Evol.017 ランクアップ!!
「それはそうとラストさん。お話があります」
「お、おう」
すっかり忘れていたが、俺はステラさんと話している途中だった。彼女は佇まいを正して真剣な眼差しで宣告するので、俺も何が言われるか分からず緊張が走る。
「えっとですね……」
それだけ言ったきり中々その先を話し出さない彼女。
―ゴクリッ
唐突な不安と緊張から俺の喉が無意識に鳴った。
「……ラストさんはこの度Eランクにランクアップしました!!」
どれくらい待ったか分からないが、ステラさんがニッコリと笑って言いつつ、軽くパチパチと手を叩いて拍手をする。
「……え?」
彼女の言葉の意味が中々理解できず、一〇秒以上沈黙した後でようやく彼女が言ったことを認識して、思わず声を漏らしてしまった。
「だから、ラストさんはEランクに昇格したんですよ」
「マジか……」
再度言われたことで俺はようやく状況を理解して俺の魂が体から抜けかける。
それはそうだろう。俺は二五年間最低ランクのFランク探索者として過ごしてきた。その俺がEランクになるとなれば気持ちが中々ついてこない。
「史上最遅記録達成ですよ!!」
「全然嬉しくねぇよ!! バカにしてるだけじゃねぇか!!」
心ここに在らずの俺にウキウキとした表情でサムズアップするステラさん。俺はそんな彼女に自然にツッコミを入れていた。
「今のはまぁ冗談ですが、ここからはどんどん昇格していくと思うので気にされなくてもいいと思います」
「そうだな。そのためにももっとダンジョンに潜らないとな」
ステラさんは俺の未来を確信しているように俺を励ます。出来ることならその期待に応えたいと思った。
「それと、二五年間ゴブリンを狩っていたせいでお忘れかもしれませんが、Dランク以上に昇格するためにはあちらのクエストボードに貼られた自身のランクに見合った依頼をある程度達成する必要がありますからね」
「そういえば、そんなルールもあったか……すっかり忘れてたな」
その矢先、彼女の言う通り昇格に縁がなさ過ぎてすっかり失念してしまっていたことを思い出す。
「やっぱりそうでしたか。ちゃんと話しておいて良かったですよ、知らないままだったらまた史上最遅記録を達成するところでしたからね!!」
「それはもういいっての!!」
再び俺を揶揄う彼女に少し唖然としながらも、今ではそんなことを言われても全然気にならない自分がいた。
喉元過ぎればってやつだな。随分と長い喉元だったけど……。
「ふふふっ。それじゃあランクアップ手続きをしますのでカードを提出していただけますか?」
「了解」
おかしそうに笑う彼女の指示に従って俺は懐からギルドカードを差し出した。
「はい、ありがとうございます。少々お待ちください」
カードを受け取った彼女はカードを機械に挿し込んで何やら作業を進める。
「それでは新しいカードをお返ししますね」
一分ほど待つと、ステラさんは俺にカードを手渡す。
「これは……」
受け取った俺は思わず目を見開く。
なぜならカードの材質が変わっていたからだ。勿論知識として知ってはいたが、俺はずっと鉄製のギルドカードを使用していたので、手触りや重さの違いに違和感が半端じゃなかった。
「Eランクになったのでブロンズ製のカードになりますね」
「そうだったな」
「はい。これでラストさんはEランク探索者ですよ。これからも頑張ってくださいね」
「ああ、任せておけ」
花が咲き誇るような笑顔を見せるステラさんに俺は不敵に笑った。
ここからが俺のターンだ。
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