Evol.004 別人
「こんにちは、初めてのご利用ですか?」
俺が探索者ギルドの戻りて受付に向かうと、いつもの受付嬢にも関わらず、何故か初心者と間違えられてしまった。
なにを言ってるんだ? この受付嬢は。
俺は心の中で訝しげな気持ちになる。
「いや、ラストだが?」
「はぁ?」
俺は名乗ったのだが、彼女は何故か不審者を見る目でこちらを見てきた。
「いやだから、俺はラスト・シークレットだ」
「いやいや、ラストさんはあなた程若くありませんよ?」
もう一度名乗り直しても、彼女はあり得ないと顔の前で手をブンブンと振る。
え、なんで俺こんなに疑われるんだよ?
俺は意味が分からずに困ってしまう。
「何言ってんだ? これが俺だって証拠だろ?」
「確かにこれはラストさんのギルドカードですが……まさか奪い取ったので?」
最終手段として身分証であるギルドカードを提出したら、まさか強奪を疑われる始末。
「そんなことして何になる。本人以外に使えないだろうが」
「それもそうですね……」
ギルドカードは本人以外使えない。神秘の技術で不正は不可能だ。受付嬢もそれを思い出して俺が奪い取ったという話がある訳がないと気づく。
「いいから本人確認をしてくれ。それで済むんだから」
「分かりました」
何はともあれ本人確認さえすればすべてが分かる。ギルドカードには本人の魔力を登録されていて、それを照合することができるからだ。
俺はすぐに確認してもらうことにした。
「こちらに手を置いてください」
「はいよ」
俺は指示に従って正方形の黒い板の上に手を乗せる。
「本当にラスト・シークレットさんですね……」
「だから言っただろ?」
同一人物だという結果に、受付嬢はあっけにとられた様子でこちらを凝視してきたので、俺は肩を竦めてみせた。
「でもなんでそんなに若返っているんですか!? まさかそんなアイテムが!?」
「いや、だから何を言ってるか分からないんだよ」
受付嬢が食い気味に詰め寄ってくるが、意味が分からなくて俺は眉を潜める。
「これを見てください!!」
受付嬢は鏡を取り出して俺の顔の前に翳した。
「これは……!?」
俺は十三歳の頃から探索者を始めてもう二十五年経っている。つまり今は三十八歳だ。
それなのに、鏡の中の男はどう見ても二十台半ば程にしか見えなかった。その上、なんだか以前よりも整っているような気がする。
確かに受付嬢の言う通り、今日ダンジョンに入る前までの俺とは、全くの別人と言ってもいい程の違いがあった。
「本当に若返ってるな……」
「気づかなかなったんですか?」
俺が呆然すると受付嬢が不思議そうに首を傾げる。
「ああ。ダンジョンに潜っていたし、自分の姿なんて見る機会はほとんどないからな」
「確かに……言われてみればそうかもしれませんね。それで、そうなった原因は分かりますか?」
「んーそうだな。恐らくアレだろうな」
原因と言われれば一つしかないんだろう。
「それは?」
「
「え?」
俺の答えに再び受付嬢が固まる。
「だから
「~~!?」
聞き間違えじゃないことに彼女は目が飛び出しそうなほどに見開いて驚き、口をパクパクとさせた。
「な、なんの役割になったんですか?」
「いや、ちょっと忘れてた。何になってる?」
「そ、そうですね。少し待ってください」
「ああ」
恐る恐る俺の役割を確認する受付嬢だが、進化した嬉しさのあまりステータスを確認するのを忘れていたので、受付嬢に確認してもらう。
「な、なんですかこれ!?」
「お、おいどうしたんだよ!?」
「これを見てください」
そこには俺の新しいステータスが表示されていた。
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