに防御力が高いから倒すのが大変かもしれない。


「んー、なかなか倒せないとかか?」

「それもありますけど、この亀のモンスター物凄く防御力が高いので、探索者の武器をダメにしてしまうことが多いんですよ」


 答えを聞いてステラさんが答えを述べた。


「なるほどな。その分経費がかさんで赤字になるわけか」


 俺はその答えに納得して頷いた。


 確かにこのモンスターを相手にするようなランクの探索者だと何度も攻撃することで武器がぼろぼろになりそうだ。


「そうなんです。だからあまりやりたがる人がいないんですよね」

「んー、まぁ物は試しだ。一回やってみようと思う」


 納得はしたが、今の俺の攻撃力の確認のため依頼を受けてみることにした。


「分かりました。大丈夫だとは思いますが、初めての一〇階層以降の探索になるので気を付けて行ってきてくださいね」

「分かってる」


 ステラさんは心配そうな表情を浮かべているので、俺は安心させるように頷き、依頼を受けてダンジョンへと向かった。


「はぁ!!」

「やぁ!!」

「せいやぁ!!」


 ダンジョンに足を踏み入れた俺はいつも通り五階層まではあっさりと到達した。


「さてここからは未知の階層だな」


 簡単に六階層への階段を見つけた俺は躊躇うことなく降りていく。


「おおっ」


 その先は少しダンジョンの様子が変わっていた。そこは外の森をさらに鬱蒼とさせたような木々の生い茂るフィールドだった。


「五階ごとに世界が変わるって言われているのは知っていたけど、これほど違うとはな……」


 俺はこのダンジョン都市にやってきた頃のようにきょろきょろと付近を見回してしまう。


「キシャァアアアアアアッ」

「早速お出ましか」


 六階層からは虫型のモンスターが出現するようになる。こんかい出てきたは大きな蜘蛛。ジャイアントスパイダーと呼ばれる大型の蜘蛛のモンスターだ。


―ズパァンッ


 俺は一瞬で近づいて切りつけた。


「ギギッ……」


 小さく鳴いたジャイアントスパイダーはそのまま真っ二つになって左右に割れるように倒れる。


「まだまだ余裕だな」


 コロリと転がった魔石を見つめながら、敵がアッサリ倒せてしまえたので先へと進んでいく。


 その後も特に苦戦することもなく一〇階層へと辿りついた。


「初めての階層ボスか、中ボスの俺と勝負だな」


 一〇階層にはその階層のボスがいる。初めてのボス戦が迫っていた。


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