Evol.006 25年の価値

「さてと……」


 定宿に帰り着いた俺は、ステラさんと同じようなやり取りを店主とした後で、体の汚れを拭いてベッドに腰かけ、ギルドカードを使用して自身のステータスを表示した。


 部屋は簡素なものでベッドくらいしかない。


――――――――――――――――――――

名前  ラスト・シークレット

種族  普人族

役割  中ボス(2/5)

レベル 1/99

能力値

力  :700

体力 :700

魔力 :700

敏捷 :700

器用 :700

運  :700

スキル

威圧(下)、統率(下)、配下スキル軽減化(下)、

教育(下)、全魔法適性、獲得経験値増加(二倍)、

成長速度向上(二倍)、成長限界突破、

ステータス上昇値最大値固定

――――――――――――――――――――


「~~!?」


 俺は開いた瞬間その能力値とスキルに目を見開いて言葉を失った。


 まずは全能力値が七○○という数値。


 一番一般的な役割ロールの人間はレベル上限が五〇で、初期ステータスは二〇から三〇。そして、レベルアップ時の各能力値の上昇値が〇から一〇と決まっている。


 そして、その役割の人達が進化クラスチェンジするのは基本的にその上の上位役割。例えば剣士なら剣聖という感じだ。一般役割から上位役割になった場合、進化前のステータスを引き継ぎ、上位役割の能力値アップボーナスを受けてスタートすることになる。


 仮に全ての能力値が四九回最大値の一〇上昇したとすると、二九四〇ポイント能力値が上がり、全ての能力値に均等に振られた場合、おおよそ四○○程度になるはずだ。能力値アップボーナスはどれだけいったとしても、運以外のすべての能力値がプラス一〇〇程度。そうすると、運以外が六〇〇程度のステータスになる。


 何をやったところで絶対に全能力値が七〇〇という数値に届かない。


 つまり現時点で、少なくとも一般役割の人間が進化したばかりの状態よりも高いステータスを持っているということになる。


 全ての能力値が同じなのは雑魚だった時と同じだからではないだろうか。


 その上でレベル上限が九九まであるので、そいつらよりも能力値の上昇値が上回るのは間違いない。


 それに、ステータス以上にスキルが凄かった。


 特にレベルアップに苦しめられた俺の目を引くのは、経験値獲得増加(二倍)、成長速度向上(二倍)、成長限界突破、ステータス上昇値最大値固定の四つだ。他に関しても気にはなるけど、すぐに確かめようがなさそうなスキルばかりなので今の所は保留しておく。


 モンスターを倒すと目に見えない"経験値"という物が溜まってレベルが上がるのだが、獲得経験値増加(二倍)、成長速度増加(二倍)によって俺は実質四倍速で成長できる。


 次にステータス上昇最大値固定スキル。このスキルは常時発動型で、レベルアップの際に上昇する各能力値の上昇値が最大値で固定される。


 仮に力の上昇値が〇から一〇のランダムなら、ずっと一〇のまま固定されるということだ。つまり、レベルアップ時に上がるステータス上昇値がずっと最高値ということだ。


 最後に成長限界突破。各役割にはレベルアップ毎に最大でこの数値までしか上昇しないという上限値がある。一般的な役割なら全能力値を合わせて最大で二〇。成長限界突破スキルはその上限を取っ払ってしまうスキルだ。


 つまり、このスキルにステータス上昇最大値固定スキルと過去最高のレベル上限、そして四倍速でレベルアップという状態が組み合わされば、俺は普通の人の四倍速で成長する上に、役割の制限を超えて能力値が最大値で上がり続ける化け物になる。


 ということは、今からSSSランクを目指すことも不可能じゃないってことだ。


「これなら二五年諦めなくて良かったと思えるな……」


 改めてステータスを確認して心からそう思った。


「よし!! ダンジョンに行くか!!」


 俺は諦めかけていた夢が現実味を帯びてきたことで、居ても立っても居られずに帰ってきたばかりにも関わらず、再びダンジョンへと走っていた。

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