第13話 恋は盲目

 てっきりモグリンが黒幕だとばかり思っていたのに。

 電子生命体をけしかけていたのが王女様だとわかり、呆然自失の私と旦那。


「なんで? だって、世界の危機だって……だから俺……必死になってプログラム作って……防御壁だってこっそり仕込んだのに……」


 とくに旦那は放心状態だ。


「ごめんねぇ、だってこうでもしないと、ダーリン……モグちゃんに会えないと思ったから」


 言いながら、王女様はグルグル巻き状態のモグリンをきゅっと抱き上げ、ほっぺをすりすりしている。


 それから、王女様が遠い目をしながら、これまでのいきさつを語り出した。

 おそらく、脳内でこれまでのことが回想されているのだろう。


 それは、私とモグリンが地球を救ってから、数年後の出来事。


 王女様の世界に異変が起きる。

 バグった電子生命体が王女様の世界に溢れ出し、その混乱に乗じて、世界征服を企んだ者達と壮絶な戦いが始まった。


 一方、モグリンは人事異動で王女様の世界の管轄になっていた。

 そこで、モグリンは王女様に声をかけ、協力して事態の収拾にあたった。

 その時、何があったのかはわからないけど――。


 王女様はモグリンに惚れてしまったようだ。


 でも、モグリンはその世界での仕事を終えると、逃げるように去ってしまった。


「どうしても会いたかったんです。だから――」


 王女様は瞳を潤ませながら、モグリンの頭を撫でている。


「何年も修行して、次元を渡る魔法を習得しました。そして、世界を救う手伝いを始めたのです」


 そっと、モグリンをくるんでいたおくるみをめくり始める。


「モグリン様と同じ仕事をしていれば、いつかモグリン様に会えると思って」


 おくるみを全部剥がしてから、ぎゅぅぅっと強くモグリンを抱きしめる。

 一方のモグリンは王女様の腕の力が強すぎて息ができないのか、苦悶の表情を浮かべている。


「そうして、世界を救う中、まだ幼かった彼とも出会いました」


 言いながら、ちらりと旦那に目を向ける。


「世界の救出は実にうまくいきました。私は幾度も世界を救い。そして気づいてしまったのです」


 目を伏せ、はらりと涙をこぼす。


「解決してしまってはモグリン様はやってこない、と――」


 そりゃそうだ。

 問題が起きてどうにもならないから、解決しに来るんだもの。

 他の誰かがやってくれているなら、丸投げするに決まっている。

 モグリンとはそういう奴だ。


「そこで私は考えました」


 あ……なんか、激しく嫌な予感。


「問題を起こして、モグリン様をおびき出そう、と」


 やっぱりかー!


「幸いにもこの世界はモグリン様の管轄」


 どうやって知ったのかはわからないけど、王女様は人事異動で再びモグリンの管轄が地球になったのを知ったらしい。


「しかも、この世界は私も一度救っていますので、知り合いもおりました」


 言いながら、旦那に目を向け、にっこり微笑む。

 旦那は苦笑。


「なので、彼を騙……いえ、協力していただいて、モグリン様をおびき寄せるトラップを仕掛けたのです」


 恋は盲目って奴かねぇ。

 巻き込まれたこっちはひたすら迷惑な話だけど……。

 まぁ、でも、諸悪の根源は――

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