Evol.009 報奨金
次の日、俺は魔石を換金するためにギルドの向かった。
「あ、ラストさん、お待ちしておりました」
ステラさんが俺を見るなり、今か今かと待ちわびていたと言わんばかりの態度で声を掛けてくる。
「ああ、ステラさんこんにちは。どうかしたのか?」
「えっと、昨日起こった低階層の
「ああ、そういうことか。信じてもらえるか分からないが本当だぞ」
半信半疑のステラさんの質問に対して頷いて肯定した。
正直受け入れられるとは思っていない。昨日まで雑魚だった奴が到底できることじゃないからな。
「はぁ……本当だったんですね。昨日大行進の鎮圧に行った探索者が、一人の探索者から全滅させたと聞いて現場を行ったら、沢山の魔石が落ちていたから間違いないだろうと聞きました。大行進の発生を知らせに来た少女からも話を聞き、その容姿からラストさんのことだとは思っていたんです。ただ、
「証拠にはならないだろうが、これが一応一番価値の高い魔石類だ」
裏取りということか。
その一助にでもなればいいと思い、換金のために持ってきた魔石をカウンターの上にあるトレーに昨日拾ってきた魔石をジャラジャラと乗せた。
「これってホブゴブリンやタイラントボア、それにキラーファングまであるじゃないですか。本当に進化しているんですね。確かにその場に落ちていた魔石との類似性があります。承知しました。ラストさんが鎮圧してくれたということで処理させていただきますね」
「いいのか? もしかしたら、俺以外の誰かがやったことを自分の手柄にするためにやったのかもしれないぞ」
あまりにあっさりと信じてくれたので、俺は若干心配するように問いかける。
「ふふふっ。ラストさんがそんなことをするわけがありません。だって二五年間一度も不正やズルはしていませんでしたから」
「そう言ってもらえるのは嬉しいけどな流石にな……」
まさかそこまで信頼されているとは思わず、少し恥ずかしくなるが、未だになんでそれほど簡単に俺が倒したということで処理されるのかが気になった。
「鎮圧しに行ったパーティは品行方正が売りのBランクですからね。そういうことはきちんと報告してくれるんですよ」
「なるほどな」
俺以外の第三者にも実績と信頼があったからだと理解した俺は、納得して首を縦に振った。
「それでですが、今回の大行進の討伐者としてラストさんに報奨金が支払われます」
「マジで?」
「はい。こちらがその報奨金になります」
俺が驚くのも無視してステラは俺の前に硬貨を置いた。
「おおおおおおお……金貨……」
「はい。金貨四〇枚になります。それとこっちが今日の換金分です」
目の前に置かれた硬貨の価値に思わず驚愕してしまう。
なぜならそれは金貨だったからだ。
俺はこの二五年間銅貨以上の硬貨を持ったことがなかった。だから金貨が目の前にあると思うと思わず身震いしてしまった。
「た、確かに。それじゃあ金貨は口座に入れてもらってもいいか?」
「分かりました。大行進の鎮圧ありがとうございました。これからもご活躍を楽しみにしてますね」
「ありがとう」
金貨をもって歩く度胸なんて俺にはないので報酬の金貨は口座に入れてもらい、それ以外を受け取ってギルドを後にした。
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