Evol.013 不幸を呼ぶ少女
「実は私……トラブルメイカーという
「それはあまり聞いたことのない役割だが、名前を聞くだけでなんとなく想像できるな」
言いづらそうに自分の役割について話すスフォル。
なんとなくスキルや能力値が予想できるが、俺と同じようにマイナス系の役割であることは間違いないだろう。
「はい……名前の通り、厄介事を引き寄せてしまうんです」
「それはむしろ良くパーティを組んでもらえたな……」
俺みたいな奴もそうだけど、この子みたいなパーティにマイナスしかない役割を持つ人間を同じパーティに居れようと思う奴は基本的にいない。
むしろ彼女をパーティに入れている同業者に感心する。
「幼馴染たちがパーティメンバーでして、こんな私でも仲間に入れてくれてるんです」
「なるほどな。そういうことか」
元々仲が良かったなら多少不遇な役割だとしても慣れているだろうし、俺みたいに無能でなければパーティを組んでくれることもあるか。
というかそれ以前の問題がある。
「そもそもなんで探索者に?」
そう。それは探索者になった理由だ。
探索者は危険なモンスターの蔓延るダンジョンに潜るというだけで命がけの行為。ほんのちょっとの不運が命を左右する。彼女みたいな厄介事を引き寄せるタイプの役割の人は最も敬遠する職業のはずだ。
だから俺はそこが気になった。
「えっと、その……他の職業につこうと思ったんですけど、そこでもすぐにトラブルを引き起こしてしまって、すぐにクビになってしまうんです。だから私がなれる職業が探索者くらいしか残っていなかったんです……」
「それはその……悪いことを聞いたな……」
本人にはどうしようもない理由だった。
どこに行っても厄介事を引き寄せてしまうんじゃ、そりゃあどんな店も雇ってくれないか……。
ヘタをしたら俺と同じかそれ以上に不遇な状態だったかもしれない。俺も能力値が低すぎて他の職業に就くという選択肢はなかったしな。元々着く予定もなかったけど。
「いえ、とんでもありません。そんな中でもラストさんにお会いできたのは、私の人生の中でも幸運だったと言えますね。二度も助けてもらってますし。ラストさんはさぞかし名のあるパーティに所属されてるんでしょうね?」
「はははっ。俺が名のあるパーティに所属だって? ないない。強くなったのはごく最近だからな。俺はソロだよ」
謝る俺に自嘲気味に呟くスフォル。
俺はスフォルの言葉がおかしくて俺は笑いながら返事をした。まさか他人からそんな風に見られるようになるとは思わなかったからだ。
「えぇえええ!? あんなに強いのにソロなんですか? そんな人なら知らないはずないんですが……」
スフォルは俺を信じられない目で見た後で、考え込むような仕草をする。
今の俺の実力があれば確かに基本的にパーティに所属していないとおかしいし、名が知られていないのも不思議に思われてもしょうがない。
しかし、知らないのも無理はない。数日前まで俺は只の"雑魚"だったんだから。結びつかないのも当然だろう。
「うーん、俺を知らない人はいないと思うけどな、悪い意味で」
「どういうことですか?」
少し悩んだ後で彼女に俺の正体を打ち明けることにした。なぜなら、不遇な役割である彼女にシンパシーを感じたからだ。
「それは俺が二五年間"雑魚"と呼ばれてきた人間だからだよ」
「え!? まさかラストさんがあの超有名な"雑魚"だったんですか!?」
スフォルは俺の告白に目をこれでもかと見開いて驚愕した。
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