Evol.005 外部向けステータス
そのステータスに俺も驚く。
「はぁ!?」
「そうなりますよね」
俺のリアクションを見て受付嬢は苦笑する。
「それはそうだろ。だって――」
「それ以上はここではダメです。別室でお話ししましょう」
「お、おう」
驚きを伝えるため詳細を話そうとしたら、口に人差し指を押し付けられて止められてしまった。
そういえば、ここでステータスの話をするのは俺の件があって以来ご法度になったんだったか。
受付嬢には守秘義務と
俺は受付嬢に促されて初めて応接室に足を踏み入れた。
「それでは改めてステータスの件ですが、まずは
「あ、ありがとう」
今までされたことのない丁寧な扱いに思わず面食らってしまう。
「再度表示させていただきます」
「おう、頼む」
――――――――――――――――――――
名前 ラスト・シークレット
種族 普人族
役割 中ボス(2/5)
レベル 1/99
能力値
力 :■■■
体力 :■■■
魔力 :■■■
敏捷 :■■■
器用 :■■■
運 :■■■
スキル
■■■、 ■■■、■■■■■■■、■■■、
■■■■、■■■■■■■■■、
■■■■■■■■、■■■■■■、
■■■■■■■■■■■■■
――――――――――――――――――――
板のような装置の上に俺のステータスが表示される。
ステータスは本人以外がみると、能力値の数値やスキルの部分がこんな風に黒く塗りつぶされる。それはギルドでさえも盗み見ることは不可能な仕様になっていた。
それでも分かることがいくつかある。
「どうやら中ボス、という役割に進化されたようですね」
「そうみたいだな」
まずは役割の名前。
ダンジョンには一〇階層ごとにボスがいるのだが、その中間層あたりに出現する普通とは比べ物にならないくらい強いモンスターが居て、そいつのことを中ボスモンスターと呼ぶ。
おそらく雑魚から中ボスに進化したことでそのくらい強くなっているということなのだろう。
「ラストさんの進化前の役割も未発見のものでしたのでその進化先も未知。しかし、レベル上限値、能力値の桁、スキルの数を見る限り、前回の役割と違い、かなり有用な役割だと思われます」
次に、彼女の言う通り、レベルが今回も最高値であること。レベルが大きければ大きいほどレベルアップによるステータス上昇の恩恵を受けることができる。
それが最大値ということは"雑魚"だった頃と同じでなければ、その恩恵を九八回は受け取ることが可能ということだ。
それから能力値に関してだが、塗りつぶされていても桁数そのものは変わらないというのは有名な話だ。つまり俺はレベル一にしてすでに能力値三桁あるということになる。たとえ百だったとしてもざっと百倍の能力値。それだけでなんだかワクワクしてくる。
そして、最後にスキルの数。
進化したとしても九個もスキルを持っているという職業は聞いたことがない。多くても四個くらいだ。詳細は分からないが、これだけでも俺の進化がかなり有用であることは間違いなかった。
「そうだな。雑魚だったと俺とは比べ物にならないくらい強い」
「えぇ。二五年間本当にお疲れ様でした。支部長が言っていることは本当でしたね」
「……知っていたのか?」
思いがけない言葉に一瞬言葉に詰まった後でなんとか言葉を絞り出す。
「当然ではないでしょうか? 私はずっとあそこで受付しているんですから」
そういえば、探索者登録の後からずっとこの受付嬢が担当してくれていた。
彼女は二五年間容姿が変わっていない。それは彼女の種族が長命種だからだ。その尖った耳と碧眼がエルフ族であることを表している。
エルフ族はせいぜい一〇〇年~二〇〇年の人間と違い、一〇〇〇以上の時を生きる。彼女にとっての二五年とは俺たちにとって二年程度の短い時間だ。容姿が変わらなくても不思議はない。
彼女とは事務的なやり取りしかしてなかったので、俺のこともその他大勢の探索者と同じく、きちんと認識していないと思っていた。
しかし、実際は俺のことをずっと見ていてくれたようだ。徹底されていたとはいえ、差別しない彼女とのやり取りに救われていたのも間違いない。
「それもそうか。ありがとな見守っていてくれて」
「いえいえ、とんでもありません。それにラストさんが活躍するのはこれからでしょう? 今後はそれを見守らせてもらいますよ」
その事実に気付いた俺が感謝をしたら、彼女は茶目っ気たっぷりにウィンクをして答えた。
思った以上に感情豊かな人物なのかもしれない。
「最後に、一つ気になったんだが、役割の横の数字って何か分かるか?」
「……いえ、これは見たことがありませんね……」
「そうか」
俺のステータスには以前までなかったものが表記されていた。それが役割の横にある数字。
何か分かればと思ったんだが、分からないんじゃ仕方がない。いつか分かる時がくるだろう。
俺は疲労感が襲ってきたので、そろそろ常宿に帰ることにした。
「そういや、名前を聞いたことがなかったな」
そこで俺は彼女の名前を知らなかったことを思い出す。
「私はギルド職員のステラと申します」
彼女は俺の言葉を聞いて名乗り、深々と頭を下げた。
「ステラさん、これからもよろしくな」
「はい、こちらこそよろしくお願いしますラストさん」
俺が手を差し出し、ステラさんも俺の手をとって握手を交わした。
それは二五年越しの自己紹介だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます